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第30話 さよならシン 5

次の日から私は宿題が溜まっているからと図書館へ行くようになった。


夏くんのご機嫌が悪くなっていたけど、宿題が終わっていないのは本当だし、家にいればママや萩乃様に忍様とのことを何か聞かれるのも嫌だった。


図書館なら携帯に出てはいけないから私は忍様からの連絡を無視するためにも図書館へ行った。


あれから忍様は時間があるであろう時は必ず連絡を下さった。


夜、時報の直後にメールがくるともう家にいるのだと理解出来た。


日中大学にいるようなときは手が空いたタイミングで送信しているようだった。


メールを開封することは一度もなかった。


でも電源を切るようなこともしなかった。


メールの着信のタイミングで忍様がどんな様子なのかが良く分かった。


あの時聞いた話なんて全くのでたらめで、本当に私を大事に思っていてくれるような気になってきた。


でも怖いのだ。


本当のことが今自分が感じていることとは全く別のものだったとしたら、そう考えると忍様と連絡を取ったり、会うことさえ怖い。


何も知らないふりをする自信がないのだ。


逃げるように毎日を過ごしていたら、宿題も終わってしまった。


台風が来ていて強い雨が降っていたからさすがに家で過ごした。夏くんが合奏をしたいとバイオリンを出してきたので二人で久々に合奏をした。


「ねぇももちゃんこのおんがくしってる?『てんじょうのおんがく』ってきょくの『そろ』なんだって」


そう言って夏くんは楽譜のコピーらしきA4サイズの紙を一枚見せてくれた。


どうやらソロパートの箇所だけを切り貼りしてコピーしたものを夏くんに渡したようだ。


ってことは「天上の音楽」というのはオーケストラか小編成の楽曲のタイトルということになるのかな?


楽譜を見る限りではメロディーは割とシンプルだけど、『ソロ』というからには聴かせるべき表現力が要求されるのだろう。


「初めて見る楽譜かな?夏くん今この曲練習してるの?」


「う~ん、よくわかんない。かすみせんせいがちょうせんしてみてとはいったけど、しゅくだいじゃないって。どうしたらいいの?」


「なつくんはどうしたい?やってみたい?」


「やってみたい!!!」


「じゃぁ少しずつ練習してみるといいよ。」


「わかった!ぼくがんばるね。じょうずになったらももちゃんきいてくれる?」


夏くんは瞳をキラキラさせて言った。私は「もちろん聴かせてね。」と答えた。夏くんは本当にバイオリンを弾くことが好きなんだなぁって思った。


「夏くん・・・もしバイオリン弾けなくなったらどうする?」


「え~やだよぉ。かすみせんせいのれっすんにいけなくてもいいけど、ばいおりんないのはいや。」


香澄先生はいいのか・・・


「ぼくね、かすみせんせいのおうちにしらないおとながくるのがいやなの。あとはぜんぶいいよ。」


知らない大人って・・・香澄先生誰を呼んだの?


「バイオリンがあればいい」夏くんのシンプルな気持ちがとても羨ましく、自分が色々なことを複雑に考え混んでいるような気がしてきた。








ご愛読ありがとうございます。


なお作中でてきます「天上の音楽」はゆほの作ったものになります。ご了承くださいませ。

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