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第28話 さよならシン 3

しばらくは動けなかったし、動きたいとも思わなかった。


ジュースも一口飲んだだけで、あとは残してしまった。


時計を見たら3時半を過ぎていたけど、忍様がくる気配がないので帰ろうって思った。


いや、帰りたいここにはいたくないって思った。


知ってしまったから、自分がどうしてたくさんのお見合い写真の中から選らばられたのかを理解してしまったから・・・


「目くらまし」


多分そういうことなんだろう。


亜紀枝様が納得した女性と結婚しておけば後は自由に出来る。そう考えていたのだろう。


しかも年齢が離れた私のような高校生なら適当に構っておけばごまかしも効く。


そんなところだろう。


帰ろう。帰って夏くんとバイオリン弾いて、宿題やって、やらなくてはいけないことはたくさんある。


将来のことなんて今は考える時間はない。考えたくもないし・・・


そんなことを考えながらゆらゆら歩いていたら後わずかで病院の外に出られるというところで見つかってしまった。


忍様に――――――――


「桃乃ちゃん!」


「あっ」


いつもどおりに細いシルバーフレームの眼鏡をかけていて白衣は着ていなかった。もう帰り支度なんだろう。


優しそうに笑いかけてくれるけど、心が動かなかった。


「駐車場に車を停めてあるから、こっちです。」


そういわれて肩に手を置かれて駐車場へ連れて行かれた。


一人で帰りたいと思ったけど、そのことを伝える気力もなくなっていた。





早く帰りたい、そんなときに限って車は渋滞にはまっていてなかなか動かない。


私は忍様と視線を合わせたくなくて助手席からずっと窓の外を見ていた。


「どこかお目当てのお店はあるのですか?」


そういえばお茶でもって誘ったのは自分の方だったと今思い出した。


お茶なんかする気分じゃないからどう答えようって考えていたら視界に遊園地のアトラクションらしき物が目に入った。


電柱みたいに細長い塔で、実際間近で見たら電柱より全然太いんだろうけど、ゆっくりと乗り物らしきパーツがその電柱を昇って行って、一気に落下している。


「・・・忍様、アレに乗りたい・・・・」


本当に乗りたかったわけではなかったし、忍様の問いかけの返事にはなっていないだろうけど、私はそう呟いていた。










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