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第27話 さよならシン 2

私立 律療館りつりょうかん医科大学附属病院―――――――


都内でも有名な、忍様の通う大学の病院。以前伺ったけど、大学と病院は同じ敷地内にあって実習や手術の類の見学は附属病院で行われているらしい。


ふうんってあまり興味なく聞いていたけど、実際行ってみたらびっくり!


だって大きな緑地公園みたいなところなんだもの。


緑の木々がいっぱいあって、花壇には色鮮やかな花が咲いていて。少し古めかしい何棟もある建物が大学みたいで、その隣りの白をベースにした近代的な建物が病院だった。


忍様に指定された喫茶室はその近代的な建物の最上階にあって眺望はなかなかのものだった。


病院の施設だけど、外来の患者さんやお見舞いの人など外から来る人が利用するエリアのようだった。


忍様くらいの年齢の白衣を着た学生らしき人達もいた。


メニューを見たらちょっと気になるケーキセットやパフェがあって移動は無しでここでお茶にしましょうと提案したくなった。


そう言ったらきっと忍様はいつものようにクスクス笑って「いいですよ」っておっしゃっる姿を想像していた。



結局はフルーツミックスジュースというのを頼んでしまった。適当に切られたフルーツを何種類かミキサーにかけてジュースにしてくれるの。ジュースバーみたいにその場で作ってくれるから思わず頼んでしまった。


それを持って大学の校舎が見える窓際の席に座った。


一口飲んで美味しい余韻に浸っているとき、私の前をかなり派手な服装の上に白衣を着て、コーヒーらしきカップを持った二人の女の人が通り過ぎた。


通り過ぎた瞬間に匂った香水に少し嫌悪を感じた。二人は私の背中側にある席に座ったようだった。


決して大きな声ではない二人の会話が私の耳に届いた。


「――― 聞いた?周防院くんお見合いしたって」


「聞いた聞いた。レイコがびっくりしていたよ。いつかは自分が『彼女』にって・・・タイミング計ってたみたいだったし」


「しかも相手、女子高生らしいよ」


「マジ?何それ?」


自分のことを言われていると分かってどきんとした。そして耳が二人の会話を聞き取ろうと必死になっている。


「ほら周防院くんのおばあさんか誰かが立花のOGらしくてその繋がりみたいだよ。」


「アンタなんで知ってんの?」


「周防院くんが話したゼミの教授が他の教授としゃべっているときに聞いちゃったの」


「サカネ教授かぁ。あの人ほんとおしゃべりだよね」


「それよりも驚いちゃったよ。だってかつては『律療医大の夜の帝王』と呼ばれた男がだよ。お見合いで結婚相手決めてるっていうだから」


そう言って忍様を馬鹿にしたように女の人は笑った。悔しさからなのか私は両手を握りしめていた。


「だってアレでしょ?周防院の跡取りとしてはおばあさんのお気に入りと結婚しないと色々あるんじゃないの」


「じゃあ本妻狙いじゃなければレイコにもチャンスがあるのかな」


「えぇ~それってどうなのよ。私だったら嫌だなあ」


「でもあの子そういうの気にしなさそうじゃん。周防院くんも結婚は結婚、遊びは遊びって感じにしたいんじゃないの~」


「かもねぇ・・・あっ、時間だよ行かなきゃ」


二人は席を立って行ってしまった。


残された私は両手でスカートを握りしめ、体が震えるのを止められずにいた。









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