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第25話 婚約者の条件 14

忍様はさっきの女の人のことは何も言わない。そうなると返って聞きにくくなる。


「昔の知り合いで」とかなんとか言ってくれれば何か質問を返すことも出来るのに、でもさっきの「シン」発言の件が気になるから、黙ったままでいた。


忍様はなんだかとっても落ち着いた穏やかな表情でコーヒーを飲んでいた。


かっこいい・・・


やっぱり昔の彼女とかかな?


気になるけど、「彼女ですか?」って聞いて「はいそうです」って答えられるとちょっとキツイかも、やっぱり忍様が何か言うまで聞くのは止めよう。


「おみやげ・・」


「はい?」


「夏太郎くんにおみやげを買って帰らないとね。」


「あぁ、そうですね。夏くん何がいいかな?」


忍様もさっきの女の人は話題に支度はないのだと思った。


胸に小さなしこりが残ったような気がした。




ホテルをチェックアウトした後、忍様は車で「道の駅」というところへ連れて行ってくれた。


そこで売っている地元の果物なんかを家族へのお土産にした。


夏くんには忍様が木のおもちゃを選んで下さった。木を切って表面を綺麗に磨いただけの素朴なおもちゃだったけど、きっと夏くんは喜ぶと思う。


買い物が済む頃には「サオリさん」のことは頭からいなくなっちゃって、私はご機嫌になっていた。


高速に乗ったら道路の混雑状況によっては休憩が取りにくくなるからと、道の駅に出ていた出店でみせで車に持ち込めそうな食べ物を買ったり、その場で食べたりして過ごした。


ただ、あまりにも人が多くて一瞬人波に呑み込まれたと思ったら忍様を見失ってしまった。


忍様は背が高いからすぐに見つかりそうなのになかなか見つからない。


人の流れに逆らって元の所に戻るかその場に留まっていたいのにそれも出来ずどんどん思わぬ方向へ移動してしまう。


どうしよう・・・・


なんだか不安になってきた。こんな気持ち、以前にも味わったことがあるような気がしする。


出店でみせが並ぶ混雑したところから吐き出されるように、人気ひとけが少なくなったとこでやっと立ち止まることが出来た。


忍様に連絡してみようと思ったが携帯は車の中だ。


車を止めてある駐車場に戻ろうか、どうしようかと考えていたその時、腕を強く掴まれて引っ張られた。


!!!!!


誰?と思って腕を掴んだ主を見たら忍様だった。


「突然消えたみたいになったからびっくりしましたよ」


「ごめんなさい・・・」


「人が多かったから仕方ないです。怪我はないですか?」


忍様はそう言いながら私の背中に手を回し優しくそっと抱きしめてくれた。


「・・・忍様?」


忍様が黙ったまま動かなくなった。私は忍様の胸に頬を押し当てている状態だ。


知らない人達とはいえ通りかかる人達が抱き合っている?私達を見ている。


恥ずかしい・・・


そして忍様が私に囁いた。


「そばにいて欲しい、婚約者として」



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