第23話 婚約者の条件 12
ご無沙汰してます。
また頑張って更新していきますのでよろしくお願いします。
お風呂を出て部屋のドアをノックしたら忍様はすぐにドアを開けてくれた。
「おかえり」と言ってくれたことがすごく嬉しくて、でもさっきと同じで少し恥ずかしくて「ただ今戻りました」という声が小さくなってしまった。
「散歩に行きませんか?」
お風呂から戻って来たばかりだったけど、タオルや着替えを置いて忍様とホテルの庭園に行った。
星空がよく見えるようにと証明を足元に少しだけにしているので、夜の景色は想像以上にきれいだった。
忍様も私も黙ったまま歩いていて、でもいつの間にか忍様と私は手を繋いでいた。
「桃乃ちゃんはもう志望大学なんかは決めているんですか?」
「いえ、まだです。まだ、学部も決めてなくて・・・」
「そう」
まだ2年生だけど、志望学部が決まっている同級生は確かに多い。それに比べて私はまだ、大学へ行ってどんなことを勉強したいのかもはっきり決まってはいない。
忍様はこんな私にがっかりしちゃったかしら?
ふいに忍様がこっちを向いた。
「それなら、自分が一番やりたいこと知りたいことを選んで下さいね。僕と結婚を控えているとか将来に有益とかそんなことは考えないで、今しか学べないものを選んでもいいですよ。
もちろん、就きたい職業があるならそれを目指せる学部を選んでもいいですけど、
なんにせよ、自分の願いを諦めないで下さいね。僕が協力できることはなんでもしますから、絶対に諦めないで・・・」
諦めない・・・
私は何か言った方がいいのかと思ったけど、言葉は出て来なかった。ただ、静かに「はい」とだけ答えていた。
忍様はにっこりとほほ笑んで下さった。
こんな風に私の進路の話しをしている間に庭園を一周してしまった。
大学には行く、でも私はそこで何がしたいんだろう?自分に聞いてみた。
そもそも私がやりたいことはどんなことなんだろう?
それは大学に行ってできることなのだろうか?
部屋に戻ったところで、心臓がドキリとした。
だって別々のベッドとはいえ男の人と二人きりで寝るんだよ。
5年前にシンの部屋に泊まったけど、あれは台風が来ていて帰れなくなったからだったし、今回は最初から泊るって決めていて・・・・
あっ、最初は部屋は別って話だったんだ。
忍様が何かしてくる可能性は低いとは思うんだけど、免疫がないからか妙にそわそわドキドキしちゃっている。
でも忍様は部屋に戻ると大きく体を伸ばしてそのままベッドに倒れこんでしまった。
バフッという音がしてベッドの上で寝転がりながら眼鏡を外してベッドの脇のサイドテーブルに置くとその体制のままじっと動かなくなった。
しばらく様子を見ていたら静かな寝息が聞こえてきた。
夏くんと同じような寝息なのでクスッと笑ってしまった。
よくよく考えたら今日は少ない睡眠で早朝から長距離を運転し、その後はプールで泳いできっと疲労もピークに達したのだと思う。
ゆっくりと眠れるように私は部屋の明かりを消して、自分のベッドに入った。