第19話 婚約者の条件 8
私がよく行く図書館は、大きな緑地公園のに隣接されている図書館でそのそばには美術館とカフェがあり、それらの利用者のための駐車場もある。
だから忍様の車で送ってもらって駐車場で「さよなら」を言った。
はっきりとした次の約束がなかったから少し悲しくなったけど、忍様が「連絡しますね」と言って携帯が入った紙袋を指したからちょっとにやけてしまったわ。
図書館に入ると座席を確保するために真っ直ぐ閲覧コーナーへ行った。閲覧コーナーのそばの大きな窓から駐車場がよく見える。
忍様はもう出発したのだろうかと窓の外へ目をやると、私には背を向けて車の横に立っている忍様が女の人と話していた。
知っている人かなと思ったけど、それ以上にその女の人が私より忍様にお似合いな上品な感じの美人だったのが面白くなかった。
忍様の身振りから道を聞かれただけみたいで、女の人は忍様に会釈をして行ってしまった。
忍様もそのまま車に乗り込んで行ってしまった。
忍様が好きって思った。
まだ知り合ったばかり、回数にしたら今日が3回目、いつかは誰かを好きになって結婚とか考えるだろうって思ってはいたけど立花に通っているから今までは出会いなんてなかったし、突然現れた忍様は完璧過ぎて私なんかでいいですか?って恐縮したくなるけど、また会えるって分かっていてもサヨナラするのが淋しかったり、優しくされると嬉しくなったりする。
ご両親が海で亡くなられて泳ぎに行くのをやめていたのに、私が行きたいって言ったから連れていって下さった。
本当はお辛い思いをしてたのではないかしら?
それでも私がお願いしたから?
亜紀枝様の反対もないからこのまま成り行きに任せてしまえば私は忍様のそばにいられる。
私ってズルいかなあ?
それでもそばにいられたらだったら、いつか私も忍様を喜ばせたりサポートしたりできるのかな?
頭の中は忍様でいっぱいだ。
家に帰ってから忍様から携帯を頂いたことをママに伝えた。
「失くしたりしたら忍さんにご迷惑がかかるから大切にするのよ」
おっとり、のんびりママだけど、個人情報に関しては意外とうるさい。バイオリンの香澄先生が以前夏くんのことで我が家の電話番号を自分の先生に無断で教えてしまったのだ。
その時の厳しい言い方と言ったら、先生が物凄くびっくりしていた。
頂いた携帯に友達の連絡先も登録すれば猶更だろう。
夕飯やお風呂を終えて自分の部屋で携帯をいじりながら、分厚い説明書のページをパラパラとめくっていたら忍様からの着信が来た。
「もしもし忍様?」
画面に「SHINOBU」って出ていたのになんで聞いちゃうんだろう。携帯って不思議だ。
耳元にはクスクス笑う忍様の声。恥ずかしい。
「そうですよ。今家に戻ってきました。宿題、捗りましたか?」
午前中ほどではなかったけど一応「はい」と答えておいた。
「あのですね。泳ぎに行く件なんですが、面白そうなところを思い出しのでどうかなと思いまして・・・」
忍様が提案した場所はこちらからお願いしたくなるような場所だった。
それにプランも女の子が好きな人となら是非ともいう内容だった。
問題は萩乃様の快諾だけだった。
感想お待ちしていま~す。