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第14話 婚約者の条件 3

夏休みに入ったお日柄の良い日の午後。


亜紀枝様と忍様が我が家へお越しになって、「結婚を前提としたお付き合いの正式なお申し込み」があった。


この時の忍様は意外にもかっこ良かった。


だって、きっと亜紀枝様と萩乃様のやり取りで進んでしまうと思っていたんだけど、忍様がご自分でパパとママと私に申し込んだんだもの。


亜紀枝様はそれを忍様の隣りで見守っているって感じだった。この前お会いした時のように背筋がピンと張っていてソファーには少し浅く腰かけ向きは少し斜めに忍様の方を向いていた。


いやー貴婦人の鏡って感じです。


一方の忍様もそんな貴婦人亜紀枝様の曾孫として見劣りすることはなかった。


紺地のスーツなんだけど、織り糸に水色か何か薄い色が入っているみたいで、水色のシャツが馴染んでいる。クリームイエローのネクタイも紺と水色で模様が施されているので全体的に統一感があって、爽やかさと上品さが上手く同居している。


シルバーフレームの眼鏡から零れる知性と親しみのある笑顔で萩乃様だけでなく、初対面のママのハートもガッツリキャッチしていた。


「お嬢さんと結婚を前提にお付き合いしたいと考えています。つきましてはお許しを頂きたいのですが、」


婿養子でなかなか主導権を握れないパパもさすがに私の縁談には首を縦には振っていなかった。でも忍様の隙のない完璧なお申し出にうっかり「分かりました」と言いそうになっていた。


萩乃様はもろ手を挙げて大喜び、ママは展開の早さにびっくり、そして夏くんは意味は分かってないくせに号泣。


で、私と言えば、完全に流されている状態。夏くんの方が自己主張出来るている感じだわ。


忍様は悪い方ではない、なんで私でいいんだろうって疑問はあるけど、私の進路のこととか色々配慮してくれているのはなんとなく分かる。


でも今日でお会いするのが2度目かと思うとこの勢いに乗っていいのかどうか躊躇する。


正直言えばもっと考える時間が欲しい。


その辺りを上手く萩乃様や亜紀枝様に言えないところがやっぱり子供なんだろうなぁ。


ママと私の間で夏くんはまだ号泣している。


忍様を見たら夏くんのことがおかしいのだろうか優雅に微笑んでいた。目が合ってしまいちょっと恥ずかしくなって俯いてしまった。


「桃乃ちゃん明日は空いていますか?もし良かったら二人で出掛けませんか?」


「だめーーーーっ」


夏くんが叫ぶ。萩乃様がコホンと咳をしたら、ママが何かピンと来たのか夏くんを抱えて、でも物凄い抵抗しているからパパも手伝って二人掛かりでリビングから退場していった。


「桃乃、明日の都合を聞かれていますよ」


萩乃様がまるでご自分が誘われているかのようにウキウキと催促してくる。


「・・・空いてます」


明日は特別用事がないことを萩乃様はご存じだし、でも宿題はあるのよ。ただそれがお出かけをお断りする事由にはならないわよね。


「午前中大学に用事があるので、それが済んだら迎えに行きますね。どこに行きたいか考えておいて下さい」


「はい」


一応返事はしたものの、16歳と24歳、この二人が一緒に出掛けられるところって一体どこだ?


あっ!と思ったけど、萩乃様と亜紀枝様がいる前では言えない。


忍様がお1人になった隙に提案してみようと思った。


亜紀枝様と萩乃様は結納はどこがいいとかいつ頃がいいとかそんな話しをしている。パパもママも私も忍様のお申込みにまだ返事はしていないはずなんだが、どうも私は周囲に置き去りにされるような状況に陥りやすみたい。


神様が味方に付いているのかしばらくしたら二人きりになれたので、チャンスとばかりに


「あのぉ、プールとかでいいので泳ぎに行きたいんですけど、ダメですか?」


「いいですよ。毎日暑いですからね。どこにするかはこちらで選んでおきますので、支度をしておいて下さい」


「はいっ!」


なんと!嬉しいことに泳ぎに行けることになりそう。


学校の近くに公営のスポーツセンタがあってそこに時々一人で泳ぎに言っているんだけど、萩乃様がいい顔しないので、家族には内緒で行っていた。そうなるとタイミングよくいける機会って少ない上に、プールで会う人でちょっと困った人がいて、最近は行くのを止めていた。


なんかすごい話しかけてくるんだよね。こっちはたくさん泳ぎたいって言うのに、泳ぎに行けばピッタリ付いてくる感じがどうにも気分悪くて、私の気のせいかもしれないけどやっぱり自然と足は遠のいてしまって、泳ぎたいのに泳げないストレスが溜まっていた。



脱字がありましたので、訂正しました。


名無し☆ さんご指摘ありがとうございます。

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