第13話 婚約者の条件 2
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嬉しいです。
自分で言うのもなんだけど、12歳離れた弟夏くんは私のことが大好き。
そしてこの夏くん5歳にして「天才バイオリン少年」として一部では有名だったりもする。
まぁママが音大の声楽科の出身なので、頷けなくもないけど、一方の私はレッスンは今でも続けているけど、音楽的才能は全く無縁だった。
一応私も今の夏くんくらいの時からバイオリンは習っていたけど、バイオリンを選んだ理由も確かピアノが大きくてなんか嫌だったのよね。子供用のバイオリンは小さくて持ち運べるし、バックが可愛くて確かそんな理由だった気がする。
夏くんがママのお腹の中にいた頃はよくバイオリンを聞かせてあげたの。まぁあんまり上手くないんだけど、ママが歌う時に何か楽器の音があった方が楽しいって言い出すから、つい。
夏くんはバイオリンの音がお気に召したみたいで、赤ちゃんの頃は音が聞こえると泣きやんだり、喜んだりしてくれた。
その内私の真似をしてバイオリンを弾きたがるので私が子供の頃使っていたのを持たせたら、それはそれは夢中になって弾いていた。
最初はすごい音だったけど、毎日一生懸命やっていたら段々格好とか良くなってきて自然と音も良くなった。
私のレッスンは家に先生が来てくれてのレッスンだったの。ある日私のレッスンを聞いていた夏くんが一緒にやりたいと言い出して。二人で曲にもならない音遊びを先生に聞かせてしまった。
そのとき先生の目が光った。そしてパパとママに言ったの。
「この子の才能、私に預けて下さい」って。
萩乃様や菊乃様は才能云々よりも毎日努力を積み重ねることで跡取りとしての根性を育てるといいとか言い出して、夏くんは私と一緒にバイオリンを習うことになった。
夏くんにしてみたら私と一緒に演奏ができるようになれるってことで最初は張り切っていたんだけど、私も学校の勉強や友達に頼まれた生徒会の手伝いが忙しくなって、合奏をする時間が減ってきていた。
私と一緒に演奏できないとなると夏くんは途端にバイオリンは不要に感じたみたいだけど、先生の方が入れ混んじゃって、私に夏くんのレッスン内容に合わせて曲を仕上げて欲しいと言ってきた。
「この曲に花丸がもらえると桃乃お姉さんと合奏できるわよ」が先生の殺し文句になっていた。
夏くんは私と合奏のために毎日練習に励み、その甲斐あって5歳とは思えないほど上達した。
先生が自分の先生に夏くんの話しをしているようで、音楽関係の偉い先生の間では「将来有望」とマークされているらしい。
ただ、夏くんレベルのお子様って意外とたくさんいるみたいだからこの先はどうなるかは夏くん次第で分からないけどね。
「ももちゃーん、ほしにねがいをがっそうしようよぉ」
さっきまで泣いてましたという顔でこれをしなきゃベッドには行かないと言い張る夏くん。パジャマ姿でバイオリン持ってやってきました。
私と言えば忍様に送られて家に戻ってから夕飯を食べ夏くん後にお風呂に入って今しがた出てきたところ。先にママと入った夏くんはパジャマに着替えて歯磨きして、寝るのは合奏してからと譲らない。
「一回だけだよー」
「うん!」
夏くんがメロディー、私は前奏と伴奏。
今の夏くんはもう少し難しい曲も弾けるけど、簡単かなという曲を合奏して上手く合わせられるところが楽しいみたい。
活き活きしてて本当にいい顔するんだ。音もしっとりと響いていてそばにいるとすごく心地いいの。
でもね、合奏が終わるといつも言うの。
「ももちゃんとおとがちがう・・・」
そりゃやっぱ夏くんの楽器の方がお高いからかな?でも夏くんの言いたいことはそういうことじゃないような気がして、いつも気休めの言葉しか答えてあげられない。
「夏くんが上手だからだよ」
「ぼく、ももちゃんのおとがいいなぁ」
私の音、夏くんにはどんな風に聞こえているのかな?