第11話 扉を閉じて 2
春になって立花に入学した。
やはり予想していた通り授業すごく厳しくて毎日予習復習に追われていた。水泳どころじゃなかったけど、なんとかしたくてまずは立花の勉強を頑張った。
1学期の成績はかなり良くて、これなら水泳と両立も出来そうな手ごたえを感じたから「水泳を本格的に習いたい」ってパパとママにお願いしたの。
反対したのは萩乃様、まぁ予想はしていたけどね。「女の子があられもない格好で」って、それでも合格と成績が良かった時はと約束していたから、目星をつけていたスイミングスクールにまずは見学に行った。どういうわけか付き添いは萩乃様だった。
飛び込みのクラスもあるスクールだったので、ここに通いたいってずっとチェックしてたんだよね。飛び込み台をみていたらもうすぐそれが叶うかもしれないって思ってウキウキしちゃった。
でもね。家に帰ってパパとママに報告しようとしたら
「あそこはダメだよ」
って萩乃様が一言。
「なんでー、確かに先生は男の人だけどみんな指導の仕方とかすごい良さそうだったじゃない!」
「桃乃っ」
私が珍しく口答えしたからママはびっくりしてたけど、やっぱり萩乃様の意見は承服できなかった。
なのに、なのに、なのに。
それから一週間くらいして、見学に行ったスイミングスクールの先生が痴漢で捕まったってテレビのニュースが出たの。どうもスイミングスクールに通っていた女の子にも体を触られていたっていう余罪もあるらしいとのことだった。
もう、がっかりよ。
萩乃様もなんでそんな先生がいたことに気付いたのか、あれもすごいと思ったけど、このニュースのせいで水泳習いたいって強く言えなくなっちゃったて、話しはそのまま立ち消えになった。
でもこのニュースを聞いて、私は夏くんが生まれたあの日の自分の行動がとんでもないことだと痛感してしまった。
初めて会った男の人の部屋に泊ったのに、自分の身が無事だったことが奇跡的だった思えてきた。
シンて紳士だったんだなぁって、まぁ彼女いたしね。小学生に何かするわけないか。
それにあの電話に出た口の悪い女の人は何かの間違いじゃないかった思えてきたりもした。
とにかくシンのことばかり考えるようになった。もう一度電話をしてみようと思ったけど、もらったメモを失くしてしまっていた。
シンに会いたい、シンに会いたい。
そう思って学校の帰りにシンのアパートへ行った。
彼女がいるかもしれない。またもめてるかもしれない。
でもそんなのどうでもいいから。シンに会って話がしたいって、ううん、話しなんて出来なくてもいい。もう一度だけ会いに行きたい。
バスを降りてからはシンのアパートまで全力で走った。
行ってみると、シンのアパートは取り壊されていた。
もう2度とシンには会えない。
その事実だけが心の中に傷跡になって残った。