第1話 お見合いはティータイムに 1
1学期の期末試験が終わった試験休みの日、曾祖母の萩乃様がセッティングしたお見合いの席に私は来ている。
といっても萩乃様と良く行くホテルのティールーム。
「超高級」といことで有名なホテルのティールームだから、天井もものすごく高くティールーム自体がとても広い作りになっている。
1席1席もきちんとしたソファーセットで隣の席との間隔も広く取っている。そんな贅沢な作りのティールームで目の前にあるケーキにまだ手がつけられないのが不満その1。
というのも肝心の見合いの相手もその付き添い?も来ていないのよ。
どういうこと?不満その2。
お見合い相手は萩乃様の女学校時代の先輩の曾孫。なので付き添いというのはその萩乃様の先輩になる。
先日、萩乃様は女学校の同窓会に行ってきたの。まだ現役のおばあ様がいっぱいいると思うとすごいことだわ。そのとき萩乃様の先輩、亜紀枝様とおっしゃるんだけど、亜紀枝様が「曾孫に良い方はいないか?」とおっしゃったらしい。
萩乃様を始め同窓会に集まったおばあ様達は「是非自分の(曾)孫娘を」と殺気だって写真釣書きを送ったらしい。その中で今日のお見合いに選ばれたのが私、津和蕗桃乃。
はっきりいってお見合いなんてやだったから、お見合い写真の撮影は高校の制服でしたのよ。だって相手は24歳だっていうから、高校生だったらドン引きかなって。
でも、結局は亜紀枝様が選んだみたい。というのも私が今通っている立花女学館高等科こそが亜紀枝様、萩乃様が若かりし頃を過ごした女学校なんだもの。
送られてきたお見合い写真の中で高校生は私だけ、しかも立花の卒業生は1人もいなかったとか、母校に誇りをもっている亜紀枝様はその辺りで決めたみたい。
立花女学館は初等科から高等科まであって、大学はないの。昔は高等科を卒業したらみんなそれなりの家へお嫁に行っていたらしい。
そういった卒業生の子供や孫は「縁故枠」での入学試験を受けられる。でも私は「縁故枠」ではなく「進学枠」の入学試験で受験した。
立花の「進学枠」ってのがくせものなの。立花には大学がない分、縁故枠で入ってくる子の偏差値はたかが知れている。
でも逆に「進学枠」の入学試験はかなりハイレベルで入学してくる子の偏差値は高いし、授業も難関大学進学用になっているから、進学率も物凄くいい。塾には通わず6年間立花に通っただけで有名大学に合格できるってことで人気がある。
そんな「縁故組み」と「進学組み」が校内で上手くやっているかっていうと、意外と上手くいっている。
「縁故組み」はやっぱり「お嬢様」と呼ばれる人が多いから性格も妬みとかなくて品があって穏やかだしね。たまにおかしな人がいるけど、「縁故組み」は在学中に「縁談」があるから学校側が生活態度に厳しいの。特に異性関係で生活態度が悪くなると「ご縁がなかった」ってことで進級すらできないんだから、あれはあれで大変そう。
まぁ「ご縁がなかった」人達は「お金」はあるみたいからそういうケースのときは大体「留学」しちゃってるみたい。
私はわけあって小学校6年生まで立花への進学は考えていなかったけど、中学受験はする予定だったから塾に通ったりと準備はしていて成績は良かったのよ。
立花も合格圏内だったから「進学枠」で受験した。でも面接の時に「縁故」があるってばれちゃった。そりゃそうよ。「津和蕗」なんてめったにない名字だもんね。
しかも萩乃様もおばあ様の菊乃様もママもみんな立花OGだったんだから。長くいる先生が知らないって言う方がおかしいわ。
その「進学組み」に入ってくる子達も難関の試験を合格しただけはある頭脳の持ち主で高い目標も持っている。だから立花に通っている生徒同士で問題が起きるってことはめったにない。
私の高校生活はそれなりに充実してた。「進学組み」にいるのに、お見合いで結婚なんて逃げ道っぽく感じてた。