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(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生  作者: 釧路太郎
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勇者の試練 第十一話

 下のフロアへ降りると、そこには扉の前に机と椅子が二組置かれているだけの小さな部屋しかなかった。

 三つある扉も鍵がかかっているのか開くことはなく、俺と愛華ちゃんは大人しく椅子に座って何かが起きるのを待つことにした。


 何かあるのではないかと思って周りを軽く見まわしてみたところ、俺の目に飛び込んできたのはとても小さなキッチンであった。

 料理をするには少し難しそうではあるが、飲み物を作るくらいだったら問題はないだろう。そう思ってみたものの、先ほどと同じようなことが起こっては面倒なことになってしまうという考えもあって俺はキッチンに気付かなかったフリをした。

 愛華ちゃんも視界に入ったキッチンを見かけたようなのだが、俺と同じようなことを考えているみたいで何も言ってくることはなかった。


 それからさらに十数分経過したところ、どんなに頑張っても開かなかった扉がゆっくりと開くと中からいかにも怪しい感じの男が出てきた。


「随分とお待たせしてしまったみたいで申し訳ないですね。一階を突破する可能性は考えていたのですが、二階と三階まで突破されるとは思ってもみなかったんですよ。ここが出来る前から私の出番なんて来るはずがないと思っていたんですけど、予想というのはなかなか当たらないものですね。私みたいなものが予想をすること自体がおこがましいともいえるのですがね」


 前回の事もあって愛華ちゃんは何のためらいもなく男に向かって引き金を五度六度と引いているのだけど、放たれた弾丸は男に命中することはなく空中で何かに当たったかのように止まってしまっていた。

 男はその弾丸を面倒くさそうに手で払いのけたところ、空中に止まっていた弾丸はそのまま真下に落ちていった。


 俺も愛華ちゃんも何が起こったのかわからないのだが、この男には何をしても効果がないという印象だけが残ってしまった。


「いきなり発砲するなんて野蛮な人ですね。それだけ何のためらいもなく銃を使うことが出来るからこそ、暗闇も階段も突破することが出来たんでしょうね。普通の感覚であれば相手の命を奪う事に対して罪悪感なんかもあるのでしょうが、あなたには全くそれを感じることが出来ませんね。魔王に対しても何の躊躇もせずに攻撃していたというのも納得ですよ。そこで、そんなあなたにとても良い話があるので聞いていただきたいところなのですが、その銃は下ろしていただけませんかね。何度撃っても今は意味が無いですからね」


「今はってどういう事?」

「そう焦らないでください。今から説明させていただきますからね」


 男は壁際に置いてあった椅子を自分が出てきた扉の前に置いてそのまま座ったのだ。

 いったい何が始まるのだろうと身構えていたのだが、男は俺たちの事を見るだけで何もする様子は見られなかった。


「そろそろ始めようと思うのですが、心の準備はよろしいでしょうか?」

「心の準備と言われても、何をするのかわからないので準備のしようもないのですが」

「おっと、肝心なことを伝え忘れていましたね。これから私が行うのはとても簡単なクイズを十問だけ出すという事です。そのクイズに見事九問以上答えることが出来ればあなたの勝ちという事で最後のフロアへと向かうことが出来るのです。クイズに不正解だったとしても命を奪ったりなんてことはしませんからご安心くださいね」


 いきなりクイズと言われて俺は驚いていたのだが、俺以上に驚いていたのは愛華ちゃんだった。


「クイズに答えるのはいいのですが、私たちはまだこの世界の事を何も知らないんですよ。この世界に関する問題だと答えられないことの方が多いと思うんですけど」


 いくら頭のいい愛華ちゃんと言えども知らないことには答えられないだろう。俺たちがこの世界に来てまだそれほど経っていないのだから知らないことの方が多いのだ。


「そこは安心してください。私が出すクイズはあなたが知っている事しか出しませんので。私の能力であなたの知っていることを調べてから問題を出すので、答えを知らないという事はないと思いますよ。ただ、人間というのはどうしても物事を忘れてしまったり間違えて覚えていたりするものなのですよ。なので、あなたが答えに迷っているときなどはその持っているタブレット端末で調べてもいいんですからね。ですが、そちらの男性に答えを聞くというのは無しにしてくださいね。男性に答えを聞いた時点であなたは失格になってしまいますからね」


 愛華ちゃんは俺の事をチラッと見た後に余裕そうな感じで俺に向かって親指を立てていた。俺に笑顔を向けるのはこの世界に来て数回目かもしれないな。


「そんなに緩いんだったら私は全問正解しちゃうと思うんだけど、そんなに簡単な条件でいいの?」

「ええ、これで問題ないですよ。ただ、二問以上間違えた場合でも最後の問題までしっかりと答えてもらうことになっておりますから。途中でやめた場合に限りまして、罰を受けていただく必要があるのです。間違ってしまったとしても、全問答える事をお勧めいたしますよ。どんな問題でも最後まで答えてもらう必要があるんですよ」


「そんな条件で本当にいいのかな。そんな簡単な条件にして、あなたに何の得があるの?」


「私は単純にクイズに答えてもらうのが好きなんですよ。あなたの事を知ることで私の知らない世界が広がっていくというのも好きなんです。私が知らなかったことを知ることが出来るというのが、好きなんですよ」

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