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(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生  作者: 釧路太郎
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勇者の試練 第七話

 今まで歩いていたとてつもなく長い階段が地下二階だったのか、今いるこのフロアが地下二階なのかわからない。

 どっちでも気にすることはないと思いつつも、その事が少しだけ気になって頭の中がモヤモヤしていた。


「真琴さん真琴さん。あそこを見てくださいよ。何か書いてありますよ」

「本当だ。看板があるんだけど、なんて書いてあるんだろう。そもそも、これって言葉なのかな。何かの記号とか図形だったりするんじゃないかな?」


 愛華ちゃんは鞄からタブレットを取り出してその看板を撮影していた。電波なんて無いのでネットに繋いで検索することも出来ないのにどうするのだろうと思っていたのだが、その写真を様々な角度から見ている。何がわかるのかなと思っていたら、愛華ちゃんは何かを思い出したように一瞬だけ声を出していた。


「どこかで見たような気がしてたんですけど、城下町を歩いているときに見かけた休憩所と同じ看板ですよ。ココに書かれているのは文字ではなく休憩所を表す記号だって中にいた人に教えて貰ったんでした。他にも色々と教えて貰ったんですっかり忘れてましたけど、これは休憩所を表すってのは思い出しました」

「俺も何度か休憩所には行ったことあったけど、看板までは気にしてみたことはなかったな。その辺が俺と愛華ちゃんの頭の差なのかもね」


「意識してないだけでお兄さんも気付かないうちに理解してるって事じゃないですかね。私と真琴さんに違いがあるとすれば、そのあたりだけだと思いますよ」

「そんな事はないと思うけどね。でも、せっかく休憩所があるんだし少し休んでいこうよ。歩きっぱなしで疲れてるでしょ?」

「そこまで疲れてはいないんですけど、この先何があるかわからないですよね。少し休んでいくのもありですね。では、私が飲み物を探してきますので真琴さんは座って待っててください」


 ここまでほとんど何もせずに後を付いて来ただけの俺が座って休憩するのも申し訳ないよな。ここはカフェの店長でもある俺が何か美味しいものでも作ってあげるチャンスなのではないだろうか。


「いや、愛華ちゃんの方こそ座って休んでてよ。俺は何もせずにただついてきただけだし、役に立たせてほしいな。あそこに使えそうなものもあるし、カフェの店長でもある俺に任せてよ」

「そうですか。それもそうですね。真琴さんの方が美味しいモノを作れると思いますし、ココはお願いします」

「ありがとうね。俺も愛華ちゃんの役に立ちたいなって思ってるからね」


 そこまで道具に期待はしていなかったのだが、一般家庭くらいの道具は普通に揃っていたので普通に美味しいモノを作れそうな感じにはなっていた。

 水道水がの飲料用なのか気になる所ではあったが、冷蔵庫の中に未開封のミネラルウォーターが何本か入っていたのでそれを使うことにした。

 なぜここに冷蔵庫があるのかも疑問ではあるが、そんな事は気にせずに使うのもいいだろう。きっと、俺たちの事を心配した誰かが用意してくれたに違いない。


「こんなに欲しいものが揃っている休憩所もあるもんなんだね。さすがは全国勇者連合の作った試練のダンジョンだね」

「いくら連合でもここまでの物は作れないと思いますよ。第一、ペットボトルなんてこの世界に来てから始めてみましたもん。水筒も動物の胃袋で作られた物だったり瓶だったりしてましたよね?」

「そう言われたらそうかも。じゃあ、この冷蔵庫とペットボトルの水はいったい誰が置いたんだろう?」


 ペットボトルなんてあって当たり前だと思っているので何の違和感も無かったのだけど、愛華ちゃんに言われた通りでこの世界にこんなものがあるのはおかしい。

 何者かの罠なのかもしれないと思う気持ちが半分、もう半分は神様的な存在が俺たちの事を気遣ってこの休憩所を設置してくれたという事だ。

 そんなに都合の良いことなんて起きてたまるかという気持ちもあるのだけど、ココは俺たちの住んでいた世界とは違う異世界なのだからソレくらいのサービスがあっても罰は当たらないと思うことにした。


「愛華ちゃんはコーヒーと紅茶ならどっちがいいかな。誰でも作れるようなインスタントから本格的なものまで何でもあるみたいだよ」


 さすがにカフェとは揃えているものが違うのだが、ダンジョンの中で飲めるものとしてはこれ以上を求めるのも贅沢といえるだろう。ただ、ココにあるものだけでも普通に美味しい物が出来上がる自信はあった。


「あの、すいません。この椅子に座ったところ、手足を固定されて動けなくなっちゃいました。私としたことが油断してしまったみたいです」

「え、休憩室なのにそんなトラップとかあるの。ちょっと信じられないよね。怪我とかはない感じかな?」


「怪我とかはないですね。締め付けられてはいるけど痛くなるほどでもないですし、指先を動かすことくらいしかできそうにないです。これだとカップを受け取ることも出来ないので、真琴さんに飲ませてもらうことになっちゃいそうですね」

「飲ませてあげるのは構わないんだけど、それだとホッと寄りアイスの方がいいよね。ストローもあるし、美味しいのを作って飲ませてあげるよ」


「え、ちょ、本当ですか。冗談のつもりだったんですけど、冗談でも言ってよかった」


 身動きが取れないのはかわいそうだと思うのでどうにか仕掛けを解除できないかと思ったのだけど、愛華ちゃんはしばらくこのままでもいいという事でドリンク作りを再開することにした。

 甘くてミルク多めの美味しいカフェオレでも作ろうかな。

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