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(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生  作者: 釧路太郎
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勇者の試練 第三話

 試練を受けるためには扉を開けてダンジョンの中へ入らないといけないのだが、その扉を開けるために必要な鍵は存在しない。

 鍵が存在しないので鍵がかかっていることはないのだが、誰よりも怪力なイザーちゃんが押しても引いても持ち上げても扉を下に押し込んでも動く気配すらなかった。


「この扉って本当に開くのかな。どんなに力を入れても開かないんだけど、お兄さんも手伝ってもらってもいいかな?」

「手伝うのは構わないけど、百の力が百一になったところで何も変わらないと思うけどね」

「それはそうかもしれないんだけどさ、私と逆の方向に力を入れてもらっていいかな。私が右に押すときは左に押してみて」


 俺は言われた通りに力を入れてみたのだが、どうやっても動く気がしなかった。

 何か特別な方法で開けるとしか思えない。

 俺もイザーちゃんもその方法を見つけ出そうと色々と試した見たのだけれど、どんなに頑張っても扉が動く気配すら感じられなかった。


「その扉は普通にやっても開きませんよ。条件がそろわないと開かない魔法がかかってるんですって。皆さんが帰ってきたら教えて貰えると思いますよ」

「どんなに力を入れてもどうすることも出来なかったのよね。力を入れても入れてもどこかに力が逃げているような感覚だったもんね。お兄さんもそう感じなかった?」


 俺は必死になっていたので細かいことは覚えていないのだが、言われてみれば確かに力が分散してしまっていたような気もしてきた。

 気がしていただけなので実際にどうだったのかなんて気にしないのが一番だろう。覚えていないなんて言ったらただの役立たずだと思われてしまうかもしれない。



 四人の中で一番最初に帰ってきたのは『全国勇者連合』に言っていた愛華ちゃんであった。

 この世界にも空を飛ぶ乗り物があったことにも驚いたのだが、特に補給もすることなく再び戻っていったことに驚いてしまった。


「私が最初に戻ってくるって言うのは意外でした。皆さんよりも遠い場所に行くことになってしまった事もあって、話を聞き終わった後は急いで戻りたいと言ってみたんです。そうしたら、真琴さんとポンピーノ姫が見ていた飛行船に乗ることが出来たんですよ。元の世界でも乗ったことがない飛行船に乗れて嬉しかったんですけど、空の上でも魔物が襲ってきたので大変でした。私の銃では魔物の八割を駆除するので精いっぱいだったんですよ」


 八割も倒すことが出来たのであれば誇ることはあっても落ち込む必要はないと思うのだが。圧倒的な力を持つと、人はより謙虚になってしまうのだろうか。もう少し気を大きく持ってくれてもいいのではないかと思っていた。


「早速ですが、『全国勇者連合』の管理する扉を開ける条件って何だったんですか?」

「そう慌てなくても大丈夫よ。でも、私と真琴さんで開けることが出来るか心配になっちゃう条件なんですよね」

「愛華とお兄さんの二人で難しいって事は、うまなちゃんたちの帰りを待った方がいいって事なのかな?」


「そうですね。私と真琴さんの二人だと開けることが出来ないって言うのを皆さんに見てもらった方がいいかもしれないです。私も精一杯努力はしようと思うんですけど、この条件はあまりにも厳しいので私と真琴さんの二人では開けることが出来ないんじゃないかな」

「私もさっきお兄さんと一緒に開けようとしたんだけどね、どんなに力を入れても開かなかったんだよ。押しても引いても上げても下げても蹴り飛ばしても開くことはなかったんだ」


「イザーさんの力でも開かないって事は、純粋な力だけで試練の扉を開けることが出来る人類は存在しないって事ですね」

「ちょっと待って、その言い方だと私が人類最強みたいに聞こえるんだけど。愛華ってそういう風に思っててくれたの?」

「もちろんですよ。私が知っている世界だとダントツでイザーさんが力持ちだと思うんです。私の知らない強い人がいるかもしれないって思う事もあるんですけど、どう考えてもイザーさんよりも力が強い人っていないと思うんですよ」


 イザーちゃんの力が世界で一番強いというのは俺も完全に同意している。

 体が金属で出来ている魔物を素手で真っ二つに裂けるのはどれくらいの力が必要なのかわからないが、どんなに世界が広いと言えどもイザーちゃんの真似ができる人間なんて存在しないだろう。


「それにしても、みんな遅いわね。こんなに遅いんだったら私も急ぐ必要はなかったみたいですね」

「そうは言うけどさ、俺としては愛華ちゃんが無事に帰ってきてくれて嬉しいよ。戻ってくるのが遅くなるとその分だけ心配になっちゃうからね」

「もう、そう言ってもらえるなんて思ってなかったんで嬉しいですね。私の事を心配してくれるって事は、真琴さんもそういう事なんですね。そういう事だったら、私たちの試練は扉を開けることすら出来ずに終わってしまうって事になるかもしれないですよ」


 俺が心配することで扉が開かなくなるという理由がわからない。

 イザーちゃんもポンピーノ姫も愛華ちゃんの言っていることを理解出来ていないと思う。

 理由を知るとデメリットがあるという事なのだろうか。


 頭のいい愛華ちゃんが隠すという事は、その理由を知らない方がいいという事なのだろうな。

 俺もイザーちゃんもそれはわかっているのだが、ポンピーノ姫はどうにかして愛華ちゃんに扉を開ける方法を聞こうとしていた。それでも、愛華ちゃんが理由を教えてくれることはなかったのだ。

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