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(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生  作者: 釧路太郎
王様リセマラ

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王様リセマラ 第十三話

 柘榴ちゃんはシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を説得することは出来なかったのだが、次に挑戦する瑠璃はどこから出てくるのだろうと思うくらいに自信に満ち溢れていた。


「イザーさんにこれ以上迷惑かけないようにしなくちゃね。兄貴は私の邪魔をしないようにしてくれたらそれでいいから。変なことしないでよ」

「俺は見てるだけで何もしないよ。瑠璃に任せた方が失敗もしないと思うし」

「そうだよ。やっぱり兄貴はわかってくれてるね。じゃあ、サクッと終わらせてみんなでこの世界を楽しもうね」


 新しいシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は先ほどまでとは見た目は一緒なのだが、歩き方や言葉遣いは別人ではないかと思ってしまうくらい変わっていた。

 ポンピーノ姫もやってきたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世が自分の父親なのか確信が持てない様子であった。


「なんだお前らは、俺の娘の部屋で何をしている。返答次第では殺すぞ」


 いきなり喧嘩腰で向かってくるシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世に胸ぐらをつかまれた俺は少しだけビビってしまったが、瑠璃が俺たちの間に割って入ってシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世を宥めようとしていた。


「勇者の称号を貰う前に陛下とお話をしておいた方が良いと思ってお姫様にご協力いただいていたんですよ。何もやましいことなどしてないですからね」

「そう言えばそんな話も聞いていたな。我が領土にいる魔王を倒したものが現れたという事だが、こいつのような軟弱物が魔王を倒したなど信じられぬな」


 老人に近い年齢だと思われるシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが俺を掴む手は力強くこのまま抜け出すことは出来そうになかった。

 俺の胸ぐらをつかんだままのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世は顔だけ瑠璃に向けると値踏みするようにつま先から頭の先までじっくりと見定めているようだ。


「お前はこの男の家族か?」

「そうですけど、それが何かありますか?」

「そうか、それは良いな。この男の罪を家族である貴様に償ってもらう事にしよう。たまには貴様のようなモノを相手にするのも良い余興となるであろうな」


「お父様、どうかそのようなことはおやめください。この方たちは魔王を討伐してくださったんですよ。そんな方を慰み者にしようなどと愚かなお考えはおやめください」

「案ずるな。お前のお前の思っているようなことはせぬ。魔王と戦って五体満足でいられるような強者だぞ、そんなモノたちに我が国の兵器を試させてもらうというのは良い案だと思うのだがな」

「いけません。それだけはダメです。そんな事をしても誰も幸せになりません」


「大丈夫だ。あの兵器が完成すればこの国は平和に近付くというものだ」


 相変わらず俺の胸ぐらをつかんだままのシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが、俺の目の前であまり興奮してしゃべらないでほしいと心から願っていた。

 瑠璃を使って兵器を試したいと言っているみたいだが、いったいどんな兵器が出てくるのだろうと少しだけ心躍らせてしまった。

 何歳になっても男子というものは平気という言葉に心惹かれてしまうようだ。


 俺の胸ぐらをつかんだまま部屋を出ようとしたシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世ではあったが、さすがに俺を持ったまま部屋を出るのは面倒になったようで俺を壁に向かって投げていなくなってしまった。

 俺は壁に当たったときに受け身をとったのでそこまでダメージは無かったのだ。壁に向かって投げられるという経験は過去にもしたことがあったので受け身をとることが出来たのかもしれないが、そんな経験をしたことに当然感謝などするはずも無かった。


「兄貴大丈夫か?」


 瑠璃はシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世には目もくれずに俺のもとへと駆け寄ってくれた。

 どんな時でも俺の事を心配してくれる良い妹だと思いながら見ていたのだが、その事が気に入らなかったのか瑠璃は俺の顔を軽く押しのけると気まずそうに視線を外してポンピーノ姫に話しかけていた。


「王様ってあんな感じの人だったっけ。もう少し落ち着いた感じの人だったと思うんですけど」

「私もそれは感じていました。見た目も声も確かにお父様なのですが、私にはどうも別人にしか見えないのです。イザーさんが連れてきた別の世界のお父様だという事を知らなければお父様だとは思えなかったと思います」

「一番最初に見た王様だったら兄貴を掴んで投げ飛ばしたりなんて出来なかっただろうしね。そういう違いもあるという事は、私たちの話をちゃんと聞いてくれる王様もいるって事だもんね」


 見た目も声も一緒だとしても性格まで完璧に一緒だという事はないのだろう。生まれた場所が一緒で環境が同じだとしても全く同じように成長するとは限らないし、そういった点を踏まえるとちゃんと俺たちの話を聞いてくれる王様がいるかもしれないという希望が持てるという事だ。

 俺と瑠璃はそれを理解して次に希望をつなぐことが出来ると確信したのだが、今回のシュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世も俺たちの話を聞く気なんて更々ないという事がわかったのはマイナス要因かもしれない。


「大変です。私の予感が外れるとよいのですが、お父様はお二人で機械人形の試験をするつもりなのかもしれないです。さすがのお二人も機械人形の相手をするのは危険だと思いますので、今のうちにお逃げください」

「その気持ちはありがたいんだけど、王様はもう戻ってきたみたいですよ」


 シュヴァンツ・フォン・アルシュロッホ九世の周りを囲むように六体の人形が立っている。

 表情を持たない人形はゆっくりと瑠璃の方へ顔を向けるとそのままこちらへと歩みを進めていた。

 どれくらい強いのかわからない機械人形なので出方をうかがう瑠璃であった。


 瑠璃の目の前まで進んできた機械人形は瑠璃の顔を下から覗き込むように見上げると、そのまま口からミサイルを発射していた。

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