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(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生  作者: 釧路太郎
王様リセマラ

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王様リセマラ 第九話

 人を判断する基準は人それぞれだと思うのだが、この世界の人達は自分たちの価値観が正しいと思っているようで彼らの考えを変えるのは容易ではない。

 魔王を倒したのが俺だという事は伝わっているようなのだが、どこからどう見ても俺の事を怪しいと思い込んでいる人たちなのだ。

 客観的に見ると今の俺はとてもとても怪しいとしか思えないのだが、その様子を見ていた人たちは皆俺の奇跡を信じていたのだ。


「そんな事よりお父様。この絵本を見てくださいまし」

「こんな時に何をしているのだ。全く、誰に似たのかわからぬがポンピーノも困ったモノじゃな」


 この瞬間に俺は前回までと同様に彼らの死を目撃するという事を理解した。

 ポンピーノ姫は違った結果になるように努力はしていると思うのだが、その努力が意味のないものになっているのだ。

 どんなに頑張ってみても王様たちにはポンピーノ姫の気持ちなんて届きはしないのだ。

 その結果、同じことを繰り返すだけになってしまうのだろう。


「今回もダメっぽいね。また新しい人たちを連れてこないといけないのかって思うと、ちょっとだけ気が滅入っちゃうな」

「あのお姫様も頑張ってくれてはいるみたいだけど、あの王様があんな感じのままだったら難しいのかもね。もっと話が分かる王様っていないのかな?」

「探せばいるとは思うんだけど、私もどの世界に行けるかを選べてるわけじゃないからね。お兄さんの力を借りればある程度は行きたい場所も選べるんだろうけど、今のままじゃお兄さんを連れていっても一緒に戻ってこれるかわからないんだよね」

「それってどういう意味なのかしら?」


 俺が一緒に行けば行きたい場所に行けるという事もわからないのだが、俺を連れていって一緒に戻ってくることが出来るかわからないというのもどういう意味なのだろう。

 何か特別な決まり事でもあるというのだろうか。


「今まで何度か生きている人を連れて向こうに行ったことがあるんだけど、その時ってもともと向こうの世界にいた人なのかこっちから向こうの世界に連れて行った人なのかわからなくなっちゃうんだよね。生きている人と死んでいる人だったらその区別も簡単なんだけど、生きている人同士だと全然わからなくなっちゃうんだ。それに、自分と瓜二つな人がいきなり目の前に現れたら誰だって混乱しちゃうと思うんだけど、お互いに自分の事を殺そうとしちゃうことが多かったよ」

「なんで自分と同じ人を見たら殺しあうの?」

「さあ、その理由はわからないな。自分の偽物は排除したくなるって事なんじゃないかな。自分と姿かたちも一緒の人がいたら怖いって思うからかもね」


「そう言われてみたらそうかも。私も自分と同じ人が目の前に現れたら何か良くないものだと思って撃っちゃうかもしれないです。ドッペルゲンガーって遭遇すると死期が近いって言われてるんですよね」

「そういう説って聞いたことあるかも。もしかして、世界中で目撃されているドッペルゲンガーってイザーちゃんが適当に連れてきた人達だったりするの?」

「そんな事はないと思うけど、昔から何度か試してたこともあるから否定はしきれないかも。いろんな場所に行ってたけど、今みたいに明確な目的なんて何もないからどう先の時間とか気にして無かったかも」


「こっちの世界から誰かを連れて行って戻ってくるときに時間がかなり経過してたこともあるって事なのかな?」

「同じ時間に戻ってくるのって難しいんだよね。同じ場所に戻ることだけなら簡単なんだけど、同じ時代に戻るのって何か特別な目印が無ければ難しいんだよね。この世界にはうまなちゃんとお兄さんがいるから割と簡単に見つけられるんだけど、二人がいない世界って目印になる人がいないから厳しいんだよね。百年単位でズレちゃうこともあるし、五年以内だったらセーフかなって感じだよ」

「それって、この世界から連れていかれた人が神隠しにあったとか浦島太郎現象に遭うとかそういう話なのかもしれないね。タイムトラベラーとかそういう人たちの原因って、イザーちゃんだってことなのかもね」

「それは否定できないけど、私だけじゃないと思うよ。私みたいに並行世界を行き来することが出来る人だっていると思うし、そんな技術を持っている集団だっているかもしれないじゃない。だから、私だけが原因だとは言えないと思うよ」


 みんなはその事について言及はしなかったけど、十中八九イザーちゃんが原因で神隠しが起きていたのではないかと思っている。タイムトラベラーや預言者といった人たちも、イザーちゃんが今から過去に連れていってしまった可能性が高いのではないかと思うな。


「とにかく、私はまた頑張って王様を見つけてくるよ。ポンピーノ姫が説得できるような話の分かる人が見つかるように祈っててね」

「祈りはするけど、祈るだけでその願いが叶うとも思わないのよね。何か成功確率を上げる方法を見つけ出さなくてはいけないんじゃないかしら。愛華ちゃんならその方法にたどり着くヒントを見つけられると思うんだけどね」

「私も愛華さんなら見つけられそうな気がしてますよ。もちろん、私も先生として出来る限りの協力はしますけどね」


 ここに来てプレッシャーをかけられてしまう愛華ちゃんが少し気の毒に思えたが、みんなに頼られている愛華ちゃんは心なしか嬉しそうに見えているのであった。

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