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(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生  作者: 釧路太郎
王様リセマラ

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王様リセマラ 第七話

 ポンピーノ姫が持ってきた一冊の絵本には銀髪の女性が死体の山を築いているところが描かれていた。

 みんな一斉にイザーちゃんの事を見ていたけれど、イザーちゃんはその絵本について言いたいことがあるみたいだ。


「ちょっと待ってよ、これって間違ってるよ。私は人を殺したことがあってもこんな風に殺した人を一か所に集めたりなんてしないって」

「そうかもしれないですね。今までもイザーさんは殺した証拠が残らないように他の世界に持っていってたりしてますからね。こんな風に死体を残すなんてことはしないと思いますね」

「そうだよ。愛華の言う通りだよ。私は人は殺してもちゃんと自分で処理はしてるからね」


 胸を張って言うようなことでもないと思うし、そんな風に言うとこの絵本のモデルが自分だと言っているようなものではないか。誰もそれに気付いていないようなのであえて言うことはないけれど、完全に自白しているようなものではないだろうか。


 うまなちゃんはそれに気付いてしまったようだけど、俺と同じく黙っているようだ。目くばせで何となく察してしまった。


「そんなコトより、この絵本って昔からあるの?」

「いえ、これは最近私が作りました。おじいさまのお話を思い出しながら描いたんですけど、完成してすぐにイザーさんがやってきたので驚いていたことろなんです」

「そうなんだ。お姫様が作って完成させた所だったんだね。そんな偶然もあるなんて驚きだね」


 おそらくだが、これは偶然などではなく仕組まれたモノなのだろう。

 イザーちゃんがこの場所とこの時代を選んだのだって何かしらの意図があったのかもしれないが、そう誘導されていたという可能性だってあるのではないだろうか。

 神や悪魔だっている世界だし、イザーちゃんの行動を意のままに操るような恐ろしい存在がいたとしても何らおかしいことなんて無いと思う。

 うまなちゃんが俺の心を読んでいるかの如く頷いているのだが、俺の考えが本当に読めているのか後で確認しておきたいなと思ってしまった。


「おじいさまから聞いた話ではもっと残忍な方だったので、少しでも表現が柔らかくなると思って絵本にしたんですよ。ですが、私の表現力ではここまでが精一杯だったようです」

「十分わかりやすいと思うけどね。でも、私はこんなに残酷なことはしてないんだよ。本当だって、嘘じゃないんだって」

「あら、そんな風に必死になると余計に怪しく見えちゃうわよ。イザーちゃんは本当にこんなに人を殺してしまったのかしら?」

「イザーさんなら殺せると思いますよ。ですが、こんな風に綺麗に形が残るような殺し方はしないと思うんですよね。ほら、さっきの暴れっぷりを見てもそれはわかりますよね」


 愛華ちゃんにそう言われたからなのか柘榴ちゃんは先ほどの光景を思い浮かべているようだ。

 襲い掛かってくる騎士を鎧ごと真っ二つに引き裂く腕力はいったいどんな鍛え方をしてきたのかと思うくらいなのだが、そう言われてみると五人とも違う方法で戦いを行っているのが思い出される。


 銃で撃ち殺している愛華ちゃんは別として、他の四人が手を下した人の死体は個人が特定できるような状態ではなかったと思う。

 イザーちゃんが絵本の中の人達をやったのだとしたら、あの絵本に描かれているような綺麗な死体を積み重ねることなんて出来そうもないな。


「思い出したわ。確かにイザーさんの方法ではあんな風に死体を積み重ねることなんて出来ないわね。でも、あの絵本に描かれている死体がこちからか見える範囲のだけが形を保っているという可能性もあるのよね。イザーさんならそれをやりかねないとは思うのよ」

「そんなことしないわよ。そんな事をする必要なんてないでしょ」


「ちょっと気になるんだけど、なんでみんなそんなにポンピーノ姫が作った絵本が全部正しいって思ってるのかな。絵本なんて本当にあったことを描いてるって可能性は低いんじゃないかな。だって、ポンピーノ姫はイザーちゃんが戦ってるところなんて見たことなかったんでしょ?」

「はい、おじいさまから聞いた話を私なりにまとめて描いてみました。銀髪の少女が死体の山の上でお祈りをしていた。って話を聞いてこの絵を描いたんです」


 うまなちゃんの言う通りで、絵本に描かれていることがすべて正しいとみんなが思い込んでいたのはおかしいと思う。

 写真や映像ならそう信じるのもわかるのだけど、このお姫様が描いたという絵が完璧にあの場面を描いていると信じる根拠はいったい何なんだろう。俺にはそれもわからない。


 今も嬉しそうな顔で柘榴ちゃんが絵本を読み進めているのだが、時々見比べるようにイザーちゃんと絵本を見比べているのがココからでもわかってしまった。

 俺はまだあの絵本を全部読んでいないのでわからないことだらけなのだが、それ以前にイザーちゃんが何のためにこの世界に来ていたのかという事も気になっている。


「それにしても、この絵本に出てくる銀髪の美少女はなかなかよく描けてると思うよ。私も嫉妬してしまいそうなくらい綺麗に描けてるよね。これも想像して描いたって事なのかな?」

「嫉妬するほどでもないと思うけど、何も見てないにしてはイザーちゃんの特徴をよくとらえていると思うな。ほら、この少女もイザーちゃんも胸が膨らんでないからね」


 さすがにそんな事を言うのはうまなちゃんだとしてもまずいのではないだろうか。

「自分だってそんなにないくせに」


 イザーちゃんも負けじと言い返しているのだけど、声が小さすぎたのかうまなちゃんには聞こえていないようだった。

 聞こえていたところで二人は喧嘩をするなんてことはないだろう。

 

 そう思って見ていると、なぜか二人はターゲットに愛華ちゃんを選んだようだった。

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