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(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生  作者: 釧路太郎
悪魔狩り

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悪魔狩り 第二十一話

 うまなちゃんの言葉は映像にはのっていないけれど、その口の動きから俺の事を誘っているという事だけは理解出来た。

 カメラなんてどこにもないはずなのに、この映像のうまなちゃんはバッチリカメラ目線を決めているのだ。俺が夢の世界にいた時もみんなに見られているという事はわかっていたけれど、どこにカメラがあるのかという事はわからなかった。


「ずっと気になってるんだけど、なんでこの人の夢に出てくるうまなちゃんって執拗にあの人を殺そうとしているのかな。何か恨まれるようなことでもやったのかな?」

「さあ、どうなんだろうね。俺がさっきまで見ていた向こうのうまなちゃんはいつものうまなちゃんとは別人のように感じたけどな。そう考えると、俺が知ってるうまなちゃんと野城圭重が知っているうまなちゃんに違いがあるのかもしれないよね。俺はうまなちゃんの事をそんなに詳しく知ってるわけじゃないし、俺の知らない一面があるかもしれないって事だもんね」


「私はお兄さんよりずっとずっと長くうまなちゃんと一緒にいるけどさ、昔からうまなちゃんって変わってないと思うよ。見た目とかはさすがに変わってるけどさ、性格は全然変わってないと思うんだよね。昔から優しくて人想いなところがある女の子だと思うよ。あんな風に誰かを追いかけまわしてるところなんて見たことなかったもん」

「私もイザーさんと同じです。うまなさんがあんな風に人を追いかけまわすところなんて見たことが無かったです。真琴さんを探して追いかけてるみたいなことはあったかもしれないですけど、あんなふうに敵意を向けたまま追いかけるってのは想像もつかないですね」


「俺もうまなちゃんが誰かを殺そうとしているというのは想像つかないな。イザーちゃんや愛華ちゃんが誰かを」

「お兄さん、私と愛華がどうかしたのかな?」

「言葉を選んで発言した方が良いと思いますよ。ココで誰が聞いているか真琴さんもわかってますよね?」


 俺は過去にいじめられていたことがあるのでわかるのだが、人から悪意を向けられるという事に対して感じていたものとは違う恐ろしい感情をぶつけられている。言葉に出すことも憚られるような負の感情がイザーちゃんと愛華ちゃんから俺に向けられていた。

 二人のすぐ後ろにいるうまなちゃんが心配そうな顔で俺を見ているけれど、二人の顔は見えないので俺が置かれている状況がどうなっているのかなんて理解していないだろう。だが、それでいいのだと思う。俺の置かれている状況をうまなちゃんが理解してしまったとしたら、そんな恐ろしいことを考えるのはやめにしよう。


 余計なことをしてあの時の誘拐犯みたいな目に遭いたくはないからな。


「うまなちゃんはさ、自分があんな感じになってるのってどう思うのかな?」

「別にどうも思わないかな。圭重先輩が私の事をそう思ってるのかってショックは受けたけど、それ以上の物はないかな。私がイザーちゃんの事をどう思っているか気になったとしても、私の夢を覗いちゃダメだからね。勝手に見たら、怒るからね」


 映像のうまなちゃんと違ってこちらのうまなちゃんはいつもの笑顔で俺たちに向かって拳を突き出してきた。

 おそらく、そんな事をしたらダメだよという合図なのだろうが、怒っているようには全く見えなかった。


「うまなさんの事もそうですけど、圭重さんの中で私と瑠璃先生があんな風に思われてるのってちょっと気持ち悪いですよね。私はあんな感じじゃないと思うんですけど」

「でも」


 俺が口を開いた瞬間に愛華ちゃんに睨まれてしまった。

 そこまではわかるのだが、なぜかイザーちゃんも俺の事を睨んでいた。

 あの時の誘拐犯にも見せなかったような怖い顔の二人を見て俺は泣き出してしまいそうになっていた。


「愛華は優しいって思われているって事だね。お姉ちゃんもそうだけど、二人ともあいつに好かれてるって事なのかもしれないよ」

「あら、その理屈だとうまなちゃんはアレに嫌われているって事になるんじゃないかしら。この世界にうまなちゃんを嫌うような人がいるなんて思えないんだけど、アレっていったいどういうつもりでうまなちゃんをあんな感じにしたのかしらね。私、少しだけ気になっちゃうわ」


 柘榴ちゃんの言葉を聞いたイザーちゃんと愛華ちゃんは時が止まったかのように固まっていた。

 二人は同じタイミングで動き出し、同じように映像を凝視していた。

 食い入るように画面を見つめる二人は慌てたように何かを探しているのだ。


 イザーちゃんも愛華ちゃんも鬼気迫る様子で映像の様々な場所をチェックしているのだ。

 映像に映し出されているのはうまなちゃんが追いかけてきているという状況なのだが、うまなちゃんの姿は先ほどに比べてもかなり小さくなっていた。ソレだけ距離が離れているという事なのかもしれないが、離れているにもかかわらず表情がしっかりと読み取れてはいたのだ。


「こんな事ってあってはいけないよね」

「そうですよ。こんなのは夢でもあってはいけないです。絶対にダメです」


 イザーちゃんと愛華ちゃんは二人で何かを決めたらしく、顔を見合わせてから小さく頷くとそのままイザーちゃんは俺たちのもとへと近付いてきて、愛華ちゃんは野城圭重が寝ている部屋へと向かっていった。


「夢って言うのは自分が意識してるものだけが出てくるってわけでもないんだよね。自分が見たことのない人でも夢に出てくることとかもあるみたいだよ」


「そうなんだ。でも、圭重先輩の夢に出てる私って私なのかなって思ってたんだけど、圭重先輩が私の事を良く知らないからあんな感じになったって事なのかな。それったらちょっとショックかも」


 遠くから微かに発砲音が聞こえてきたような気もするけれど、誰も気にしていないようなので俺も無かったことにしたのだった。

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