悪魔狩り 第十一話
瑠璃とうまなちゃんが真剣にたこ焼きと向き合っているときに俺と柘榴ちゃんは綿あめづくりに悪戦苦闘していた。
作るだけなら簡単に出来るのだけど、ふわふわでボリュームのある綿あめを作ることは俺たちには難易度が高すぎたようだ。
「思っていたよりも難しいものなのですね。私はもっと簡単にフワフワの綿あめが作れるのかと思ってましたわ」
「俺ももっと簡単に作れるのかと思ってたよ。イザーちゃんも愛華ちゃんも夢中になって作ってくれてるから手伝ってって言えないし、俺と柘榴ちゃんで頑張るしかないね」
「そうですね。私とお兄ちゃんで頑張るしかありませんわね」
簡単そうに見えることでも難しいことなんて世の中にはたくさんある。勉強だってゲームだって見てるだけなら簡単そうなのに、自分がやってみると難しいんだって気付くことも多い。綿あめづくりに限らずお菓子作りは全般的に俺には難しいのかもしれないな。
「綿あめの作り方を調べてみたのですが、この人は私たちの十倍くらいコレをいれてますよ。今までの量だと少なすぎるから失敗したのかもしれませんわね」
「その可能性もあるって事か。よし、柘榴ちゃんの好きなだけ入れてみてよ。俺は柘榴ちゃんを信じて見守るよ」
「見守るだけじゃなくてお手伝いもしてくださいね」
量をケチったことで失敗してしまって余計に消費してしまうことはよくあることかもしれない。最初から多めにして失敗するよりも少なめにした方が失敗するリスクが低いことが多いとは思うけど、今回は量を少なくし過ぎて失敗してしまったようだ。
柘榴ちゃんが袋の中に残っていた白ザラメを全部機会に投入すると、あっという間にふわふわの綿あめが機械の中で舞い踊っていた。
あまりの量に驚いてしまってうまく箸に巻き付けることが出来なかったけれど、さっきまでのとは違ってふわふわで大きい綿あめを作ることが出来たのだ。
俺たちは不格好だけど大きくてふわふわした綿あめを作ってソレを両手に持ってイザーちゃんと愛華ちゃんが作っている屋台に向かったのだ。
イザーちゃんはアメリカンドックを揚げ終えていたのだ。その隣の屋台で同時に焼いていたフランクフルトも良い感じに出来ており、あれだけ悩んでいたのに両方作ってしまったという結果になったのだ。
「結構大きく作れたんだね。お兄さんだけだったらそこまでの大きさにならなかったんじゃないかな。柘榴がいて良かったね」
俺一人でも調べれば作れたとは思うけど、そんな事をいちいち訂正する気にはならなかった。
大きい綿あめを作れたという事を柘榴ちゃんが満足しているみたいだし、その気持ちに水を差す必要なんてないと思っていた。
「私一人でも失敗していたと思いますよ。お兄ちゃんが見守っていてくれたというのも大きいんじゃないですかね。イザーさんもお一ついかがですか。ふわふわで美味しいですよ」
「ありがとう。フランクフルトも焼きあがったんでどうぞ。アメリカンドックはもう少し待ってね」
いつも食べてるソーセージよりも安っぽい感じのフランクフルトではあったが、このチープな感じはありだと思う。高いソーセージももちろん美味しいのだけど、こういった感じの素朴な味わいもまた格別なのだ。
「あら、あまりスパイスやハーブの感じはしないですけど、これはこれで美味しいですね。家で食べるソーセージとは違った感じで美味しいですわ」
「でしょ。こういった安っぽいのも美味しいんだよ。私が焼いたってのもあるけど、こういった屋台で作ったってのも美味しさの秘訣かな」
「イザーさんが作ったから美味しいって言うのはあるかもしれませんね。お母様が作ったとしたら、余計な味付けをしてこの素朴な感じが無くなってしまうかもしれませんわ」
たこ焼きに綿あめにフランクフルトを食べた俺のお腹は良い感じに満たされてきていた。
もう少し何か食べても良いかなとは思うのだけど、瑠璃とうまなちゃんが作っているたこ焼きの他にイザーちゃんの作ってくれたアメリカンドックと愛華ちゃんの作っている焼きそばもあるのだ。
こんなに食べられるかなと思いながら三人の様子を見ていると、顔を上げた愛華ちゃんが笑顔を浮かべてパックに入った焼きそばを差し出してきた。
「美味しく出来たと思うから食べてみて。飲み物はラムネでいいよね」
パックに入った焼きそばの見た目はどこにでもありそうな感じだった。
隅の方にある紅ショウガも真っ赤で目を引く色ではあるが、そこまで主張はしていないという絶妙な量であった。
「美味しそうな焼きそばだね。あれだけ自信満々だった理由もわかるよ。じゃあ、焼きそばを食べてからアメリカンドックを持ってくるね」
「本当に美味しそうですわね。焼きそばってあんまり頂いたことがないんですけど、愛華さんの作った焼きそばはとても美味しそうですわ」
「でしょ。家でも良く作ってたから自信あるのよ。半分くらい食べたらこのスパイスをお好みでかけてみてね。屋台風じゃなくなるけど、せっかくなら我が家の美味しい焼きそばも食べてもらいたいからね」
色々なスパイスやハーブが入っていると思われる瓶をテーブルの中央に置いた愛華ちゃんはみんなの事を見守りながら、ラムネのビー玉を落としていた。
愛華ちゃんがビー玉を落とした時にはそこまで泡も出なかったのに、俺が同じようにやったときは物凄い量の泡があふれてきてテーブルがビショビショになってしまった。
俺以外の三人は上手に開けることが出来ていたのに、俺だけ上手くいかず笑われてしまった。
これもお祭りの思い出になるかなと思うと、失敗も良いものだと感じていた。




