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(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生  作者: 釧路太郎
悪魔狩り

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悪魔狩り 第一話

 その人の中では重大な問題だったとしても、他人から見た場合は些細な悩みにしか思えないことはよくあることだと思う。

 人間普通に生きていれば悩みの一つや二つ。もしかしたら、年齢の数だけ悩みを抱えているなんて事があるかもしれない。

 俺にだって、人には言えないような悩みも一つくらいあったりするのだ。


 うまなちゃんが困ったときにいつでも相談に乗れるようにお悩み相談室を開設する事になったのだが、幸か不幸かうまなちゃんはこれと言って悩みが無く、どちらかと言えば相談される側名なのだ。

 悩みが無いという事が悩みになっているという何とも羨ましい状態なのだが、そんなうまなちゃんも誰にも言えない。言ってはいけないような悩みがあるのかもしれない。

 そんな事をぼんやりと考えていると、お悩み相談室の噂を聞きつけた生徒が誰にも気付かれないようにやってきた。



 年頃の男女の悩みのほとんどが恋愛相談だったりするのだけれど、悲しいことに恋愛経験の全くない俺は漫画やアニメやゲームで積み重ねてきた経験を活かして悩める少年少女の未来を明るく照らしていた。

 中には俺の助言が上手くいって恋愛が成就するという奇跡も起きたりするのだが、大半は想いが届かぬまま散っていくのであった。


 それでも、失敗した経験を糧に次の道へと進んでいく姿を見ていると、ココの生徒さんたちはみな前向きで向上心が高いと言えるのかもしれない。

 そんな彼らに自分の青春を代行してもらっている。そんな風に考えると、俺も高校生活を楽しめているような気になっていた。


「高校生くらいになると頭の中が恋愛でいっぱいになっちゃうんだね。お姉ちゃんも高校生の時はそうだったのかな?」

「俺は瑠璃のそういった話は聞いたことが無かったな。妹ってのは兄に恋愛相談とかしないだろうし、好きな人がいたとしても俺に言ったりなんてしないんじゃないかな」

「お兄さんに言わないだけで、お姉ちゃんは誰かと付き合ってたりしたのかもしれないよ。ほら、お姉ちゃんは見た目も性格も可愛らしいからクラスメイトだけじゃなくて同じ学年の人にも好かれそうだし」


 瑠璃がモテているという話を直接聞いたことはないけれど、イザーちゃんの言う通りで瑠璃は学校でモテていたとは思う。

 学校から帰ってくる瑠璃の姿をカーテンの隙間から見ていたことが何度かあったのだが、一人で帰ってくるという事は無かったと記憶している。

 女子だけで帰ってくることももちろんあったのだけれど、かなりの割合でその集団に男子が混ざっていたような気もしていた。


「あれ、何かイヤなコトでも思い出したのかな。お兄さんがちょっとつらそうに見えるよ」

「別につらくはないよ。ちょっと思い出した事があっただけだから」

「それって、お姉ちゃんの彼氏の話とか?」

「そんなんじゃない」


「え、そんなに大きな声出さなくてもいいよ」

「ごめん。そういうつもりじゃないんだけど。でも、瑠璃に彼氏はいたことないと思うよ。だって、学校がある時も授業が終わったらまっすぐ帰ってきてたし、休みの日も家族以外で出かけてたことはないからね。家にいる時も俺の部屋にきてたし」

「あ、うん。そうなんだ。そう言えば、そんな話をお姉ちゃんから聞いたことがあったような気がしてきたよ。なんか、ごめんね」


 別にイザーちゃんが悪いことを言ったというわけではないけれど、こんな風に謝られると俺が悪いみたいに感じてしまう。

 いや、柄にもなく大きな声を出してしまった俺は悪いのかもしれないな。


 でも、瑠璃に彼氏がいたとは思えないんだよな。

 学校にいる時間だけの彼氏がいたという可能性もあるにはあるけど、そんなのが本当に彼氏と言っていいのだろうか。いや、そんなのは彼氏とは言えないだろう。

 つまり、瑠璃には彼氏なんていなかったという話だ。


「でも、お兄さんだけじゃなくてお姉ちゃんも高校生の時に青春らしい青春を謳歌していなかったって事なんだね。いまさらそんな事を気にしてもしょうがないと思うけど、何かいいことがあったらいいね」


 そうか、そう考えてみると青春を楽しめなかったのは俺だけじゃなかったという事になるのか。

 俺が引きこもっていたことが原因で瑠璃も青春を十分に味わうことが出来なかったという事なんだよな。

 今の俺なら、俺になんて構わずに瑠璃は瑠璃のやりたいようにやってくれていいと言ってしまうのだろうが、あの時の俺は瑠璃が俺の事をたくさん気にかけてくれたことに救われていたように思える。

 何だか、とても申し訳ないことをしていたという事に気が付いてしまった。


「そんなに落ち込まなくても大丈夫だって。お姉ちゃんはお兄さんとの時間を過ごしたことでここの先生になれたんだからね。怪我の功名ってやつだよ」

「その言い方だと、俺が怪我みたいに思えるんだけど。それよりも、俺との時間が先生になれたのとどういう繋がりがあるのさ?」


「理事長面接の時に午彪の隣に私もいたんだけど、お姉ちゃんはお兄さんに勉強を教えたり色々とお世話をしたことで教師を目指したって言ってたんだよ。お兄さんには言えないような話も色々とあったんだけど、それが巡り巡ってうまなちゃんに伝わってお兄さんに興味を持ったって事だからね。言っておくけど、うまなちゃんがお兄さんに興味を持ったのって、お姉ちゃんの採用が決まった後だからね。お兄さんがお姉ちゃんの合否に影響を与えたってのは全くないから安心してね」

「俺みたいな兄がいることでマイナスにならなかったんだったらよかったよ。これ以上瑠璃の足を引っ張るようなことはしたくないからな」


 瑠璃は俺に気を使ってなのか就職の話は全くしてくれなかった。

 俺が聞いたところでアドバイスなんて出来なるわけもないので仕方ないとは思うけど、なんでこの学校を選んだのかという事は気になるな。

 聞いたところで教えてはもらえないだろうけど、瑠璃がココを選んでくれて良かったと思っているのは事実なのだ。

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