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「あ! あそこにあるのは?! ニューライズ産限定100年ものの特級ワインだ!! しかもなんと100リンだって!?」
「な、なんだと?!」
スザンヌの表情がスッと変わった。
どんな小さなものでも、射ぬいてしまうかのような。そんな目で、俺の指差した方向を向いた。
俺はその隙に……。
逃げた!!
人々の合間を縫うように猛ダッシュ!!
「団長!」
「ランダルが逃げます!」
「おのれー! 何故! 団長が毎夜、うわごとのように「死ぬときは100年ものの特級ワインと一緒だー! 必ず手に入れてみせるぞー!!」という。寝言を知っているのだ!」
騎馬隊たちがやっきになって、俺を追いかけてきた。
だが、俺はそれでも一目散に金にならない仕事から、逃げて行くぜ!!
西だ!!
西へー! 西へー!
こうなりゃ、走り通してやる!
その時、ヒュンと俺の頬を矢がかすった。
「い、痛い!」
「ランダル! よくもこの私を騙したなーー! 100万リンもする100年ものの特級ワインお前が買ってしまえーー!!」
「危っぶねーーー!! 買えるかバカー!」
スザンヌが怒り心頭で、弓を射ってくる。
俺はヒリヒリする頬をこすりながら逃げていると、スザンヌという人物のもう一つの特徴を思い出した。
騎馬隊なので、当然。弓の名手だ。
それも団長だから、女の中で一番強い。どころか、その腕は王国一なんだ。