排水装置
大和が"不沈艦"と呼ばれる様になったのは、大和がある特殊な能力を保持している為であった。その秘密こそが、大和の排水装置にある。
艦が魚雷や砲弾で片舷が破壊されて浸水した時、反対舷に注水し、艦の傾斜を急速に復元させると言う仕組みがあるからこそ大和は不沈艦でいられるのであった。
元来、艦船には何かのトラブルで艦内が浸水しても、排水装置が作動して多少の水ならば、航行には何ら支障は無い。だが、魚雷や爆撃により被弾浸水した時は諦めるしか無いとされてきた。しかし、大和はその概念を打ち破ったのである。この強力な排水装置のおかげで大和は不沈戦艦として周知されていった。
沖縄特攻に出撃するまでは、大和はほとんど被弾していない。と言うのも、大和は連合艦隊の旗艦として前線には出されなかった。柱島やトラック島と言う泊地にずっといた為である。大和は戦艦としての本分よりも"大和ホテル"として将兵のホテルと化してしまう。
どんなに優秀な能力があったとしても、その能力が活かされないのは、愚かしい事である。大和はその生涯に渡って、ほとんど戦果を挙げられなかった。少数精鋭のホープで、太平洋の王者とまで期待された大和であったが、大和が王者になる事は遂に無かなかった。優れた能力を保有しながら、機能的に使われ無かなかったのは、大本営のせいだけではない。現場の将兵達も実は大和の事をあまり知っていなかったのである。