浸水
爆撃の激しさから、いよいよ大和艦内にも海水が浸水して来た。優秀なバランスシステムを持っている大和も、これだけの集中爆撃の前では最早意味を為さなかった。沈没は時間の問題であった。
海水の流入速度と量は、時間に比例してどんどん増加して行った。艦内に留まっていた人間の多くはほとんどが戦死しており、艦と運命を共にすると残った伊藤整一中将等の安否も分からなくなった。
最終的に彼等は戦死扱いに成るのだが、普通特攻で戦死した者は2階級特進となるものなのだが、伊藤整一中将が作戦中止を決定していた為、大本営は特攻が未遂に終わったと判断。この坊の岬沖海戦において、死亡した多くの兵士は通常の戦死扱いとなり、それぞれ一階級昇進に留まった。
当然海水が浸水してくれば、艦のバランス感覚はおかしくなる。どちらか一方に比重がかたより、それにより船体は傾く。すると今度は傾いた傾いた方向に水圧や比重が集中して、後は艦の重みを水量が上まれば沈没する。日本海軍の中でも一番巨大な戦艦大和を、サルベージする能力は当時の技術にはないものであり、救出は困難であった。いかに大和が沈む前に脱出するかと言う事が生きるか死ぬかのデッドラインとなってくる。
潜水艦等では少し位の浸水ならば、対応出来るのかもしれない。巨大戦艦大和もそれは同様である。しかしながら、大和は火災も同時に発生していて、火と海水と言う相反するものとの戦わなくてはならなかった。流石に米軍も大和が戦闘不能となるのを確認するや否や、攻撃の手を緩めたのである。




