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大和物語~ザ・ビゲスト・バトルシップ~  作者: 佐久間五十六


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総員最上甲板

 沈み行く大和にあって、生き残った乗組員達には、「総員最上甲板」の命令が出された。沖山和人達の様に、その命令が出される前に脱出した乗組員もいるが、本来ならばこの命令を待ってカッターに乗るのが、軍人の定めなのであるが、この様な非常時はそうも言っていられなく仕方がない。

 非常時はことに指揮命令系統が狂いやすい。「総員最上甲板」と言う命令は、分かりやすくすればこうなる。

 「非常事態であるから、とりあえず全員最も上にある甲板に集合せよ」と言う事になる。非常集合の為の訓練は平時から行われていて、とにかくその命令が出されたら、何をしていても、一目散に甲板に集まらなくてはならないのである。

 艦が沈むか否かと言う瀬戸際になったとしても、とりあえず現状確認は必要である。誰かれ構わず逃げれば良いと言う訳ではなく、階級社会の海軍にあっては、優先順位と言うものがあった。無論、艦長は艦と運命を共にすると言う日本海軍の意味不明な伝統がある為、沈むまで艦長は残った。

 とは言え、艦船に事故があった場合は別である。いつ燃料タンクに引火してもおかしくはない。とりあえず、階級の一番高い艦長から、カッターに乗せて、逃げられる人間から逃げさせた。生きるか死ぬかの、瀬戸際になっては、米国がどうのと言う事はもう関係がない。

 日本人としての誇りも覚悟も、何処かへ消え去ってしまうのである。甲板に実際に集まれた人間は小数であったし、とにかく大和の指揮命令系統は滅茶苦茶になっていた。誰を責める事も出来ない状態であった。

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