滞空援護無し
戦艦大和が沖縄に水上特攻を仕掛けたのは、あまりにも有名だが、その中で最も悲劇的だったのは、兵士が多く死傷した事ではない。普通、艦隊が決戦に挑む時は航空機による援護が必ずついてくる。ましてや、航空機全盛の時代になりつつあった当時なら尚更の事である。
ところが、大和水上特攻に際しては、航空機による滞空援護は無かった。陸軍に例えるならば、戦車を歩兵や野砲の援護無しに突っ込ませるのと同じである。
敵の艦隊の攻撃には、恐らく大和なら耐えられるかもしれないが、多数の艦爆や艦攻の攻撃には耐えられない。大和の唯一の弱点である、高所からの攻撃と潜水艦による魚雷であると、よく言われるが、潜水艦も航空機もないと言うのは、犬死とも言える、蛮行である。
日本軍の言い訳としては、「鉄も石油も無かったし、戦争の長期化するにつれて、多くの戦闘機を失った。」と、弁明するかも知れないが、それは理由にならない。航空機がないのなら、大和を水上特攻させようとする結論にはなりうえない。
日本海軍の大将艦とも言える大和の首をわざわざあげに行く様なものである。滞空援護があれば、いやあったとしても、大量の米艦隊を潰す事は不可能に近い。プライドがあるのは分かるが、そんなもので国は守れない。
米国に勝てる戦が、当時の日本軍に展開出来たとも思えないし、勝てないのならせめて良質な"敗北の作法"と言うものを追求すべきであったであろう。滞空援護無しで大和を失ったと言う事は、日本史上最大級の"汚点"であっただろう。




