スカッパーの罪
スカッパーとは、残飯を捨てる為の舷側に設けられたゴミ捨て口の事である。大和の飯は日本一とも言われた様に、当然スカッパーにも高級食材がありふれていた。食糧難の時代にあって、下級兵士にとっては正に宝の山であった。
スカッパーの罪と言うのは、そんな下級兵士達の本能を刺激してしまう所にあったのかもしれない。捨てられた物は、基本的に廃棄するだけなので、下級兵士達は少しでも食べられそうなものであれば、捨てられた物でも手をつけた。
厳しい戦争の中にあって、楽しみと言えば食べる事位である。それでも若い兵士達の食欲を満たす事は、大変重要な課題であったと言える。当然スカッパーに捨てられた物を食べる事は、衛生的によろしくない事であり、腹をこわす者もいた事であろう。そんなリスクを犯してまでも上級士官の食べ残した高級食材は、下級兵士にとっては紛れもない御馳走であった。
いちいちそれを上官であるベテラン下士官も見ていない為、やりたい放題と言ってもおかしくはないと言えるのかもしれない。大和には2500人以上の兵士達がいた為に、彼等全員が上級士官クラスの飯を提供されていた訳ではない。日頃から粗食であった下級兵士にとって大和ホテルのスカッパーは本当に宝の山であった。
例えそれが他人の残した残飯であったとしてもである。そもそも、ご飯を残すと言う事が、当時の日本人の平均的から言えばかなりズレていた事はよく分かる。海軍だけが戦争をしていた訳では決して無いのだから。




