家族の為
兵隊が戦う理由は、人それぞれであるのかもしれないが、最も大切なものは国の為と言う事であろう。無論、それは大義名分でしかない。御国の為と言う事はつまり、彼等にとっての家族や故郷の為に戦うという事と同意である。
誰かの為に戦わなければならない。さもなくばおおよそこれほどの大戦を乗り越える事など出来ないだろう。人の為に死ぬと言う事は口で言える程、容易い事ではない。
無論、それが愛する家族の為であろうとも、である。人が死を覚悟してまで何かを成し遂げると言う事は、そんなに溢れていて幸せなものではない。利害ばかりを考えて生きている人間には、その様な行為は成し遂げられない。
戦争に勝つと言う事は、つまり生きて帰って来る事である。日本と言う国家が敗北したとしても、自分が生きて帰って来る事が出来たなら、一人の人間としては、勝利したと言える。胸ポケットに白黒の家族写真をしのばせ、手紙をしのばせておくのは、一人の人間として生きて帰って来たいと言う何よりの証である。
一人一人の兵士が、生きて帰って来る事が出来たなら、大日本帝国は消滅しても、それは敗北では無い。戦後の日本は、米国の統治下からスタートしたが、恐らくそこに貢献したのは、戦争を体験し生きて帰って来た、人生の勝利者であった人達がいたからである。300万人もの命の犠牲の上に生きながらも、米国に牛耳られながらも、決して彼等は下を向かなかった。その根本にあったのは、家族の為と言う根本的な心があったからである。




