カッター脱出訓練
カッター脱出訓練は、船乗りにとっては必須事項である。カッターとは、木製の手こぎボートの事で"短艇"と呼ばれる物である。現代の海上自衛隊でもカッター脱出訓練は行われており、アナログな方法だが、受け継がれている。カッターは動力が人力である為に、艦艇のどの機械が壊れていても、使える物であり重宝されている。
カッター脱出訓練は、シンプルそのものである。ただひたすらカッターを漕ぎ、迅速にカッターで脱出訓練を行う。ただ、それだけの事である。諸外国海軍の間でも、カッターはスタンダードであり、動力が人力であるカッター以上の最重要脱出方法はない。
陸軍や空軍戦闘機のパイロットと違い、陸地も無ければ、パラシュートもない。海軍兵士が戦闘で艦船を失えば、カッター以外に脱出方法は無い。カッターに乗りそびれれば、水中にドボンとダイブするしかない。水中に長時間いれば、低体温症で死亡する確立が高くなる。
救助の船が来るまでを水中で待つか、カッターで待つかは生死を分けるデッドラインになる。日本が海軍的組織を持つようになってから、数々の戦いを経験したが、一体どれ程の命がカッターにより救われた事だろうか。
とにかく、カッターは正に船乗りにとっての、ライフジャケットにも等しい物である。勿論、昭和の戦中にはライフジャケットは無かったが。海水に真っ裸で飛び込むのは自殺行為である。カッターには収容出来ない大人数がいた大和ではあったが、それでもこのカッター脱出訓練をしておく事で、いざと言う時の為に重要な役割を果たす事になる。




