4.2つ名はパンティ一郎
カレーライスの効果は絶大だった。
目と鼻と舌に強力に訴えるカレーパワーにより、ほとんどの生徒の魅了の効果が消滅。人肉食まで考えていた状況を正しく認識し、その状況を華麗に救った俺を"カレーの神様"と称え、一躍英雄へと躍り出たのだ!
さらにスキル上げで創り出した鉄っぽい剣と、服作成スキル取得時についてきた冒険者の服を全員に提供。ついでに飲み水と明日の朝食用におにぎりセットもつけちゃう!ますます高まる俺人気!俺なしではみんな生きていけない!ステキ!
そんなこんなで1日目は終了。
そして俺は捕獲された。
俺は今、カレーパワーで魅了が解けなかった者たちの手によって、2階層の大空間へと隔離されている。どうやら各階層に同じような安全地帯が用意されているらしく、ここにも水場と5個の簡易トイレが存在する。
山田先生の手先に言われるがまま、俺は料理を作ってはイベントリに放り込む作業を続けている。イベントリに入れておけば劣化しないっぽいので、作れるだけ作れとのお達しである。
暫くすると山田先生と残りの生徒全員が移動してきた。鉄っぽい剣があればスライムは超雑魚らしくみんな傷1つない。しかし、当然のことながら、全員魅了状態が復活している。俺の天下は僅か数時間で終了してしまったようだ。
そして俺の特別待遇が決定された。唯一の生産職として最優先保護対象。危険を避けるために戦闘禁止は当然、安全地帯からの外出すら禁止。階層間移動時には他の生徒が全力で敵を掃討、安全を確保する。万が一にも敵が侵入して来ないよう、出入り口には常時5人以上の見張りを設置。その特別待遇の対価として、俺は衣食を全員に提供する。
やったね!実質軟禁状態で強制労働が決定したよ!敵も倒せないから逆転のチャンスも無いよ!
・・・・・
俺は今、女子による拷問を受けている。
「これ以上は無理です、勘弁してください。」
「いいや、駄目だね。貴様にはそれを作製する義務がある。」
拳王(♀)による無慈悲な返事により、俺はブラジャーの試作を開始する。そう、軟禁決定後に最初に与えられた仕事が、女子の下着作成だったのだ。
持ち物無しかつ麻の貫頭衣で放り出された俺達だったが、神の慈悲なのか下着だけは残っていた。男共には俺のトランクスをベースにS、M、L、LL、デブ、を作成し配布済み。女子の下着は華麗にスルーする予定だったが、トランクスを配ったのがバレて作成を強要されることに。
だが待ってほしい。俺の年齢で女物の下着に詳しいやつなどいるのだろうか?いや、ほぼいないと断言して良いだろう。いたとしたらそいつは間違いなく変態、将来下着メーカーに就職するか、警察の厄介になるレベルの逸材のはずだ。
とりあえず、何が言いたいかと言うと、パンティ制作に成功した俺の2つ名が"パンティ一郎"に決定した。サンプルの提供を受け、他の男子にパンティを見られないように、女子による2重の人の壁を作られ、よくわからない素材でできたパンティを、目視と手の感触を元に、試作と女子による試着を繰り返すこと2時間、「さっさと作れ変態」「パンティ触りたいだけだろ」「試着したパンティさわるとかキモすぎる」などと言われながら、誠心誠意真心を込めた結果がパンティ一郎である。ちなみにサイズは男子同様S、M、L、LL、デブが必要だった。
この時点で俺のライフはもうゼロよ状態。だが、女子はさらなる拷問を俺に課してきたのだ。ブラジャーの作成である。
ブラジャー作成は難航した。精々A〜Fカップの6種類作れば良いだろう位の考えだったが甘かった。パンティの様に伸縮自在の素材では無いので、本体を支える紐の部分からして、長さの種類を用意しなければならない。さらには虚乳の為の特殊構造。同じカップなのに微妙に異なるサイズ。結果、3日かけて180パターンのブラジャーを作成する羽目になった。さらに3日かけて300セットずつ下着を全員に配布、そして報酬としてあだ名にブラジャー乳郎が追加された!だがこれで下着作成から開放される!
ブラジャー怖い!
こうしてダンジョン転移から一週間が経過、ついに山田先生から号令が下された。
「準備が完了したので、明日から本格的にダンジョン攻略を開始します。」