3.生存率1%以下の理由
Y3の自分も含めて時間停止するスキル披露から3時間、俺は余りにも非情な現実に絶望していた。理由その1、鑑定結果に追加されていた、レベルを比較してみた結果がこれである。
NAME:山田 花子
AGE:10
HP:285/301
MP:10/10
Lv:10
→経験値:2
USKILL
・魅了 熟練度:8%
CSKILL
・毒耐性 熟練度:1%
NAME:田中 一郎
AGE:15
HP:30/30
MP:10925/10930
Lv:0
→経験値:0
USKILL
・料理作成 熟練度:100%
・鑑定眼 熟練度:101%
・衣類作成 熟練度:100%
・武具作成 熟練度:100%
・ポーション作成 熟練度:0%
CSKILL
・MP回復 熟練度:100%
・瞑想 熟練度:100%
・魅了耐性 熟練度:6%
・ハイド 熟練度:5%
・盗聴 熟練度:4%
・ステルス 熟練度:3%
うわっ、私のレベル低すぎ・・・?
まぁ、他の奴らもレベル0か1なので、山田先生が如何に隔絶した存在であったのかが、数値でも証明された。最早、人間なのかも怪しいレベル。
俺に新たに生えてきたスキル、ハイドは気配を消すスキル、盗聴はそのまま盗み聞き、ステルスは気配を消したまま動ける。気付かれないように他の奴らの話を聞いてたら生えてきやがった。
そして理由その2、武器防具どころか食料すらない。水だけは壁際に一箇所水場が用意されている。あとは工事現場にあるような簡易トイレが5個。
ダンジョン内に何かないかと、山田先生が単独でダンジョンに突入し、スライム喰いながら帰ってきた。毒耐性が生えてきた理由はスライムを喰ったからっぽい。
山田先生曰く
「この階にはスライムしかいませんでしたが、いきなり襲って来る上にかなり数が多かったので、私以外は突破できそうにありません。殴ってもダメージが入らないので、倒すのも難しそうです。あと、スライムを常人が食べたら死にそうですね。」
常人では無い自覚があったようで一安心。
とりあえず山田先生は別枠として問題を整理してみよう。
・食料が無い
・この階にはスライムしかいない
・スライムは打撃では倒せない
・武器が無いから徒手空拳で戦うしかない
・スライムを食ったら死ぬ
・トイレ渋滞
さすが生存率1%、いきなり詰んでる。今回も山田先生以外の生存は絶望的だぜ!なんて甘い考えで絶望している訳じゃない。
問題はその先、山田先生発案で既に一部の生徒に広まりつつある案、"人肉は食料"、"人骨は武器"、"神様の為に"、"生贄"、"300人もいる"、"使えないやつから屠殺"。
こんな案を受け入れさせる魅了先生が仕事しすぎ!
俺以外全員山田先生に魅了されているので、単独で最下層を目指そうかと考えていたが、こうなっては予定変更するしかない。タイミングをみてスキルで武具と食料が作れることを公開しなければ。
--3時間後
山田先生がついにいつもの岩の上に登場する。
「皆さんに伝えなければならないことがあります。既に知っている生徒も多いと思いますが、我々には武器防具はおろか食料すら無いことがわかりました。このままでは遠からず全員が餓死してしまうでしょう。しかし、これは素晴らしい神様の与えられた試練です。克服できない訳がありません!少しでも多くの人数が最下層へ到達できるよう、皆で知恵を出し合いましょう!」
生徒間では魅了と空腹に加えて事前に流布した生贄案により、違和感なく誰を屠殺するかと言う話になっていく。ここに転移してから僅か数時間でこの洗脳力!これが神の意志なら完全に邪神だろ!
俺の行動は神の思惑通りか否かはわからない。しかし、タイミングは今しかない。
「山田先生、俺のスキルで武具と食料を作れます!」
そして俺は山田先生の前へと進み出て、高々と掲げた右手にカレーライスを出現させた。