16.浪漫コンクリート
「ところで、イチロウさん。そのネクターは今作製されたものですよね?」
ヤバイ質問キター!とりあえずここはスットボケてごまかすしかない。少なくともエリクサーが希少品とわかった以上、俺のポーション作製能力をバラす訳にはいかんのだ。
「いえ、これも持参した秘蔵のポーションです。一本しか無いので使うつもりは無かったのですが、ヘルメス様の涙を見て思わず出してしまいました。」
「イチロウさん、嘘をついていますね?既に言ったと思いますが、私には嘘を見抜く能力があります。もう一度聞きます、そのネクターは今作製されたものですよね?」
クッ、これは認めるしかない。だが、認めるのはHP回復ポーションだけだ!
「はい、公にすると大変なことになるので隠したかったのですが、私はHP回復ポーションを作製する能力を持っています。このネクターはその能力で作りました。ただ、ネクターともなると代償が大きいので、しばらくは作成することができません。」
嘘じゃない範囲で答えたぞ。さぁ、ヘルメスお嬢様はどうくる?
「嘘は無いようですね。では、他に何か作れるものはありますか?」
他に何か…か。
絶対に知られてはいけない能力は、山田先生に知られている能力。万が一能力から俺の居場所が知られれば、襲撃されてもおかしくない。
衣類は作る種類を選べばまだいいとして、目立つ料理と武具の作成能力は秘匿しなければならない。
能力の露呈を最小限に抑えるためには、一発でヘルメスお嬢様の気を引く物を提示するのが一番だろう。そして、その為の切り札を俺は2つ持っているのだ。
1つは拷問のようなブラジャー作成地獄で得た叡智。どんな胸でも寄せて上げることで2ランク上のサイズへと誘う超ブラ作成技術。
もう1つは街を歩いていた時に拾った街を囲む塀の破片、これこそこの場を切り抜ける為の切り札!
浪漫コンクリートの破片
→浪漫コンクリートで作られた構造物の破片
水と魔力を込めて作られたそれなりに強固なコンクリート。
耐用年数は約1000年。
これをもとに原材料作成スキルで作ったのがこれだ!
浪漫コンクリートの粉(超高品質)
→水と魔力を込めて混ぜると非常に強固なコンクリートになる。
耐用年数は約30000年。
粉1kgに対しMP1000で作れる非常にリーズナブルな建築素材。今の俺なら一度に最大15トン、MPの自然回復でも200分で1トン作成可能。もはや無限に作れると言っても過言ではあるまい。
「他に作れる物と言うと、今役立ちそうな物ならこれでしょうか。」
俺は浪漫コンクリートの粉が入った袋をヘルメスお嬢様に渡した。
「これは…?」
まぁ、見ただけじゃわかりませんよね。
「浪漫コンクリートの粉です。この街の復興には大量に必要だと思います。私はこれを必要なだけ、ヘルメス様が望まれるだけの量を提供できます。」
浪漫コンクリートがどの程度の価値かわからないのが不安だが、かなりの好条件のはずだ。安価に大量生産できる物なら、街を囲む塀はもっと強固なはずだからな。
「浪漫コンクリートを大量に…?」
「はい、それこそ街を囲む塀に使う量位なら数日で作成可能です。この浪漫コンクリートとHP回復ポーションがあれば、この街を放棄しなくてもよくなるのでは?」
「確かに、人手が回復して、防壁が修復できればこの街の維持は問題なくできますが…」
よし、主導権を握れたっぽいぞ。このまま一気にたたみかけるんだ!
「ヘルメス様。まずは提供できるだけのHP回復ポーションと浪漫コンクリートの粉を提供致します。それを専門の方に鑑定してもらえませんか?そして怪我人の数と必要なポーションの種類と量を調査していただけませんか?」
「わ、わかりました。確かに私が見てもこれが浪漫コンクリートの粉かわかりませんし、ポーションもどの程度の物なのかわかりません。イチロウさんには、とりあえず先程使ったエリクサーの作成をお願いします。浪漫コンクリートの作成は怪我人の治療後になると思います。」
よし、しのげた!
「わかりました。とりあえずこれが今提供できるHP回復ポーションです。」
俺が全てのHP回復ポーションを渡すと、ヘルメスお嬢様は急いで自室へと戻って行く。その後ろ姿を俺はガッツポーズをしながら見送る。
やったぜ、対ヘルメス用の最高の切り札、寄せて上げるブラは温存できた!