15.復活!お胸様!
「ところで、イチロウさん。その大量に置かれているポーションは、HP回復ポーションですよね?」
「勿論でございます、ヘルメス様。」
「では、タイミングよく首を怪我されているようなので、飲んでみていただけますか?」
そう言ってヘルメスお嬢様がテーブルの上のポーションを一つ渡してきた。毒味せよと。
「わかりました。」
ここに置いたのは全て最上級ポーション(高品質)、この程度の傷など一瞬で治る…はず。何気にHP回復ポーションを使うのは初めてなので、ドキドキの初体験。治らなかったらどうしよう。
「では、今から飲みますので、効果を確認してください。」
俺が渡されたポーションを飲み干すと、体が淡い光に包まれて、喉の傷がふさがっていく。結構大げさな光り方するから、これはかなり目立つな。
「秘蔵のポーションと言うのは本当のようですね。全身が光に包まるポーションなんて初めて見ました。これなら私の体も…」
「このポーションは一応エリクサーです。ヘルメス様の傷も癒せるはずです。」
だから見逃してください。
「ポーションに効果があることはわかりました。ですが、夜中に忍び込んだあなたの存在を、他の者に知られると説明が面倒です。場所を移しますのでポーションを回収して、目立たないようについてきてください。」
仕方なく俺はポーションを回収しハイドとステルスを発動。移動を始めたヘルメスお嬢様の後を追尾する。
途中、何度か俺を探す素振りをヘルメスお嬢様が見せるので、その度にステルスを解いてここにいますよアピール。至近距離でも一旦視界の外に出れば見失うらしい。
誘導されるまま一階の端っこの部屋へ入る。
「ここは私の部屋なので、姿を表しても大丈夫ですよ。」
ヘルメスお嬢様はそう言ってから壁に手を触れた。なにやらゴニョゴニョとつぶやくと、壁が消え地下へと続く階段が現れた。
私室に入れたり隠し通路見せたり、これって俺の事を逃がす気無いんじゃね。とか考えながら、地下へと降りていく。途中で壁はどうなったんだろうと気になり振り返ると、壁が復活していくのが見えた。どうやら自動で壁は閉じるようだ。
「上の壁は私にしか開けることが出来ないので、ここなら誰にも見つかりません。」
詰んだ。もはや逃げようがない。腕輪の効果も考えると、俺がこの先生きのこれる確率かなり低いんじゃなかろうか。なんとしてもヘルメスお嬢様に取り入らねば!
「では、さっそくポーションの効果を試させていただきますね。」
ヘルメスお嬢様は顔の半分を被っていた包帯をとり、焼けただれた傷跡があらわになる。頭皮はむき出しになり目は白く濁っている。
「醜いでしょう。今はこんな顔ですが、怪我をする前は辺境伯領一の美少女と言われてたんですよ。」
そう言って、先ほど確保しておいたのだろうポーションを飲んだヘルメスお嬢様の体が淡い光に包まれる。顔の怪我はまたたく間に完治し、自称美少女に恥じない顔立ちが現れる。
そして、全身の傷も癒やされ、服を着ていても存在しないのがわかるほど平らな胸に、膨らみが再生…されないだと!?
あ!ヘルメスお嬢様がお胸様を確認して泣いている!
やばい、まさか四肢全損を上回る傷だとは思わなかった。ネクターだ!MPが100万吹っ飛ぶがネクターを使うしかない!
「ヘ、ヘルメス様。たった今作ったこのネクターなら、今度こそ、そのえぐれた胸を再生出来るはずです!」
急いで作成したネクターをヘルメスお嬢様に差し出した時、予想外の事態が俺を襲った!
「だ」
「だ?」
「だれの胸がえぐれてるだ!!完治しとるわあぁぁぁ!!」
「ポメラッ!」
ネクターを渡そうとした俺の顔面に、ヘルメスお嬢様の拳が炸裂した!