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13.お嬢様に抱き着かれる事案発生

 辺境伯の四女であるヘルメスお嬢様の呼びかけで、広場には結構な人数が集まってきた。


「現状、指揮官である兄二人の意識が戻らないため、シューマッチョ辺境伯家の四女である私、ヘルメスが指揮を任されております。」


 辺境伯の息子二名の意識が戻らない宣言に、場がざわめく。


「ご存知のとおり、このフンデルの街はモンスターの襲撃を受け、壊滅的な被害を出しました。今の所は死者こそ出ていませんが、元々フンデルにいた200名と私達と共に来た100名の兵のうち、約8割が腕や足の欠損など兵として再起不能の怪我を負い、冒険者の方々も似たような状況だそうです。街の住人にも無傷な者はいないといっても過言ではありません。」


 冒険者キター


「また、兄達同様、致命傷を負った状態でかろうじて生きている者も少なくありません。残念ながら我々には、次に小規模なものでもモンスターの襲撃があれば、それを撃退する力は残っていません。そこで冒険者ギルドとも相談し、一旦この街を放棄する方向で話を進めています。」



 まだヘルメス様の話は続いているが、状況がわかったのでもう聞かないで良いだろう。それと、とりあえず、新情報の冒険者については後で考えよう。ギルドに行っても壊滅状態だろうし。


 それにしても予想以上の惨状に、原因を作った者として非常に心が痛い。


 でだ、もし俺にこの惨状を助けるすべがなければ、罪悪感を感じながらこの街を去れば良いだけだった。だがしかし、残念ながら俺にはチートなポーション作成スキルがある。その中でも最上級のHP回復ポーションの効能がこんな感じだ。



HP回復ポーション

ポーションの性能に応じてHPを回復し傷を癒やす。


最上級ポーション(低品質)

→別名エリクサー(低品質)

 HPを回復し、指一本程度の欠損まで再生する。

最上級ポーション

→別名エリクサー

 HPを回復し、腕一本程度の欠損まで再生する。

最上級ポーション(高品質)

→別名エリクサー(高品質)

 HPを回復し、四肢全損程度まで再生する。

最上級ポーション(超高品質)

→別名ネクター

 死んでなければHPと身体の欠損を完全回復する。



 作成に必要なMPは上から3万、5万、10万、100万。俺の最大MPは約150万。時間はかかるが怪我人を癒やすことは可能なのだ。


 なら、とっとと治せよパンティ一郎と思ったそこのあなた、ちょっと待ってほしい。


 この国有数の権力者であろう辺境伯家のヘルメス様が、四肢の一部が欠損している者が多すぎ、戦力の回復が不可能と判断し街を破棄すると言っている。


 つまりだ、腕が生えてくる様なポーションは希少品、または存在しない可能性もあるということだ。


 そんな中、ノコノコとポーション量産できますと出ていったらどうなるか?


 答えは簡単、チュートリアルダンジョンでのカレーの神様の時と同じように、軟禁状態で強制労働となるだろう。


 もし強制労働を逃れたとしても、噂が広がり権力者の争いに巻き込まれたり、山田先生の強襲を受けてしまうかもしれない。自分の相対的な強さがわからない現状において、目立つことはできる限り避けるべきなのだ!



 そんな訳で俺は今、思いついたことを実行する為の前段階として、ハイドとステルスがどの程度通用するか実験している。うまくいけば、俺が目立つのを避けながら街を救うため、夜中にコッソリ辺境伯邸に忍び込み、最上級ポーション(高品質)をあるだけ置いてくることができる。


 …そして実験結果は概ね良好、直接触れたり大きな音を出すなりしない限り、俺の事は見えてないがごとく無視された。


 それから夜までに最上級ポーション(高品質)を量産、元々持っていた分と合わせて200本の用意した。


  

 そして深夜、辺境伯邸に忍び込めた俺は、調理場のテーブルの上にポーションを並べている。誰かに気付かれたらまずいので、音を立てないように、落とさないように、静かにゆっくりと、かつできる限り手早く。


 テーブルの上に置くスペースが無くなったので、一段低くなった何かを置くスペースにポーションを置いていく。中腰は辛いので片膝をついた状態で並べている時、それは起こった。


 いきなり背後から抱きつかれ、包帯が巻かれた右腕と、ナイフを持った白魚のような左腕が俺をホールド。左手に持ったナイフが俺の喉元に当てられる。


「突然背後から抱き着いたりしてゴメンなさい、怪我のせいで立っているのも辛くて。」



 背後から聞こえてきたのは、昼間広場で聞いたヘルメスお嬢様の声だった。


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