11.魔王降臨(2人目)
「フハハハハ!次期大魔王候補の実力はこんなものか!」
「女だと思ってなめるな!『炎よ!!』」
「二人ともやめてええぇぇぇぇ!!」
現在俺は、突如始まった戦闘の余波から、回復量10万の最上級MP回復ポーション(高品質)を飲みながら逃げ回っている。
この世界に来て5日目、昨日まではポーションを作るなど移動の準備をしていた。心配していた魔物の襲撃もなく、ここらはとても安全な場所のようだ。
今日は魔法を習おうと思って、"召喚可能な範囲で一番魔法が得意な人型の魔物"を指定したら、前とは別の魔王(女)が出てきた。どうやら魔王は複数存在するらしい。
許可もらって鑑定したら、名前が"美しい魔王"で年齢が"永遠の16歳"だった。魔族の感覚ではこれが普通だったのか…。
そんな訳で魔法を教わろうと思ったのだが、よくある話で説明があまりにも適当で理解できない。ブワーとかギューンとかシュバババとか言われても再現なんてできない。なんでも魔族は基本的に自然と魔法が使えるようになるので、初歩から教える事は無いそうである。
1本作るのにMPを10万消費する、最上級MP回復ポーション(高品質)を多数用意して挑んだのだが、仕方なくお帰りいただこうと思ったら事態は急変。
突如、俺の召喚陣が自動で発動し、頭から2本の角と背中から羽が生えた2メートル近い身長の、マスクで顔を隠したオッサン魔王が出現、襲ってきたのだ!
2人の魔王からMPを吸われ、ものすごい勢いで減っていく俺のMP。まさに人外同士の激しい戦い。もう止めて!俺のMPは枯渇寸前よ!俺の送還指令をはじかないで!!
ポーションを消費しながら必死に逃げ回り、最上級MP回復ポーション(高品質)が残り1本になった時、ついにオッサン魔王が業火に包まれ決着はついた。
勝利した女魔王が倒れているオッサン魔王の元まで歩いていくと、オッサン魔王が何事もなかったかのように様に立ち上がり、顔を隠していたマスクをはずした。
「フッ、余だ。」
「貴様だったのか!」
「また騙されたようだな。」
「気が付かずに消し炭にするところだったぞ。」
交互に話ながら何故か背中合わせになる様に移動する2人。
「やることが無い。」
「魔王達の。」
2人の魔王が決め顔でこちらを見る。
「「戯れ!」」
「迷惑すぎるからカエレ!」
二人の魔王の足元に同時に送還陣が現れ、ボッシュートされるように帰っていく。
魔王ともなると、一度召喚で魔力経路が繋がった相手の所には、魔王側の意思で召喚されることが可能で、今回は俺が別の魔王を召喚したのを察知したオッサン魔王が、暇つぶしの為に勝手に召喚されてきた。といった内容を直接脳内にオッサン魔王が送ってきた。
勝手に召喚されて来て俺から大量のMPを奪い、送還しようとしても送還をはじいて帰ってくれない。魔王とはなんと迷惑な存在なのか。俺は二度と魔王は召喚しないと心に誓うのだった。
魔族から魔法を習うのを諦めた俺は、とりあえず人族とやらを探してみることにした。水と食料には困らない上に、怪我をしてもポーションで治せてしまう。しかも魔物どころか大型の動物すら出現しない森、見かけるのはせいぜいウサギサイズの動物なので大した驚異にはならない。
割と余裕がある状況で川を見つけ、川沿いを歩くこと3日、たどり着いたのは、テンプレ通り中世ヨーロッパ風だが、門は破壊され囲む塀はボロボロ、あちらこちらから煙が昇る、怪我人だらけの町だった。