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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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鉄と熱と蒸気 3

 閉ざされていた外へとつながる扉を切り開き甲板へと出る。

 動力はいまだに動き続けていて船体は今なお川岸に船体と船底をこすり続けながら進み続けていた。


「揺れるっすね」

「ああ、まだ進み続けてるな」


 小刻みに揺れていることもあり支え無しで立つことはできず、二人は甲板に剣を深く刺して周囲を見回す。


「ネシェルたちが来てくれてるっすね。他に五人くらい見えるっす」

「だいぶ町から離れちまったか、揺れててよく見えない。ホルテン他に誰か来てるか?」


「遠くの方はよく見えないっすけど、ネシェルのほかに確認できるのはギルベルトさんとドミニクさんですかね」

「何人か来てくれているだけでもありがたい。使わなくて荷物になるから持たなかったが、俺も今度から白い銃を持つべきか」


 ベニユキが辺りを見回しどうするかを考える。

 あちこちで装甲版がめくれ上がりその隙間から蒸気が噴き出始めた。


 船が川岸にぶつかる音以外にゴリゴリと重たい音が別にどこからか響き始めベニユキが音の発生源を探す。


「なんか変な音がし始めたな。それと何だこの揺れ、まだ船が擦り付けられてるとは別の揺れがしてないか」

「この音、船の中から……」


 音はだんだんと大きくなってきておりシートで覆われた場所の下が陥没する。


「中から何か出てくるのか」

「どうするっすか飛び降りるなら今、岸も近いしチャンスっすよ!」


 ベニユキとホルテンはタイミングを合わせ甲板を勢いを殺すため剣を突き立てながら滑り降りていく。

 船の上から地面まで若干の高低差はあったが甲板が斜めになっていたことと川岸に衝突し船体がさらに傾いていたこともあって高低差は低く無傷で船から降りた二人。

 周囲に機械兵の姿もなくベニユキたちはネシェルたちの到着を待つ。

 息を切らし重そうな銃を背負いなおすネシェルが尋ねる。


「こんなところで何してるの?」

「目的のもがどれだかわからず、みんなが到着するのを待ってた」


「何やってるんだか」


 追いかけてきたネシェルたちがベニユキたちと合流して少し経ち、あとからテオとキュリルが追い付いてきた。

 船とベニユキたちを交互に見てキュリルは首を傾げる。


「なんでここで止まってるの? 目的のもの手に入れたのなら帰ろうよ」

「いや、これから探しに行くんだ。ウーノンはどうした、一緒じゃなかったか?」


「霧の中ではぐれちゃった、戦闘で怪我たし私ら以外に戦ってるやつもいないっぽいから……グリフィンも……。ところで、探すってどういうこと? この船壊すため中に入ったんでしょ?」

「入って壊したまではいいんだが、俺ら白い銃を持ってなくて場所がわからなかった」


「何やってるんだか」

「さっきも言われたよ」


 話している間も船は進んでおり岸や川底にぶつかり壊れた先端から川の水が入り込んでいるのか、船体は傾きつんのめりになっている。


「そろそろ追いかけるか。さっきよりかは船に乗りやすそうだ」


 船の構造物にかかった大きなシートが内側から何かに押されて歪な形に膨らみ動く。

 そしてかぶされたシートを裂き船体の一部を割って大きな機械の塊が出てくる。


「なんだこいつ」

「おいおい、なんか頭悪そうなのが出て来たぞ!」

「他のと全然形が違うじゃないか!」


 ガチャガチャと音を立て半分ロボット、半分戦車の怪物が姿を現す。

 前面は十本の足がせわしなく動いており装甲版をとっかかりに外へと這い出ようとし、後部の外輪船のような大きな歯車を回し履帯が道でもない場所を進もうとしている。


「白い銃が示した、こいつが目的の物だって……」


 白い銃を向けたギルベルトが何度も白い銃を向けて確認し後ずさった。

 機械は力技で船体を登り甲板を滑り落ち川へと落ちる。

 大きな水しぶきを上げたがすぐに川の中から足が伸び、無数の足が川岸をひっかき這い上がってきた。


「こいつを倒さないと行けないのか」


 船は内側から強引に破壊された影響で破損部から二つに折れしぶきを上げてゆっくりと沈んでいく。

 銃を撃つが他の機械兵と違い、まともな装甲を付けた兵器は銃弾を弾きその動きは止まらない。


「剣で斬るしかないっすね!」


 剣を構えてホルテンが前に出ようとするが、相対するように機械は足のついた前面を向ける。

 複数の足が絡まることなくとめどなく動いていて、ベニユキたちの方へと方向転換すると前へと進みだす。

 上部についた砲塔と側面部についた砲塔がベニユキたちの方を向く。


「避けろ!」


 放たれる砲弾がドミニクの腕を吹き飛ばす。

 砲身の根元、リボルバー式のシリンダーが回転し次なる砲弾を送り込む。

 悲鳴を上げ倒れ込むドミニクを気にかける暇もなく、キュリルたちは散らばり兵器の攻略にかかる。


「剣を振って足を切り落とすっすか?」

「脚の相手は無理だ。動きが速いしリーチも長い、近づけば一瞬で八つ裂きになる」


 剣を持つキュリルとホルテンは戦車の側面に回ろうとするが片方は川、回り込める方向は決まっており容易に側面に回り込めない。

 遅れてベニユキもホルテンから借りたままの剣を持ち戦車に迫る。


「わかったっす」


 ギルベルトとテオは威力の低く銃が効かないとわかっていても銃を撃ち続け、少しでもキュリルたちの負担を減らそうと気を引こうとしていて砲塔の一つを自分たちの方へと向けさせた。

 動きを止めたことで大砲が狙いを定め始めたのを察知して、放たれる第二射を躱す。


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