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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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鉄と熱と蒸気 2

 

 通路を進んでいた二人は上に続く階段を見つけ操舵室を探して上る。


「思ったより敵が出てきませんね?」

「まだ油断できないけどな」


 散発的に現れる機械兵を破壊しながら船の中を探索していく。

 ロックのかかった扉はホルテンの剣で焼き切り、待ち構えていた機械兵たちを一掃し強引に中に入る。


「この機械兵たち、今までの敵と違ってあまり強くないな?」

「俺まだ一回しか生き残って無いからよくわからないんすけど、昨日の電化製品たちよりは武器も少ないし纏まっても来ないっすね。二人だけでなんとかできてますし、どうなってるんすかね」


 その場所が船を操る場所でないとわかるとすぐに部屋を出て他の部屋を目指す。


『ここまで来たか、しかし……』


 他の部屋と同じく扉を破壊すると同時に部屋にいたすべてを破壊しベニユキは部屋に入った。

 船の艦橋部、小さな窓が前方部に何枚も張られ壁に湯たって何かしらの計器が置かれている。

 見通しの良い眺めが広がっていてすでに大きな川の真ん中を下流へと向かって進んでいた。


「なんか喋っていましたけど、ちゃんと聞かなくていいんですかね?」

「時間稼ぎか何かだろ、耳を貸す必要はない。しかしアナログな船だな、機械が操るから自動操縦とかかと思ったが」


「暴徒鎮圧がどうのって言ってませんでしたっけ、本来はこの船は人が操作するんじゃないですか? ボタンとか鉄の指で触れてなんかガタガタになってますし」

「修理とかもしてないようだな。外のシートも戦闘の後を直せなかったからかもな」


「機械の音声でおんなじ感じでよくわからないんですけど、話しかけてくるのは同じやつなんですかね?」

「かもしれないな。さて、どれをどう操作すれば船が止まるんだ?」


「よくわかりませんが、とりあえず舵を切ります?」

「まかせていいか、俺は外を見てる」


 通路を歩く足音が聞こえベニユキは弾倉を取り換えて扉の方へと歩いていき銃を構える。

 残されたホルテンは計器を適当にいじりそれでも停止しない為、舵を取り全力で船を方向転換させた。

 ホルテンの操舵で船は強引に曲がりはじめ川岸へと向かって進んでいくと、大きな衝撃とともに船体が軋み悲鳴を上げる。


「強引だな!」

「ええ! でも、岸にぶつけちゃおうって言ったじゃないっすか!」


 地面そのものが激しく揺れて衝撃で立ってはおれず転がるベニユキとホルテン。

 機械兵も激しい揺れに転倒したり壁にぶつかったりして攻撃の手を止める。

 船首は岸にぶつかるが、大型の船がごつんとぶつかってすぐ止まるわけではない。


 先に道がなくても船体の後部は進み続けようとして船首を岸にゴリゴリと無理やり擦り付けさせて押し潰し、船のいたるところで変形と亀裂が生じていく。

 自らが潰れるために進み続け唸り小刻みに揺れる船体の中で、ベニユキは同じように揺れで転倒し起き上がろうとする機械兵たちを破壊していった。


「大丈夫かホルテン」

「少し頭をぶつけました」


 額を切ってどくどくと血を流すホルテン。


「この後はベニユキさん。ここで、みんなが来てくれるのを待つんすか?」

「そうだな、でもできる限りこの船にいる敵の数を減らしていかないとな。助けに来たみんながここで返り討ちになったら目も当てられない」


「了解っす、気合入れていきましょう!」

「さて、目的の物がこの衝撃で壊れてないといいな」


「ええ~、ぶつけて停船させようって言ったのベニユキさんなのにそれは酷いっす」

「冗談だよ」


 起き上がり自分の血を止めるため持っていた治療道具で包帯を頭に巻き付ける。


「ここを離れて流石にまた川に戻ろうとはしないよな?」

「わかんないっす、相手は機械ですし自沈させようとするかも。ここ壊しておきますか?」


 操舵室を見回してホルテンが剣を握り室内を見渡す。


「頼めるか? たくさん持ってきた銃弾もだんだんと心もとなくなってきた。合流するまで持てばいい量かもしれない」

「剣、二本あるからベニユキさんに一本渡しておくっす。拳銃もいるっすか?」


「いいや、剣だけで十分だ。ありがとう」


 二人は息を整えると部屋を飛び出る。

 衝突の衝撃で配管が損傷しあちこちで蒸気が吹きあがっていた。


「この船、やっぱ蒸気船なんすかね」

「そういうのはよくわからないけど、あちこちで蒸気が噴き出てるからにはそうなんだろうな」


 人の通れない高温の蒸気の向こうから機械兵が直進してきて戦闘を続けながら通れる道を探し船内を歩き続ける。


「外から見たら、すごい昔の戦艦の特徴のあるタンカーみたいな形みたいでしたけど。この世界の船の設計思想はどうなってるんでしょうね」

「悪いなホルテン、そういう話は詳しくないんだ。でもあの機械が話していたことがほんとかウソかわからないが、機械でいざこざを納めようとしててそれが世界に普及してるんだろ。国がけが人を減らそうとしたのか、国に人の味方が付かなかったのかのどちらかだろ」


「尊重か独裁か、何にでも使えるんすね機械って」

「その結果がこれだけどな」


 拉げた衝撃で鍵とは別に開かなくなった扉を剣で裁断し通り道を作る。

 亀裂が入ったときに外から入ってくる水を防ごうと水密扉を閉めたようで、途中まで閉まった状態で歪んで動かなくなった扉が多く、そこから機械兵が腕だけを伸ばしてベニユキたちを狙って弓を放っていた。


「向こうの攻撃は音がほとんどないから気が付けないな」

「船が悲鳴上げてるし、配管からは勢いよく蒸気が噴き出てるから近くにいないと声も届きませんけどね」


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