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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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鉄と熱と蒸気 1

 時折やってくる機械の兵隊を倒しながら進んでいると細い路地の先、ついに川のそばに出た。

 戦いながら細い道を進んでいたため船の停泊する場所からは離れていたが、それでも川を見てほっと息を吐く。


「川についたっすね」

「あと少しだ」


 まだどこかで戦闘をしているのか町のどこかから銃声が響き、白い煙が何か所から立ち上っている。

 川を見れば下流から箱型の小型船が二隻、川を上ってきていて近くの係留所に船体をこすりつけ強引に停泊した。

 ベニユキたちからは離れたところだったが事故とも呼べる状況に周囲の警戒も忘れその船を見る。


「動く船ですね?」

「なら敵だ、戦う用意を!」


 いつの間にかに川をさかのぼってやってきていた小型船に、ホルテンとドミニクが武器を構えた。

 船首の部分が開き箱型の船の中から機械兵がそれぞれ十体ほど出てきて、蒸気を吹き出し白い煙幕を焚く。


「あれの相手はしなくていい戦っていたらキリがない、目的地の船に走れ!」


 ベニユキの指示で大型船の停泊していた港の、警護のために残っていた数機の機械兵を破壊したのち武器を降ろして大砲の伸びる大型船へと走り出す。

 町への砲撃は止まっておりベニユキたちが姿を現しても攻撃をしてこようとはしない。


「撃ってこない、俯角が足りなくなった?」


 そう呟きながらホルテンは船を見る。

 煙突からは灰色の煙を吹き、水面は泡立つ。

 そしてその大きな船体がゆっくりと港を離れようとしているのに気が付く。


「出航している!」

「大砲を撃ってこなくなったのは出航の準備をしていたのか?」

「逃げられる! ここまで来たのに」


 川底に降ろしていた鎖を巻き上げ小型船に曳航され船首を川の中央へとむけている。

 急いで船に向かっていたベニユキたちの耳元を背後から追ってくる機械兵が放った矢が通り過ぎていった。

 ギルベルトが立ち止まり背後から蒸気の壁を作りながら走って追ってくる機械兵を攻撃する。


「後ろのも無視できないぞ」


 ベニユキたちの目の前で太いロープの結ばれた杭が、強引に出航する船の力で引き抜かれていく。

 川に落ちたロープにホルテンが飛びつき捕まえる。


「ホルテン!」


 ベニユキも追いかけ川へと飛び込み別のロープを掴む。

 ギルベルトとネシェルは追ってきた機械兵と戦いドミニクは川に飛び込むがロープを掴めず岸へと引き返していく。


「このまま上にあがるぞ!」「うっす!」


 二人はロープを掴みそのまま上へとよじ上ってき甲板に上がる。

 人が作業するのに優しくない手すりも何もない傾斜した船体を滑り落ちないように移動し、船体を覆うようにしていたシートの方へと向かう。


「脚が濡れてるからすこしすべるっすね。ところで船にかかるあのシートは何でしょうね? 出航しても外す気はなさそうですし」

「この船機械が操作しているのか、艦橋からこちらを見ている。ホルテン後ろだ!」


 グライダーから降りてきた軽量型の機械兵が飛びおりてきて甲板の上を走ってくる。

 ホルテンが二丁の拳銃で対処し残骸は甲板を滑って川へと落ちていった。


「進みましょう、この船どこに行くのかわからないけど戻れなくなってしまいます」

「ああ、操舵室を叩いてこの船を止めよう」


 ホルテンの持つ剣で船体を覆っているシートを焼き切り中へと潜る。

 船は人が乗るようにできてはいないようで、自動ドアや空母のような下からせりあがるエレベーターがあるだけでドアノブなどはついていない。

 しかし、シートを剥がしていくうちに船体が大きな損傷を受けいたるところに大穴が開いていた。


「戦闘で損傷したんすかね?」

「理由はどうあれ、ここから中に入れるな」


 周囲の警戒をホルテンに任せベニユキは落っこちないようにシートの切れ端を掴んで穴を覗き込む。

 割れた装甲版の下に回る歯車や赤褐色の配管が見えそこそこ広い通路が見えた。


「降りるんすか?」

「他に入り口も見当たらないだろ。目的のものを手に入れるまで帰れない」


 せりあがってくるエレベーターから複数の機械兵がせりあがってきたが、ベニユキたちに腕を伸ばし矢を放とうとしたときに突然赤く発光して溶け出し始めた。


「なんだ、次々に溶けていく」

「ネシェルっすよ、ほら!」


 岸の方で港に取り残されたネシェルが長い銃身の銃を川を下ろうとする船に向けている。

 彼女は船へと戻ろうとやってくるグライダーを川へと落としていく。


「助かるな、なら今のうちに降りるぞ」

「了解っす」


 配管などに足をかけ船内へと降りる。

 船内はエンジンか何かが動くゴウンゴウンという重低音が響いており音に合わせて船内が小刻みに揺れ続けていた。

 穴は更に下の層へと貫いていたが下は貨物室なのか天井から床までかなりの高さがあったため諦める。


「この船装甲版は金属でしたけど、内部は鉄じゃないみたいっすね?」

「なんでもいい、ところでホルテン白い銃を持っているか?」


「え? ……いや、持ってないっす」

「参ったな、せっかく船に乗れたってのに目的のものを見つけられない。とりあえず操舵室を潰すか」


「船を停止させるんすよね、了解っす」

「荷物を持って泳いで帰りたくはないだろ」


 出会いがしらの戦闘に備えて二人はゆっくりと船内を歩き出す。


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