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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
3章 --刹那を刻むアルヒェエンゲル--
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熱を持つ霧 4

 他の機体と情報を共有しているのか霧の中から追ってくる機械兵たち。

 後続が何体来ているかわからないように先を走る機械兵からは蒸気が噴射され新たな霧が生み出されている。


「ベニユキさん、敵がもう追ってきてるっす」

「相手の弓の攻撃は命中率もよくないし、もう撃ち切っているはず。構うな!」


 ベニユキの進路先に槍が降ってきて、それを回避し慌てて振り返る。

 追ってきている機械兵は立ち止まって振りかぶり勢いよく槍を投擲してきていた。


「あっぶな! 唯一の武器だろう、何が何でも止める気だ」

「っすね。でも俺らの方が早いっす」


 ホルテンは通り過ぎ様に剣で投擲され地面に突き刺さる金属の槍を切断し再び投げてこないよう再利用できないようにする。


 機械の兵隊の攻撃をかわしながらジグザグに川へと向かって住宅街を走っているとふとベニユキの視界に影が落ちた。

 視線を上にあげると噴射される蒸気で推進能力を得て方向を変えるグライダーに乗った機械兵が三機ベニユキたちの上を飛んでいる。

 すぐに建物の壁によりベニユキはホルテンを呼ぶ。


「上を見ろ、奴ら飛んでいる。建物のそばに寄れ」

「うわっほんとだ、やばいっすよ。追いつかれるっすよ」


 巨大な羽を開き白い尾を引いて空を飛ぶ機械兵たちは腕をベニユキたちの方へと向け矢を放つ。

 霧の中から出て走って追ってくる機械兵たちはまだ後方で、ベニユキたちは空を注視していたため飛んでくる矢を難なく躱す。

 ベニユキは銃を撃ち飛行する機械兵を撃ち落とそうとするが、グライダーは器用に方向転換をして回避する。

 機械兵本体に銃弾が当たることはなかったが、グライダーの方にいくつか被弾させそのまま近くの建物の上に着地しグライダーを切り放して屋根の上を走り始めた。

 飛行時と同じく蒸気を噴射しを加速している。


「降りてきたか、しかもなんか気持ち後ろのやつらより足が速いな」

「よく見ると他のと少し形が違うっぽいです。空飛ぶから軽量化でもされてるんでしょうか」


「違う形ってことは攻撃方法も変わってくるのか」

「かもしれないっすね。見たところ槍も持っていませんし」


 屋根の上を走り先回りした機械兵たちが降りてくた。

 武器の類は持っていなかったが腕の先が鋭く尖っており、それを前に突き出し走ってくる。


「まえならえの姿勢で突っ込んでくるぞ!」

「俺がやるっす、やれるっす! 弾の温存を」


 銃を構えようとするベニユキを制止しホルテンが前に出て機械兵の攻撃を躱し剣で胴体を切り裂く。

 続く二機目、三機目と斬り裂きすべてを排除する。

 曲がりくねった道の先に大きな川が見えてきた。


「川が見えてきた」

「ベニユキさん、向こう! ネシェルたちがいます!」


 ホルテンが叫びベニユキが指さす方を見る。

 目立つ大きな銃を持ったネシェルの姿と負傷した数名。

 彼女らも機械兵に追われており戦いながらも川を目指していた。


「目的地は同じ様だ、合流する」


 ホルテンを連れてベニユキは進む進路を変える。

 皆負傷していたり、武器の扱いが不慣れだったりして苦戦していて、そこにベニユキたちが合流し追ってくる機械兵を協力して破壊した。


「大丈夫か? 大怪我をしたやつはいないな、とりあえず進みながら話そう。港までもうすぐだ」

「戦いは一人でもできた」


 なぜかふてくされているネシェル。

 彼女は重そうな大きな銃を抱え直し走る。


「まぁ、早く片付けて帰ろうじゃないか」

「他の人はいないの?」


「ああ、キュリル、テオ、ウーノンと居たが霧の中でみんなとはぐれちまった」

「そうなの、残念。たった二人増えたところであんまり意味ないと思うけど。いいや、早く行こうまた集まってくる」


 町並みの奥に見えてくる大きな川に浮かぶ大きな船。

 船の前にもいくつか人型の機械の兵隊の影が見え、その中には建物を破壊して暴れた大きな体も見える。


「もうすぐだな、あそこまでたどり着けば。……ところで誰か白い銃を持っているか? あれがないとどれが目的のものなのかがわからない」

「向こうのモジャモジャしたギルベルトとわかめ頭のドミニクが持ってる」


 ネシェルに紹介され一緒にいた負傷者2人は予備の武器として持っていた白い銃を見せて軽く頭を下げる。


「ギルベルトです」

「わかめって酷いな」


 ギルベルトと小麦色の肌をしたドミニク。

 二人の見せる銃は近未来風の拳銃と無骨な拳銃それぞれ違う形をしていた。


「助かる。ドミニクの持っているのは違う銃だな、ギルベルトの持ってるやつだ」

「あんたに渡しておいた方がいいのか?」


「いや、必要ならいうからそれまで持っていてくれ」

「わかった」


 港バラバラに放ったが何とか集まってきたホルテン、ネシェル、ギルベルト、ドミニク、ベニユキの五人は川を目指す。

 やがて港に停泊する大きな船の全体が見えてきて、船体の側面から延びる大砲の砲身がベニユキたちの方を向いていることに気が付く。


「あれ、大砲こっち向いてるっすよ!」

「あの人型機械はしっかり道具も使えるんだな、向こうが砲撃して来たら建物の中に飛び込め!」


 ベニユキがそうみ何聞こえるように叫んだ直後、大砲は火を噴く。

 少し遅れて聞こえてくる砲撃音。

 皆が近くの建物の中に一斉に飛び込む。

 最後に砲弾が飛んできてさっきまで走っていた場所の近くの地面が大きく抉れた。

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