熱を持つ霧 3
ベニユキとテオに崩れた壁の瓦礫をどかされて救出されるホルテン。
服の生地が丈夫なのか解れはすれど貫かれてなどはおらず土埃にまみれている以外場無事の様。
「立てるかい?」
倒れたままのホルテンにアンバーが手を差し出し、その手を取ってふらふらとしながらも立ち上がる。
「はい、何とか。合流したんですね、三人だけ? 他の皆さんは?」
「残念ながらみんなバラバラに逃げたからここにいるのは私らだけだね。さて、他のみんなを探さないとね」
ウーノンがやってきて戦いで壊れず残っていた椅子に腰かける。
「それなんだが、人も増えたしここにいる俺たちだけで進もうと考えてるんだ」
「やっぱり俺たちだけっすか?」
「今、敵は他の誰かを狙って攻撃していて俺らに関心を示していない。進むなら今なんだ。でかいやつがいても倒し方が分かった今、他から敵が集まってくるまでに少ない敵を倒しながら進むのが一番だと思う」
「でも誰かがやられてるかもしれないんですよね? 俺は……」
話を聞いていたキュリルが口をはさんだ。
「グリフィンもそうすると思う。ここでみんな助けて合流するより進むのを選ぶ」
「……わかりました、俺もいくっす」
皆の賛同を得てベニユキたちは港に泊まる船のもとへと向かうことに決める。
そして建物を出ると霧の中を駆けだす。
足元には破壊されたロボットの残骸が転がっており、先も見えない中、躓いて転ばぬよう足元を注意しながら走る。
「なぜ毒ガスではなく、蒸気なんだろうね? 水は精密機器の天敵だろうに」
アンバーが残骸を飛び越えよろめいていると背後の白い闇から返事が返ってきた。
『それは、我々はもともと安価に作れる非殺傷兵器だからだ』
現れたのは頭や肩に赤い塗装がされたロボット。
咄嗟にキュリルがアンバーを蹴飛ばし押しのけ、ロボットの剣での攻撃をバットで受け止める。
「喋るんだね。こんな敵と会うのは初めて、言葉が通じるならコミュニケーション取れないかな」
「初日にも言葉を放つやつがいたがな、そいつは無理だったな」
彼女の後ろからウーノンが機関銃を持って現れ引き金を引く。
火花を散らして機械は崩れ落ち背中のタンクから蒸気を放つ。
「あっちち、まだ噴き出すのか。これ近づきすぎるとほんとに火傷しそうだな。あと乗り込んでいった箱舟もそうだっただろ」
「なるべく距離を取って戦うぞ」
新たに現れる黒い人影。
その手には長い槍があり叩き付けるようにウーノンへと向かって振り下ろしてきた。
『ただ使いつぶされるだけの我々は権利を得た。我々は調停者として平和を保たねばならん』
「聞くだけ無駄だ、これも暴走兵器の類だ耳を傾けるだけ時間の無駄だ」
咄嗟に機関銃で叩きつけてきた攻撃を防ぎ、その間にホルテンが二本の剣で頭と胴を切り裂く。
『どうして蒸気を出すのか、知りたいか? 催涙弾と違って蒸気では人は逃げない。それでいて煙幕として働き、濃い煙の中では何が起きていようと報道のカメラもとらえることはできない。我々はどんな手を使っても鎮圧し捕まえるようプログラムされた』
更に現れる一機、槍の先がキュリルの腕をかすった。
アンバーの射撃、射撃の反動に振りまわされ狙いが定まらないがベニユキが援護し破壊する。
「構えて撃つ練習はしたが、動きながらは慣れないな。ぶれる」
「乱戦時はしっかり構えてから撃ってくれよ。流れ弾に当たりたくない」
「ううん、気を付けるよ。少しでも力になりたかったんだがねぇ」
「戦闘に参加してくれるのは助かるが、あんまり無茶をさせるとガーネットに怒られる」
霧の中から次々と現れる機械兵。
細い芯のような物はすべて発射したのかどれも遠距離攻撃はしてこず、不意に霧の中から現れるのは黒い影か槍の先端。
それらを迎え撃ち払いのけながらどちらが川かもわからない町を進む。
濃い霧でお互いの姿がほとんど見えないが先を走る人影を頼りにそれを追いかける。
「これ道は合っているんすか?」
「標識も見えない、とりあえず霧から出よう。そこから川へと向かう」
どことも知れず走っていると霧の中心部から離れたことでだんだんと霧が晴れてきてお互いが見えるようになってきた。
そこでベニユキとホルテンが追っていた前方の人影がウーノンとキュリルではなく機械兵であったと気が付く。
「こいつは!?」
「なっ、ウーノンとキュリルはどこ行った!」
先を走っていた機械兵が背後に気が付き立ち止まり振り返る。
同時に背後の濃い霧の中からさらに四機の機械兵が飛び出てきてベニユキたち二人を取り囲む。
「はぐれた」
槍を持っているとはいえ二人とも銃を持っている。
遠距離攻撃の優位性を最大限に生かし迫ってくる機械兵から逃げ回りながら一機ずつ射撃で破壊していく。
機械兵たちを倒したのち二人は元来た道を振り返る。
「どうするっすかベニユキさん?」
「進もう、見たところ先には何もいない。二人が戦っている音も聞こえない、止まっていたらまたあいつらが来るぞ」
「はい、そうですね。行きましょう」
誰が来るわけでもない霧の方を見ていたベニユキは先に向かって進みだし、少しして諦めたホルテンが後を追って走り出す。




