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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
2章 --時計針止まるアークエンジェル--
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錆びた箱庭 3

「痛いのは嫌だ。私は目立つがこれを着るよ」


 オレンジ色の防弾チョッキを手に取りブラットフォードがそれを着用した。


「目立つが、慎重に進めば生存率は上がる」

「まぁ、頑張れよ。とはいえ俺も着るか悩むな」


 今日が何度目かの初めて者たちは他の者の真似をして武装する。

 ほとんどの者が防弾チョッキの色に不満を持ちつつもそれを身に着け武器を取り皆が舞台の上に立つ。


『それではこれより箱舟アンノウン制圧へと向かいます。皆さん』


 皆が外ったのを確認するとミカは光となってきてベニユキたちが乗ったエレベーターは降下を始める。

 降りていくエレベータの中ミカの声が響く。


『向こうは襲撃されると思っていませんでした。すでに数分前に私が相手箱舟内に出入り口を作り通路を確保しています。相手が準備を整える前にすべてを無力化させてください。エレベーター降下開始とともに私も向こうの制御を奪うための電子戦を始めました。すでに生命維持システムを掌握。向こうに降りても急な酸素不足で死ぬことはありません』


「それを取り返されたら俺たちは息が出来なくなるのか?」

「生命維持装置とか言われると宇宙船なんじゃないかと思うよね。そもそも、箱舟ってどういう仕組みで動いているんだろう。他の世界を行き来する、信じがたいけどあんないろんな景色見せられて同じ地球だとしたら世界がどうなったのかわからないし。疑うのも疑わないのも混乱するから開き直って流石に信じないといけないし」


「他のこの施設。一体どうなってるんだろうな?」

「広いって言っていたな。城ぐらいって。向こうの箱舟の人間も金属を集めさせられて施設内を拡張されているのか」


「そこまで大きくしてどうするんだろうな?」

「人数が増やせるとか大型兵器が控えてるとかだったら絶望しかないぞ」


 鎖の音を響かせ降りていたエレベーターが急に激しい揺れだす。

 激しい揺れに皆が手すりにつかまり振動に耐える。


「何だ、急に!?」

「だいぶ揺れるな。ここにきて故障か?」


 原因不明の揺れが続く中エレオノーラが手すりに掴まりながらベニユキの隣に歩み寄ってきた。


「かなり揺れますね」

「舌を噛むかもだから口閉じてた方がいい」


「なんか匂いが変わりましたね?」

「そういわれれば、そうだな。俺たちのいたところとは違う匂いかよく気が付いたな」


 エレベーターの降下する速度が遅くなり始め揺れが少し収まり始める。


『まもなく到着です。すでにオートマトンが安全地帯を作っています。皆様にはその部屋から出て他の部屋の制圧を』


 戦闘が始まる緊張からられも口を開かず掴まっていた手すりから手を放し武器を構え到着を待つ。

 降下するエレベーターに外の光が差し込む。

 暖かみのあるオレンジ色の間接照明に照らされた赤い壁紙と絨毯の敷かれた部屋。

 部屋のあちこちでオートマトンが伏せて外につながる扉に向けて機銃を向けており上を見上げれば箱舟の入口が浮いている。


「人とはあくまで俺らが戦うのか」

「人を殺すのは、嫌です」


 エレベーターから降り立つと銃を構えて扉へと向かう。

 開ければ車両が通れそうなほどの広い道。

 道の両脇には博物館のようにガラスケースに収められた石やら骨やらが並んでいた。


「急げ、こういうのは時間が大事だ。かかればかかるほど増援が来てこちらが制圧される。向こうに地の利はある、俺たちが生きて帰るために相手に作戦行動をとらせるな!」


 部屋を出ると大声でグリフィンの指示が飛び空路の奥へとキュリルやテオたちが走っていく。

 ブラットフォードたちも反対側の道へと走っていきベニユキたちもその後を追いかけた。


「オートマトンはこないのか?」

「みたいだね。結局僕らでやらないといけないみたいだ」


 見たことない生き物の剥製や植物が飾られている。


「ここは博物館なのか?」

「いろいろ展示してあるよね。見たことないものが多い、異世界で集めて来た物なのかな」


「それにしても部屋と部屋の間隔が広いな」

「一つの部屋がそれだけ大きいんだろうね。トラップとかもあるかもしれない、慎重に移行」


 通路の先に部屋を見つけ慎重に扉を開く。

 広い部屋の中には誰もおらず大きな椅子やテーブルなどが置かれていた。

 誰もいないのを確認すると別の部屋を探しに走る。


「内装がいちいち豪華だ」

「城を改装して作ったホテルみたいな場所だね」


「人が居ないな。どこかに集結して待ち構えてるのか?」

「接敵していないのかいないのか、グリフィンたちの方も同じなのか気になるね」


 隣りで走る青ざめた顔をするエレオノーラ。


「このまま戦闘が起きなければいいんですけど」

「向こうに投降を促すか?」


「できれば血が流れない方がいいじゃないですか。私ここに来る前は看護師だったんです、だから人を殺めるのは」

「なるべく撃たせないようにする。俺のようにここに来る前から人と戦っていた戦闘経験者か割り切っている奴で戦う。アンバーたちと後ろの方にいてくれ」


 次の部屋が見えてきて扉を開け銃を構えて中の様子をうかがう。


「この部屋もいない」

「だからって油断すればどこからか弾が飛んできそうだな」


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