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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
1章 --永久を繰り返すアルカアンヘル--
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悪臭放つ大地 4

 

「相手は元気だぞ、弱ってない!」


 立ち上がった男とベニユキは目が合うと男はベニユキへと向かって手を伸ばした。

数メートルほど距離があったがその腕が不自然に伸び、様子を見ていたベニユキに髪を掴むと隠れていたエスカレーターの後ろから引きずり出す。

 隠れていたマルティンと装填を終えたウーノンが飛び出しベニユキに当たらないように移動し手助けるために銃を撃つ。


「ベニユキを放せ!」


 ベニユキは抵抗して離れようとするが男の力は細腕であるにも関わらず強く、抵抗してもその手から逃げ出すことはできない。

 頭を撃つのに躊躇いがありできるだけ外さないよう体を狙っていたが、それでも銃弾を体に何発銃弾を受けても男は倒れる様子がない。

 そして背後に回ったマルティンを追いかけるように、無表情の頭だけが本来はまわらない角度まで回る。


「何だこいつ……人じゃない!?」


 青あざのような紫色の肌をし、充血した目を見開いた無表情な頭髪の少ない男。

 男は腕を伸ばしマルティンの首につかみかかる。

 伸ばしてきた腕に弾が切れるまでマルティンは銃を撃つが体の中で動く白いものが傷口を埋め、首はそのまま一回転してウーノンを見た。


「テンメイ、エレオノーラ、二人とも援護を!」


 髪を掴まれているベニユキは指示を出し、震え目に涙を浮かべながらもテンメイとエレオノーラも物陰から出て腰が引けた状態で銃を構えると引き金を引く。

 男の頭に向かって撃たれた弾丸は至近距離のも関わらず何発も外すが、そのうちの一発が男のこめかみに当たる。


「ひっ!」


 銃弾を当て額に空いた穴を見てエレオノーラが自分がしたことに驚きしりもちをつく。

 伸びた腕を縮めゆっくりとマルティンを自分のもとへと引き寄せていた男は頭を撃たれ、掴んでいた二人を手放しそのままガクッと糸が切れるように倒れた。

 せき込み倒れるマルティンと頭を押さえて倒れるベニユキ。


「大丈夫!?」


 倒れた男を遠回りしてテンメイがマルティンへと駆け寄る。


「大丈夫?」

「ああ、何とか。ゴホッ、他のみんなは?」


 銃を構えたままエレオノーラがそのままへたり込む。


「やっちゃった……私、人を、殺しちゃ……」


 そこまで言って言葉に詰まるエレオノーラ。

 こめかみを撃たれた男は左右別々に目を動かし起き上がろうとする。

 ウーノンが男のそばまで接近し、外さない距離から頭に何度も射撃した。


「一体、何だあいつは!」

「頭撃ち抜かれて死なない奴なんているのかよ」


 男からは血は一滴も流れていないのを不気味に思ったテンメイやウーノンたちが、いまだむせ込むマルティンに肩を回してベニユキたちとともにその場から離れる。

 走って逃げる際にエレオノーラが転びベニユキが腕を掴んで立たせて走らせ、通路の一角に入り込み周囲に人の気配がないことを確かめて腰を落とす。


「逃げ切ったな」

「この銃弱くないか、倒せなかったぞ」

「あれ、人じゃなかった。化け物だった……」

「ゴホッ、みんな無事だね」

「マルティン、大丈夫?」


 首元に強く掴まれ手形の赤い痣を作ったマルティンは首元をさすりながら皆が無事か見回す。

 怯えたエレオノーラ、負傷者が多くあたふたするテンメイ、強く掴まれた拍子にけがをしたのか額から血を流すベニユキ、動揺し手間取りながら弾倉を取り換えるウーノン。

 マルティンはベニユキのもとへと向かう。


「大丈夫かいベニユキくん?」

「髪の毛を結構持ってかれたよ」


「命持ってかれなかっただけ良しとしようじゃないか」

「お互いにな。首絞められておいてもう笑えるだなんて強いなマルティン」


 弾倉を取り換え怪物が追ってこないか、来た道を見に行っていたウーノンが戻ってくる。


「……まだ動いてる、とはいえ痙攣しているだけで。起き上がることはなさそうだが」


 報告を聞いて渇いた笑いをするマルティン。


「ハハハハ、あれでも死なないなんてね、しっかりとは見ていなかったが頭をしっかり撃ったんだろう」

「ところで、弾を分けてくれないか。考えなしに撃ち過ぎた」


「ああ、ありがとう。今渡すよ、死なないんだから仕方ない」

「あんなそばで当てられないとは思わなかった」


「ウーノンが行動してくれなかったらベニユキ君が死んでいるところだった」


 怯えるエレオノーラの背中をさするベニユキは、他の者たちがどこかで戦っていないかを耳を澄ませて確認する。

 青ざめた顔をしたエレオノーラはベニユキに尋ねた。


「あんなのがまだいるんですか?」

「わからないけど、あれだけってこともないだろう。気を付けて進もう」


「……お家に帰りたい」

「そうだな、出来るだけ怖い目に合わないようにするから後ろにいてくれ」


 髪を掴まれた際に負った傷からの血も止まりベニユキは銃を構えマルティンのもとへと向かう。


「先に潜っていった連中は無事なのかね。これからどうする。あんな化け物が他にもいたんじゃ進みようがないぞ?」

「ああ、でも外にもあれがいないとは限らないし目的のものを回収するまで戻れないって聞いただろ。僕らにできることは進むことだけだよ」


「……はぁ、だよな。みんな怯えている」

「ああ、僕らは戦闘員じゃない……と思うからね。こういうことに離れていなかったはず、悲しいことにさっきからずっと足ががくがくしてる」


「安心しろウーノンが戦っていた時俺は情けなく見てることしかできなかった」


 奥に扉を見つけ音を立てないようにゆっくり移動し始めるベニユキたち。

 建物に入りまだ半時として立っていないのに彼らは非常に疲弊していた。


「とりあえず進もう、この建物の見取り図がない以上虱潰しに行くしかない」

「そうだね。ひとまず銃を撃ったみんなはマガジンをとり変えた方がいい」


 頭にはてなを浮かべるエレオノーラ。


「どうやるんですそれ?」

「ああ、いま教えるよ。こんなのなんで知ってるんだろうね」

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