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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
2章 --時計針止まるアークエンジェル--
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暗い暗い闇の底 4

 下へ下へと白い銃の示す方向を目指して階段を下りていると、坂の途中に箱型のものがあるのを見つける。


「何かある?」

「エレベーターかな、これがこのレールを通って上の階と下の階をつないでいるみたいだ、通路が大きいと思っていたけど大きなゴンドラが一つではなく二台が交互に動いていたようだね」


「この長さを二台?」

「流石に少ないよね。二車線っていうべきか、他にもこういうゴンドラみたいなのがあるとは思うけど」


 箱型の物は通路の半分を塞いでおり、銃を構えて死角になった物陰から姿のわからない怪物の襲撃を警戒した。

 ガラス張りのようだが汚れていて中の様子をちゃんと見ることはできなかったが、見える範囲だと椅子が並んでおり枯れた観葉植物のような物も見え待合室のような内装。

 それを見てエレオノーラがつぶやく。


「誰もいませんね」

「誰かいたら逆に嫌だろ。こんな暗いとこで暮らす人間って」


 じっくり見ている時間もなくその箱型を通り過ぎ一同はまた下を目指す。

 誰も話すことはなく埃の積もった場所を歩く泥の纏った足音と、どこからか流れてくる水が流れる音が響く。


「ここも今まで私たちが送り込まれた世界も、何かが理由でこうなったんですよね?」

「そうなんじゃないか、どこの世界も朽ち果て方が違えど人工物はあったし。一番最初の世界は人らしいものもいた」


「怪物じゃない人が居たんですか?」

「いや怪物だった」


 背後に警戒しながら階段を降りようやく下の階が見えてくる。

 疲れた声でテンメイが白い銃で目的地をの方向を確認していたテオに尋ねた。


「やっと下が見えてきた。ねぇ、ここで降りるのまだ下?」

「ここでいいらしいな、さて進むか」


 階段を降り始める前と違い今度は万が一の時に足を滑らせたときに掴まることのできる鎖のサポートがなく一人一人が注意して渡る。

 ウーノンやキュリルたちが渡っていき周囲の安全確認をしに行く。

 外に続いてブラットフォードやテンメイが続き、不安定な足場を人を支えてある国はエレオノーラでは不安で、代わりにベニユキがガーネットを支えてエレベーターのレールを渡り切る。


「そら渡りきったぞ」

「ごめん、ありがとう」


 先にアンバーをエレベーター乗り場の段差を引き上げてもらい、後を追って登ったベニユキは後ろを振り返った。


「向こうにいるのはあと何人だ?」


「数えたら九名だね、戦車と戦ったあの時にブラットフォードと生き残った者と何度目かの今日が初めての人たち。グリフィンたちを入れて8名がやられた」


 誰かが先に行くのを待っていた残り者たちが一人ずつ階段の手すりから手を放して滑りやすいレールの上を渡り始める。


「今日は何人戻れるか」

「そうだな、あのAIがどれほど危険な場所に降ろしたかによるな」


 一人また一人と足場の悪い渡り引き上げられ合流していく。


「何か音が聞こえる?」


 引き上げていたベニユキと手伝っていたマルティンが音が聞こえる方向を探す。

 並の立つようなザァァという音が聞こえその音が大きくなってきていた。


「上の階だ、この通路を何かが滑ってきている! ここにいると下に叩き落とされるぞ!」

「早くこちらに!」


 音を聞いて渡り切っていなかった残りの数人が一気に渡り始める。

 そのうちの一人が足を滑らせ悲鳴を上げながら手にしていたライトとともに下の階、果ての見えない暗闇の中に消えていく。

 上の階からゴオンと重たい音が聞こえその後重たい金属が軋む音とが聞こえ始めて、足を滑らせ遠ざかっていく誰かの悲鳴をかき消した。

 ベニユキがライトを照らすと先ほど中を確認した箱型のゴンドラがゆっくりと降りてきている。


「何の音!?」

「どうかしたんですか!」


 ゴンドラが奥側の通路を通過し速度を落として階より少し下で停止しゴンドラの後ろには先ほど横を通過した時にはなかった白い塊があった。

 滑り落ちてくるゴンドラの音に皆が集まってきて銃を構え、マルティンたちが渡り切った残りのメンバーを引き上げる。


「なんだ」


 白いものが動くとそれが何かを確認する前に皆が引き金を引いた。

 銃声が重なり大きな白い塊は赤く染まり、動かなくなると次第に銃声が収まる。

 そして皆の銃撃が止まり怪物が動かないとわかるとベニユキは尋ねた。


「それで、これは、なんだ?」

「知らないよ、怪物」


 わざわざ滑って危険な場所を渡って確認しに行くものはなく白い塊だったものが何かわからないままその場を離れた。


「あれがグリフィンたちを襲ったやつか?」


 ベニユキがガーネットに尋ねる。


「そうかも。でもわからない、私はアンバーに押されて鎖を握って渡っている最中だったから。でも白い大きなものだった」


 振り返り白い塊が改めて動き出さないかを警戒しつつも、白い銃の指示に従って漆黒の闇の中を進んでいく。

 上と同じく天上のある町並みが広がる廃墟の町。

 ただ、上の階より窓の間隔が狭く壁につく扉の数も増えた。


「なんか、町並みがぎゅうぎゅうだな。上の階はこうじゃなかったよな?」

「上の上の階だね、たしかに言われてみれば」


 マルティンとベニユキは先頭を歩くキュリルとテオの後を追って進む。

 皆先ほどの何かとの戦闘でいつでも戦えるよう武器を構え続けていた。

 ふと振り返ればガーネットとエレオノーラが歩いていて振り返ったベニユキと目があい、そっと隣りへとやってくる。


「ガーネットは大丈夫か?」

「はい、少しアンバーのこともあって落ち込んで椅子ます。ですけど落ち着いています」


「様子を見ていてくれるか」

「はい、大丈夫です」


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