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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
2章 --時計針止まるアークエンジェル--
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暗い暗い闇の底 1

 武器を持ち皆を乗せエレベーターは降下を開始する。


『本日皆様にお願いしたいのは、より強力な兵器の情報。皆様が降り立った場所から遠くない場所にある施設から兵器の情報を持ち帰ってきていただきたいのです』


「初日と同じ感じかな?」

「また狭い室内で追いかけっこさせられるのか。あ、白い銃だれか持っているか?」


『向かう先は汚泥水没の世界。地表や空気は穢され、汚染から逃げた人々が地下に楽園を作り上げた世界です。狭い土地、限られた資源で効率よく食料を生産するために行われた遺伝子操作が生き物を異形へと変質させている様です。有害な物質を含んだ水が施設内を流れています、あちこちで流れる汚染水には十分気を付けてください』


 真っ暗な場所だった。

 差し込む光もなく空気の流れもないようでよどみ濁った空気と悪臭。

 エレベータが降り立ちベニユキは溜息を吐き、息を止めてエレオノーラが顔をしかめる。


「臭いな、それにジメッとするし暗いな。夜って感じでもないな屋内か? ああ地上が汚染されているとか言ってたっけ」

「ゴミ箱の中みたいな匂いです、うぅ……気分悪くなってきた」


 手にした武器を降ろしてテンメイが鼻を押さえる。


「臭い、なにこの腐った臭い。もう嫌なんだけど不衛生なところ。こんなところ居続けたら絶対病気になるよ」

「初日を思い出す酷い臭いだね、しかし明かりがないと何も見えないねどうしようか」


 エレベーターが上がっていき少したって代わりに降りてくるオートマトン。


「なんだ? 今回も護衛するのか?」

「建物が崩れてるから掘り起こすのかな?」


 その背には大きな箱を背負っており入口の真下から離れたところで足を折りたたんでしゃがみ込む。

 宙に浮かぶ箱舟の入口からミカの声だけが響く。


『持って行った武装を撃ち切るといったことがあったので、予備の弾薬を多めにその他装備を乗せております。位置を示す白い銃とライトもありますのでお持ちください』


 ミカの声が響く空に向かってグリフィンが尋ねる。


「こいつは移動したときついてくるのか? それともここに戻ってこないと弾薬の補給ができないのか?」


 天上から声だけのミカの返事が返ってきた。


『この場に据え置く感じになります。申し訳ありませんが弾薬が切れる前に戻ってきてください』


 オートマトンの背に乗せられた箱からそれぞれが白い拳銃とライトを持つと明かりをつける。

 ライトの眩い光が近くにいたキュリルを照らし、彼女は眩しそうに手をかざして顔を覆う。


「眩しいです。光量がすごいですね、目が潰れそう」

「すまないキュリル君、人のいない方向へ向けるべきだった」


「慣れるまで臭いが辛いですね。臭いではなく鼻の奥で痛覚に変わってます、痛い鼻がもげそう。あ、私が先行します」

「このライトは銃につけられるな、もう一つ持っていくか」


 時期に鼻が慣れるだろうと言いグリフィンがライトをつけて行き先を照らし歩き出す。

 エレベーターの降り立った場所はどこかの建物の中で、広い空間に椅子が並べられている。


「ライトをつけてもなお暗いな? ここは議事堂か?」

「光は強いけど照らせる範囲が狭いですね、さて降ろされたここはどこなんでしょうね」


 動くたびに足元に積もった埃が舞う。

 目的地を探すための白い拳銃と明かりを照らすためのライトを持ちベニユキたちもグリフィンの後を追った。

 歩き出しエレオノーラは自分たちのつけた足跡を見る。


「匂いも湿気もですけど積もった埃がすごいですね」

「そうだな、ここも人に会えそうにはないな。防塵マスクが欲しい」


「臭いもなんとかする酸素ボンベが欲しいです」


 一人一人がライトを持ち全員が纏まって箱舟の入口のある大部屋を出る。

 明かりのついていない廊下が伸びており、何もかもを飲み込む闇が広がっていた。


「今回はみんなでまとまっていくんですね」

「確かに今日はブラットフォードたちもついて来ているな、暗いから分散したくなかったのかもな。まぁ目的地は一つだし」


「暗いところは怖いですものね、また昨日みたいなのが出てきたらどうしましょう」

「確かに出てきてもおかしくないな、明かりを消したら文字通りの一寸先は闇だもの。どっからか襲ってきそうだ」


 どこからかキチキチと何かがなく音が響く。

 何かの気配を感じウーノンとブラットフォードが銃を構えライトで辺りを照らす。


「何か居るな」

「だが隠れられた、敵が見えない」


「見えない敵ということは?」

「いや、一瞬だけ尻尾か何か見えた。今回はちゃんと実態のある生き物みたいな何かだ。素早い、あまり大きくない何かが見えた」


 感じる気配に闇を進む皆の警戒度が上がるが、時折音が聞こえるだけで姿を見ることはできない。

 アンバーやガーネットも突撃銃を持ちライトで天井や背後を照らしている。

 通路の天上が崩落しており見上げれは液体の滴る配管や千切れ伸びた配線の先に上の階が見えた。


「上にも階があるようだ、内装が見える」

「ここはでかい建物じゃないのか?」


「いや、構造を見るにどの部屋にも窓はなく、まるで建物全体が町になっているみたいだ」

「地下がどうのって言っていたな」


「地下都市、なのだろうね」

「なら上だけでなく下にも階があるんでしょう、前か後ろだけを警戒すればいいってもんでもないだろうか」


 グリフィンとアインが話ている後ろでベニユキが天井に空いた穴を見上げる。


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