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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
2章 --時計針止まるアークエンジェル--
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私は人形 4

 グリフィンの指示で機関銃や突撃銃を持ったアインたちとマルティンたち。

 すこし引いたところで対戦車兵器を構えてバットを持ったキュリルが護衛につくグリフィンたちの三つの部隊に別れる。

 後ろに下がりながら別れグリフィンたちがエレオノーラたちと合流し距離を取っていく。


「撃つのはどちらか一方のグループだけだ、ひきつけたらもう一方の部隊に撃たせろ!」


 先行してアインたちの班が銃を撃ち始め銀色の像は彼らを追いかけ始める。

 重機関銃と違いマルティンたちの持つ重は銃弾は躱そうとする巨体に当たっても貫通せず武装は心もとないが、勝てないという絶望感はなかった。

 銀色の像はいくつもの手足を失い、動きも作りの粗いクレイアニメのような粗い粗雑な動きをしている。

 銀色の像は銃を撃つものを優先して狙う様で、落ち着いて狙いをつけているグリフィンは狙われずそして銃撃をやめ反対側にいるグループが攻撃を始めると振り返りそちらの方を向いて襲い掛かっていっていた。


「い、意外と単純なやつだな!」

「鬼さんこちら手の鳴る方へってか?」


 腕を地面に伸ばし木の根をちぎりながら地面を抉り泥を飛ばす。

 銃を撃つのをやめ目に入らないように木の影に隠れたり両腕で防御し泥を浴びる。

 気が付けば周囲の靄が強くなっており銃座のついたオートマトンの残骸も見えなくなっていた。


「周りが……、どこがどこだかわからなくなるなマルティン」

「そうだね、登山道からも離れて戦ってるしうっかり足を踏み外して滑落しないようにしないとね」


 赤い人形が迫ってきていることもありその場にとどまっていられず移動し続ける必要もあり、逃げている最中にも何度か足を掴まれ誰かが転倒する。


「あー、もう鬱陶しいな」


 気が付けば一人また一人とたらりと鼻から血を流しだす。

 皆それを鬱陶しそうに袖で拭い銃を撃ち続ける。


「血止まんない、頭くらくらする」

「みんな同時に? 偶然じゃないよな、あいつが原因か?」


 銀色の像が背を向けた瞬間、グリフィンがロケットを撃ち放つ。

 ロケットは真っすぐ飛んでいき頭へと吸い込まれていく。

 刹那像の首が回転し長い腕が飛来するロケットを掴もうとする。

 体深くに響く轟音。


「外したかぁ」


 至近距離で受けた轟音に耳がやられ音が遠のき、かすかにグリフィンの悔しそうな声が聞こえた。

 腕を失い大きな頭を支えられずバランスを崩して倒れうねうねと動く。


「誰か手榴弾か何か持ってないか!」


 持ってるぞと何人かが立ち上がるのに手間取る像に向かって投げる。

 小さな爆発を起こし銀色の体に大きな穴を開けた。

 それでもふらふらと起き上がりドスドスと足をじたばたさせてゆっくりとだが同じように銃を向ける誰かに向かって歩き出す。


「戻るか? 重機関銃がもしかしたらまだ使えるかもしれない」

「だがあの赤い奴が来てるぞ」


 弾切れになった筒を捨ててグリフィンはキュリルからバットを借りて銀色の像へと近寄っていく。

 ベニユキが木の根に躓き転び何かに頭をぶつける。

 ふと見れば人が倒れていて周囲を見渡し場同じ様な服装の人たちが倒れていた。


「ここは……」


 ベニユキが立ち上がり足元を見れば空の弾倉。

 辺りを見回せばいくつもの銃や弾薬が転がっていた。

 最初に別れて山を下りていたブラットフォードたちが怪物と戦っていた場所。

 そこには当然彼女らが所持していた様々な銃と弾倉が転がっており、当然彼女らの誰かが所持していた転がる円筒状の物も転がっている。

 対戦車兵器のロケットの替え。


「グリフィン!」


 ベニユキは駆け寄りそれを手にするとグリフィンへと向かって投げた。

 投げられた発射体を拾いに行くキュリルはそれをグリフィンに手渡し拾ってきたロケットを装填する。

 撃ち込まれたロケットはグネグネと動く細い胴体に着弾し眩い閃光を放って爆発し周囲の落ち葉を巻き上げ暴れ狂う銀色の像を半分にした。


「やった!」


 重たい音ともに銀色の体が地面に落ちる。

 像の中は空洞で落ちた体は動かないが頭がうねうねと大きな三つの穴を動かし表情を目まぐるしく変えていた。


「早く壊せよ、こんな気持ち悪いの」

「ああ、今やるところだ」


 近くからウーノンが別のロケットを拾ってきて駆け寄りグリフィンに渡す。

 発射されたロケットが銀色の像の頭を砕くとゴォォンと音を響かせ山々を反響し周囲を包んでいた白い靄が晴れていく。

 空の雲も消え青空が戻ったところで赤い人形が動きを止め、支えを失ったようにバタバタとドミノ倒しのように倒れていった。


「やっと終わったのか」


 辺りが明るくなり見通しが利くようになって周囲に動くものはないことを確認すると、皆武器を降ろし近くに浮かぶ箱舟の出入り口を見上げる。

 オートマトンの残骸に囲まれた位置に何事もなかったように箱舟のエレベーターが降りてきた。


「見渡す限り金属だらけだな……」

「何なんだよこいつら」


 戦った後を見渡していると空に浮かぶ箱舟からのアナウンスが流れてくる。


『皆様お疲れ様でした、お早くお集まりください。他の怪物たちがこちらへと向かっております。こちらがお願いした分の量と思われる量の金属を確認しております回収はこちらに任せ皆さまはお休みください』


 それを聞き、皆が足早にエレベーターへと乗り込んだ。


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