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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
1章 --永久を繰り返すアルカアンヘル--
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悪臭放つ大地 1


 外は湿度が高く蒸し暑かった。

 そして、ベニユキたちは鼻の奥に刺さる痛みに30名がほぼ同時に鼻を押さえる。


「あっつ……あぐぅ!?」

「むわッとしますね……うっ!」

「あぅ、何これゴミ溜めみたいな……」

「ひどいにおい!! 鼻が、もげる!」

「口で、呼吸を」


 外に出るとエレベーターは降下する速度を落として行き、静かに平らな地面にぶつかって止まった。

 空気に乗って漂う異臭に皆が鼻を押さえ苦しむ中、ミカは説明を始めた。


『……皆さま、到着したしました。煉獄腐肉の世界、この空気に毒性はありません。それではMく票の回収をお願いいたします。目的のものは武器の製造データが保管されている記録媒体。位置は箱舟で把握しており現在位置を確認できています、皆さまが手にしている銃で案内をさせますね』


 悪臭に苦悶の表情を浮かべながらも、太陽の光を拝めたことに喜び安堵する声を聴きながらベニユキは周囲を見回す。

 降り立った場所は施設の駐車場と思われる広い場所。


「鼻が痛い、何ですこの匂い」

「ああ、ヘドロ、ごみ溜めの中のようなきつい匂いだ。ごみ処理場か?」


 武骨で巨大なトレーラーが何台も止まり、その荷物であろう巨大な鉄の鉄のコンテナが積み重なるように置かれベニユキたちの周囲の視界を遮っている。

 不思議なのはその駐車場に一般の乗用車と思われるものや大型の観光用バス、緊急車両のようなものまでとまっていること。

 エレオノーラがベニユキの袖を引く。


「どこの国でしょう? この蒸し暑さ、夏なんでしょうかね?」

「どこか調べれば文字があるはず、それでどこの国なのかを考えよう。日付も、俺たちが誘拐されて何日たっているかも気になる……いや、そもそもいつ連れ攫われたのかわからないか」


「本当に逃げようと思えば逃げられそうですね」

「でもあの女の言う通りなら二度と記憶は取り戻せないな。俺は困る、家族や友人を思い出せないのは」


「ですね……私も頑張ります……。怖いですけど」


 エレベーターの周囲を囲っていた手すりが四方に倒れるとどの方角からも降りられるようになった。

すぐに何人かがエレベーターから折りて武器を構えて歩き出す。


 上を見れば長い鎖が高い位置まで伸び、ある程度の高さでその鎖は宙に浮いた謎の6角形のゲートへと飲み込まれ消えている。


「何だあれ、空飛ぶ円盤? 俺らはどこから来たんだ?」

「もっと広かったはずです。でもあれはエレベーターの幅分しかない大きさ、おかしいですよね?」


「俺らは宇宙人にでも誘拐されたのか?」

「怖いこと言わないで」


 ベニユキたちの持つ白い拳銃の銃口が緑色に点滅するようになる。


『向きが違っていれば点滅、目標の物に向いていれば常時点灯させます。ご確認のため皆さま銃を地下へとむけてください』


 銃を下に向けると緑色の点滅が早くなったり遅くなったりし、一点で常に光り続けるようになる。

 常時転倒する銃口は地面の下を示していた。


「この位置か、つってもここからじゃ地面しか見えないし目的地は地下。まずどこから地下へ向かえばいいんだ?」

「地下のどれくらいの場所にあるんですかね? 10m? 500m?」


 目標物があるであろう大まかな方向を見るにどこかの施設のど真ん中を刺している。

 見つかれば戦闘や揉め事は避けられないと思ってか、皆バットや銃を強く握りしめて歩き出す。

 ベニユキたちも他の者たちに連れられて移動しようとしたところその肩を叩かれる。


「なぁ、ちょっといいかな?」

「ん?」


 声をかけられベニユキが振り返れば、先ほどミカに質問をしていた赤髪で糸目の男性の姿。


「これから知らない施設に潜入? するだろ。とりあえずまとまって行動した方がいいと思うんだ。あのホログラムの女も言っていたグループで行動するってやつ」

「ああ、俺もなるべく人が多いほうがいいって思ってた」


「僕はマルティン。僕と後2人、もう声をかけて一緒に行動するつもりなんだが、一緒にどうだ?」

「俺はいいけど、どうするエレオノーラ?」


 エレオノーラは即座に頷く。


「わ、私もいいと思います。何が何だかわからないし、みんなで助け合った方が!」

「ならよろしく。俺はベニユキ、一緒にいるのが」


 紹介を受けてエレオノーラが頭を下げた。


「え、エレオノーラです、よろしくお願いします!」


 二人は了承を経て機嫌よく鼻歌を歌うマルティンに案内され移動する。

 短い金髪の男性と黒髪で右のもみあげだけ白髪な女性がまっていた。


「みんな、後2人確保した。他のやつは行っちまったか、とりあえずこの5人で施設に入ろう。二人はベニユキさんとエレオノーラさんです」

「……ウーノンだよろしくな」

「テンメイです。こんなの嫌だけど、なにも思い出せないのも嫌なんで」


 エレオノーラはテンメイと握手を交わし五人は歩き出す。


「銃、撃ち方はわかる?」

「ここを引けばいいんですよね? 何となくなら」


「そうそう、なんかこの銃セーフティがないから引き金を引くだけで撃てるみたい。デザインもなんか玩具みたいだけど。危なっかしいポケットに手を入れて引き金に指が当たって誤射とかしたらどうするんだ」

「ここを引くだけでいいんですね、すみません映画とかしか見たっことなくって」


「仕方ないよ、実銃を撃つ機会の方が珍しいからね。狙って撃つそれだけだけど、だから誤って味方を撃たないようにね」

「はい」


 敵におびえながらテンメイとエレオノーラは話ながら戦闘を歩くベニユキらの後に続く。

 ウーノンは周囲を確認しながら歩き、マルティンとベニユキは皆の先頭を進んでいた。


 駐車場を少し進み大型車両とコンテナの壁を抜け先に何かの施設のような大きな建物が見えてくる。

 建物はコンクリート造りで頑丈そうで入口の周囲には軍隊が使うような銃のついた車両が止まっていた。


「人の気配がないな、ここは無人なのか?」

「車とかも荒れ放題だし、砂まみれ。とても人が居るって感じではないけど。危険ってのは野盗とか獣とかそういう類なのか?」


 同じ服を着た者らが先を歩く姿が見える。

 彼らも何人かで固まって大きな建物へと向かって歩いていて、ベニユキたちはその後を追うように進む。


「先に言った連中だ、彼らにも声をかけるのか?」

「戦力は多い方がいいとは思うけど、……彼らには悪いけど様子見になってもらいたい」


「性格が悪いな」

「どんなところかもわからないし、少なくとも僕は記憶を失う前は軍人とかの類ではないと思ってるからね。自分の身が大事だ、死にたくはない。僕らは助かるための情報が必要なんだよ」


「冗談だ、俺もあんたに声をかけられなかったら同じようにしてたさ。命は一つしかないからな、漫画の主人公みたいに犠牲上等なんて覚悟もない、どこにでもいる凡人だ」

「僕もさ、こんな凡人を集めて何をさせたいのやら」


「先行った連中、建物の前までついたな戦ってる音は聞こえないし安全ってことか」

「そういえば前を歩く人の数が少ない、他の人たちが見えないけどどこへ行ったのだろう? 他に建物の入口なんてあったか?」


 ベニユキたちが話ながら歩いていると、前を進む者たちは中に入るか迷っているようで建物の前に止められた2台の戦闘車両の周りで立ち止まっていた。

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