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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
1章 --永久を繰り返すアルカアンヘル--
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めぐる箱舟 6 終

 睡眠カプセルの中で見る、白く靄のかかる夢の世界。


 どこか懐かしさを感じる部屋の中テーブルの上に散らばる書類を片付け、いつもの動作でお湯を沸かしながら棚から缶詰を取り出しそれを猫の餌用の皿に移す。

 沸かしたお湯で珈琲を二つ用意すると一つを持ってソファーに腰掛けた。

 記憶の中の過去の自分のようで意識せずに行動に移る。


「おはようユキ」


 珈琲を口にしていると耳馴染みの声が響く。

 プラチナブロンドの女性が白い猫を連れ奥の部屋からまだ眠そうにヨタヨタと歩いてくる。

 そしてもう一つのカップを持って目の下に隈を作り疲れた顔をした彼女は連れ添う猫を抱えてソファーに座るベニユキにもたれかかった。


「ユキ、ニュース見た?」

「ああ、世界のあちこちで連続テロがどうのってのが毎日やってるな物騒な話だ」


「そうそれ、連続する四件とも私の働くところの子会社なんだ。犯人もまだ捕まっていないし怖いよ」

「送り迎えならできるけど?」


「お願いできる? とはいっても、今までの四回は誰かを狙ったものでなく建物を狙って起きてるから移動中は関係ないと思うのだけど、それだけでもだいぶ助かる。ユキとも長い時間いられるしね」

「なら送るよ、こっちの分の移動時間もあるし早く着くけどいいか?」


「早い分には問題ないよ」


 2人は珈琲を飲み干し猫に餌を与えると家を出て、白い自家用車に乗り込み町を走らせる。


 まだ日の上らない蜘蛛が桜色に染まる朝焼けの空、切り整えられた街路樹の下に生える色とりどりの植込みの花々、ヘッドライトとテールライトの明かりがが尾を引いて流れる交通量の多い片側四車線の広い道路。

 ぽつりぽつりと部屋に明かりのついた天高く伸びるビル群の間を鳥が飛ぶ。


「さっきの話、テロリストは元軍人の傭兵だったらしいね。うちの会社で作っている何かを探してるのかな」

「うちの警備会社に依頼がくればいいんだけどな」


「あはは、流石にテロ組織とは戦えないでしょ。向こうは戦闘の専門家だよ」

「そうだけど、お前が危ないってのに知らんぷりもできないし」


 ビル群のの皿に上空にはドーム状の透明な天井がある。

 助手席でタブレットでメールを読み返信を打ちながら彼女は口を開く。


「うちの研究所が狙われてるって決まったわけでもないし。この国は銃に厳しいしいろんな技術を研究する子会社も多いし、そうそう狙われるとも思わない。考えすぎだよ」

「だといいけど。狙われているというのなら心配はする」


「それに私の働くの本社も他の大きな支部も、専門の警備業者を雇ってるし連日の事件を受けて予算と装備を強化するって話も聞いた。変な人が居ればすぐに捕まると思うよ」

「そいつらがテロリストの仲間ってオチは無いか?」


「それはさすがに考えすぎじゃない? わからないけど、それはないんじゃないかな。共通点は元軍人の外国人ってだけだよ? テロリストは犯行声明も出してるし、見るからにやばい人たち。世界統一だって、馬鹿げてると思わない?」

「今時、映画やゲームのボスだって言わない時代なのにな」


 道をまっすぐ進んでいると周囲から高い建物が消え、街路樹ではなくどこまでも青々と茂る木々が生える自然に包まれた自然公園へとでた。

 車の向かう先、透明なドームの中央部分にある巨大な建物を中心にいくつもの建物が並ぶ施設が見えてくる。


「私の担当する人工知能のほかに時間旅行や瞬間移動、空間転移、人体の記憶転写や培養臓器、人体の複製、最近じゃ高負荷のかかる過酷な惑星の強行探査用の義体と並行世界の観測なんてことにも手を出し始めて、働いている私も部署が増えすぎてどこで何の研究をしてるか分からないんだけどね」

「土地開発、食料生産、宇宙開発、人道支援、自然保護となんでも行う世界最大の複合企業」


「その技術は兵器に使われている。より上へどこまでも上へ幸せを目指して進んでいるはずなのに、足元が壊されていく感じで悲しいよ」

「かなしいな」


 人工的な堀のような川を渡るとその先には大きな壁と検問。

 連日の騒ぎで警備は厳重となっていて、検問の前にも防弾装備と大型のゴム弾銃を持った警備員と地面に折りたたんでしまえるタイプの車止めがせりあがっていた。


「ありがとうユキ、ここまでで」

「また帰り迎えに来ればいいんだよな?」


 検問の前で速度を落とし車を停車させると、タブレットをしまいシートベルトを外し彼女は荷物を持って車のドアを開ける。


「ああ、よろしく。また夜に」


 そういって彼女は車から降り手を振って去っていった。


 その姿を見届けている最中に夢が覚める。


「夢か、もどかしいな」


 ポツリと呟くとベニユキは睡眠カプセルからでて、いつもと同じように服を着てエレオノーラたちとともに礼拝所へと向かう。

 礼拝所の奥にある舞台の上でホログラムの女性が頭を下げる。


『皆様おはようございます、本日もお願いいたします。初めましての方もいますし、拡張された施設の話も致します。落ち着いて近くの席についてください。まずはこの施設について話をしましょう』


一章終了とともに、一時終了です。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


誤字脱字の修正と書きながら考えていたので矛盾やあやふやな細部のストーリーの修正をし、次章の書き溜めなので一か月後に再開を予定しています。

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