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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
1章 --永久を繰り返すアルカアンヘル--
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生き抜くために戦う 5

 床を這うような煙の奥でラジコンの放つ発砲炎だけがオレンジ色に光り、ベニユキたちのそばを弾丸が霞める。


「逃げ隠れて分断されてしまいました。テンメイ、みんな大丈夫でしょうか」

「初日と一緒になったか」


「初日? ああ、私が死んだっていう……」

「あの時は俺の指示が間違っていた……」


「記憶がないので何とも、私はどんな人でした?」

「今と一緒だよ、怖いと思いながらも他の人の心配する。優しい感じの」


「あ、やめえください。聞いててなんかくすぐったいです」


 土煙の奥の光る方向に向けてベニユキが散弾銃を撃つがラジコンの銃撃は止まらない。

 戦闘の合間に建物の外からの砲撃音が響くが建物が揺れることはなかった。

 建物の外に出ようと駆け抜けてきたラジコンを破壊する。


「こっちじゃない?」

「グリフィンたちが来てくれたのかもな」


「なら大丈夫でしょうか?」

「あっちも持ってる武器は一緒だ、戦車には通じないことに変わりはない」


「どうするんでしょう?」

「グリフィンがいる、何とかしてくれることを祈ろう」


 銃声と砲撃音が交互に響く。

 ラジコンのモーター音も聞こえベニユキとエレオノーラは恐る恐る場所を移動し外の見える場所を探す。

 空気を震わす爆発音が連続し、連続する銃声の後に一際大きな音が響きその後に静寂が戻る。

 顔をのぞかせると戦車のそばにキュリルが立つのが見えた。


「破壊したのか?」

「はい、沈黙しましたグリフィン」


 車体の側面の大きなへこみがある戦車。

 キュリルを迎えに行くグリフィンとアインの姿が見えてベニユキも建物を出る。

 突然大量の火花を吹き始めキュリルは慌てて戦車から離れた。


「伏せろ!」


 弾薬庫に誘爆し戦車が車体の前後と砲塔の三つに砕ける。

 壊れたラジコンが灰色の煙を上げていて、テオが銃床で叩き完全に破壊した。

 脅威は無くなり建物の上に逃げたマルティンたちも階段を下りてきてグリフィンの方へと向かう。

 地面に伏せて汚れた場所を払うキュリルにエレオノーラが駆け寄る。


「すごいです、キュリル!」

「なんか、壊せた」


 エレオノーラを追いかけキュリルのもとへと向かい黒煙を上げる戦車を見るベニユキ。


「どうやった?」

「近づいてバーンって殴った」


「何だよそれ?」

「だからバーンって」


 白い銃を構えてグリフィンとアインが戦車の残骸に近づいていくと吹き飛んだ装甲の破片の一つに近寄った。


「この白い銃で呼んだが、あのオートマトンとやらがここまでくるのだろうか」

「あれも黒煙を吐き出す。遠目なら敵と間違えそうだな」


 グリフィンは足で飛び散った装甲の破片を転がす。


「さて装甲が薄いな、見た目ほどの重さを感じない軽金属かなにかか」

「それでもさすがに銃では歯は立たないようだが」


「無人か?」

「そのようだ、炎にまかれて近づけないがここからは人が入るスペースが見られない。無人機のようだ」


 まだ激しく燃え時折、炎の中で銃弾がはじける残骸にベニユキも近寄る。

 ベニユキの接近に振り返るグリフィン。


「被害は?」

「ない、皆無傷だ」


「よく戦車を倒したな、小さいとはいえ」

「向こうの照準が甘く攻撃の合図もわかりやすかった。キュリル君の持つバット、あれが我々の持つ最大の攻撃力があるわけだが」


「あのバットか」

「あれでダメならどうしようもないということで、我々で注意を引いて彼女に近づいてもらった」


「勇気があるな。昨日は運が悪かった」

「そうだな、彼女は初日から優秀だった。砲塔と機銃はこちらを向けて引き付けたが、そのさいこの戦車は軋みを上げていた動きもぎこちなかった。どこか壊れかけのような感じだった」


 ベニユキとグリフィンが話していると遠くで重たい音が響く。

 同時に渇いた破裂音が連続して聞こえてくる。


「他のとこでも戦いが始まったようだ」

「助けに行くか?」


「そうだな、キュリル君が嫌でなければ今と同じ作戦でこちらで注意をひきつけ殴り壊してもらおう」


 湖の対岸で土煙が上がるのが見え、その近くに同じような戦車が動いているのが見えた。

 マルティンたちが集まって移動を始めようとするとエンジン音が聞こえてくる丘を越えて2両の戦車が現れ機銃を放つ。

 機銃の弾丸は激しくばらけ慌てて皆は建物の影に避難する。


「集まってきたか、まだ近くにいたんだな」

「さび付いているのが2つ、動かないだろうと思っていた。先の一台がやられて動き出したのか、情報の共有でも行っているのだろうか?」


「どうする、あの子が戦いやすいように気を引かなきゃいけないんだろ?」

「キュリル君が命を懸けてるんだ、こちらも覚悟を決めるだけだよ」


 瓦礫の向こうで戦車が搭載したラジコンを地面におろす音と動き出した複数のモーター音が聞こえてきてベニユキが散弾銃を構える。


「来るぞ、ラジコンが」

「そちらの対処は任せる。キュリル君飛び出す準備を。さて、俺もいつまでも口だけとも行くまい。援護しよう、せっかく若返ったわけだしな。さて」


 姿勢を低くし走り出すキュリルと建物の影から飛び出すグリフィン。

 軋みを上げる2両の戦車の砲塔がグリフィンを追って動き出す。


「グリフィン!」


 瓦礫の影から抜け出し走るグリフィンに向かって発砲するラジコンを破壊するベニユキ。

 それに合わせてウーノンやアインたちもラジコンへと向かって発砲し、地面を跳ねるように走るラジコンの注意をひきつけ破壊する。


「俺らもあの戦車の気を引くしかないようだ!」


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