生き抜くために戦う 3
白い機関銃、黒い機関銃、茶色い突撃銃の他、新しく増えた茶色の狙撃銃と茶色の散弾銃。
「昨日持ち帰った白い銃も増えているな。新しい銃弾も並んでこのまま増えると、どれがどれだかわからなくなりそうだ」
「でも、これからは武器や兵器を見つけたら積極的に持ち帰るのがいいかもね。昨日のような怪物と戦うにはここにある武器でも心もとない」
「そうだな、余裕があったら鉄以外に武器も探そう」
「手榴弾か、どうする?」
「誤爆が怖いから僕は持っていきたくはないね」
「破壊力がどれほどか知らないけど、隠れて投げればいいから魅力的ではあるんだよな」
巨大生物相手に苦戦したことから、ベニユキはより強力で威力のありそうな散弾銃を手に取る。
隣りで同じように武器に手を伸ばすエレオノーラ。
「これ強そうです」
茶色い狙撃銃を取り片腕で抱えながら弾倉に手を伸ばす。
ポーチに弾倉や水を詰め込み準備を進める。
「あ、重い……」
「今日は頼むぞエレオノーラ」
「は、はい。戦います!」
「エレオノーラにその銃は難しいんじゃないか?」
忘れずに白い拳銃を手に取りそれぞれが準備されていた武器を持つと舞台の上に上がる。
皆がエレベーターのある舞台に上に上ると、エレベーターはゆっくりと降下を始めた。
「この上乗ると、胃が痛くなるんだよなぁ」
「トラウマですものね」
今までを続けて死んでしまったかあるいは誰かと入れ替わりにやってきてこれから何が起こるかわかっておらず戸惑う者たち。
また恐ろしい目に合うのかと顔色の悪いブラットフォードたち。
二回を生き残りどうやって自分たちが生き残るかを考えるマルティンやグリフィンたちと表情はそれぞれ分かれエレベーターの到着を待つ。
『本日皆様が向かう世界は、老朽地獄の世界。この世界にはいくつもの人工物が見えます。しかしどれも大きく破損し機能は失っているようです。……今偵察そしていたドローンが、地下で膨大な熱と大きな振動を検知しました』
ミカの説明を聞いて手にした武器をぐっと握るエレオノーラ。
「じごく……」
ベニユキはため息をつく。
「前の二つも地獄だったよ」
今までと同じようにエレベーターの中央にミカが現れ世界の様子を映す。
焼け焦げた町、白く朽ちた森、くすんだ虹色に光る油の浮いた大きな湖。
そして積み重なる戦車などの兵器の残骸。
「見た感じだと鉄には困らなさそうだな」
「何がこうしたのか気になるけどね」
「今更だけど、敵の情報がないよな」
「意図的だろうね、あんなに目立つ昨日の鳥みたいなやつが写らないはずがないもの」
「わざとか、いったい何をさせたいんだ……」
「従うしかない、今は」
エレベーターが外へと出る。
外の光は薄暗く大きな倉庫の中。
片付けられていてがらんとした屋内で何人かで集まってエレベーターを降り恐る恐る周囲に散らばっていく。
「屋内? 今までと違うね」
「だな、なんでこんなんところに?」
ベニユキたちが周囲の様子を見ているとエレベーターの空中に浮かぶ竪穴から燃料回収の時と同じオートマトンが降りてくる。
『こちらで金属の回収をします。見つけたら信号を送ってください』
その後はミカは沈黙しそれぞれ自分の考えでが動き出す。
散らばっていく者らの背を見てベニユキがマルティンに尋ねた。
「結局みんなで固まっていかないのか?」
「他の人とも話したけど人が密集しちゃって味方を撃ったって話も聞いたし、なるべく少ない人数で行動した方がいいのかなって。協力しようって話は流れた」
「ふぅん、まぁそういわれると何にも言えないな。今日も危険に震えて頑張りますか」
「人が多い方が火力を集中できるからって利点もわかるけどね。それは統率があってだから」
マルティンたちとグリフィンたちが車両が通れそうなほどの大きな扉を開け外へと出る。
白っぽく霞んだ空に大きな雲が浮かぶ。
同じような倉庫が並び奥に光を受けてキラキラと光る波が見える。
「船を探しましょう」
「そうだな、見た感じ車もないし家の中から使えるものを探そうにも崩れちまってるしな」
周囲を警戒しながら歩き倉庫街を抜け砲撃の後のような跡が残る町が見える港町へと出た。
「船が……ないです」
「町も派手に吹き飛ばされているし沈んじまったのかもな?」
港に停泊する船がないかを調べるが一隻も停泊しておらず、エレオノーラとベニユキががっかりしているとテンメイが浮かぶ油で濁った水を見て呟く。
「ここさっき見た画像にあった湖じゃない? うわ……、変な臭いする」
「魚がいっぱい浮いてるね、水はだいぶ汚染されてるみたいだね」
「船もないし離れよ、この臭い気分悪くなってくる」
「そうだね、水辺から突然ガブッてこられても困るし」
「確かに」
倉庫街を抜けた場所から少し進んだところに町が見える。
大きく破壊され形を保っている建造物は数えるほど、残りはすべて倒壊し瓦礫の山になっていた。
鉄も見つからず敵の姿も見えずグリフィンがテオたち連れてマルティンとベニユキの方へと歩いてくる。
「手分けをしよう。思った以上に目的の金属が見つからない、敵の姿もだ。しかしここに階の子と思うと安全な場所だとは思えない。他に散らばった誰かが敵と接触した場合こちらにもなだれ込んでくる可能性がある、そうなる前にできるだけ多く見つけておきたい。どうせ目標量を手に入れるまで帰還することは許されないだろうからな」
「何が出てくるかわかるまでは一緒に行動したかったけど、確かにここまで何もないと埒があかないか」
「俺たちは向こうの丘を目指す、高いところから見渡せば何か見つかるだろう」
「わかった、気を付けて。でもできれば俺らからあまり離れず何かあった時すぐに援護に行けるようにしてもらいたいのだけど」
「心がけるよ。そっちこそ助けが欲しいのならこちらの目の届かない場所まで行かないように注意してほしい」
「連絡できる無線機みたいなのが欲しいところだ」
「見かけたら持ち帰るとしよう」
「頼むよ、こっちも探すから」
丘の上へと向かったグリフィンたちと別れマルティンたちは瓦礫に変わった町を進む。
街路樹や植え込みの小さな木々は白く骨のような色をして立ち枯れている。
砲撃の跡が大きく残り煤焦げた匂いが立ち込めベニユキたちは割れた道路を歩んだ。
「なんか建物の壁が上からたら~って白っぽく変色してますね」
「エレオノーラ、上ばっか見てると不発弾踏むよ。なんかそこら中に落ちてるし」
「え、これ爆発するんですか!?」
「知らない、大砲の弾って爆発する弾なんじゃないの?」
話を聞いていたマルティンが答える。
「徹甲弾とか炸薬がない砲弾もあるけど、知識がないから見ただけじゃなんとも。とりあえず離れていた方がいいね、どんな刺激で爆発するかわからないし」




