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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
1章 --永久を繰り返すアルカアンヘル--
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天を目指す植物群 6

 遠くに木が生えた以外に変わったこともなく、音も振動も木の出現とともにおさまった。

 皆が休みながらオートマトンの作業を見ていると、しばらくしてオートマトンから何かを吸い取る音が聞こえ始める。

 音は上に乗ったオートマトンへと溜まっていく音に変わっていき、細長い円筒型の金属の容器に包まれ吐き出され横で待機しているオートマトンの荷台へと転がりでた。


「何だあれ?」


 さぁと首をかしげるマルティンとともにオートマトンへと近寄る。

 オートマトンから吐き出された円柱状にされた何か、サイズ的に小さなドラム缶のようなそれに興味を持ったグリフィンやテンメイも近寄って来た。


「なんだろう、何かを吸い上げていたようだけど何だけどさっぱり」

「燃料がどうのって言っていたよね。これがそれなの? これっぽっちをとりに?」


 そうこう話しているうちに2個目がゴロンと飛び出てくる。


「この様子だとまだまだ出てくるようだな?」

「この荷台一杯って結構時間かかりそう、うそでしょ……早く帰りたいのに」


 その後もゴロゴロと円柱状の塊が出てきて横で待機するオートマトンの上に集められていく。

 オートマトンが塊を作っている間、見通しの利く場所で周囲にこちらに敵意のありそうな怪物がいないかを警戒していた。


「空気はきれいなんだ、景色も」

「これだけいっぱい緑があればね。風が吹けばそうでもないけど少し蒸し暑さもあるよね」


「ジャングル、とはまた別の感じだよね」

「私らが小さくなったみたいだ、あんな生き物は知らないけど」


「ここはどこなんだろうね、昨日の場所とは別なんだろうか?」

「でしょ、どうせ戦わなきゃいけないんだったら昨日のあの人型の化け物のほうのがまし。あんな怪物が出てくるなんて聞いてない、足も汚れたし。戻ってもシャワーに入れないのに」


 テンメイとマルティンは銃を抱えて、オートマトンの作業が終わるのを待っている。

 そんな時に再び聞こえてきた細い金属がぶつかるような音。


「さっきも聞こえたな何の音だ?」


 音に皆が顔を上げる前に頭上に極彩色の羽根を持つ大きな怪鳥が飛来した。


「何あれ!?」


 羽を広げれば小型の飛行機ほどあるような大きさの鮮やかな鳥。

 獲物を捕らえるために低空を飛翔し上を飛ぶだけでも巻き起こる暴風に誰の声もかき消され、テンメイが風にあおられよろけ倒れる。


 銃を構えようにも突発的に巻き起こる強風が体ごと銃身をぶらせ、よろけてあらぬ方法に銃弾が飛んでいく。

 それでも皆で撃てば誰かの攻撃は当たる、大きな体に銃弾が数発当たったところで鳥は身をひるがえし距離をとり少しひるむだけで死なない。


「体が、吹き飛ばされる!!」

「何かに掴まれ!」


 鳴き声か銃声を聞きつけ上からさらに数羽が、金属のぶつかるような鳴き声を上げて枝葉の天井をかき分け舞い降りてくる。

 複数羽が舞い降りてきてから風の方向が複雑になり、荒れ狂う暴風がバランスを崩したキュリルを襲い彼女の体がふわりと浮かび上がった。


 地面を掴もうにも風に揉まれ旋風に舞う木の葉の様に舞い上がると、彼女が浮き上がったのを見て飛んできた頭上を旋回する怪鳥に掴まる。

 彼女を太い足で掴んだ怪鳥は鳴き声を上げそのまま飛び去っていく。


「そんな……」


 マルティンやテンメイが建物の瓦礫の影に逃げ込み、他の皆も建物の瓦礫のそばに逃げようと張って移動を始めた。

 割れた石片などが風に舞い建物の外壁や作業中のオートマトンにぶつかる。

 鉄板にめり込んだ石を見て木の根に掴まり、飛ばされ無いように抵抗するベニユキが叫ぶ。


「こんなの自分の立っているのもままならない!?」


 片手で木の根や建物の壁を掴み、もう片方で銃を構えようとするが風に腕が振られる。

 誰も怪鳥を撃ち落とすことができない中、黒い機関銃を持ったウーノンが何とか崩れた瓦礫の窪みに身を固定し引き金を引く。


「なら座って撃てばいいだろ!」


 ばら撒かれる弾丸がたまたますぐそばまで接近していた一羽に命中し、悠々と飛んでいた怪鳥の一匹はバランスを崩し地に落とす。

 地面に落とされ起き上がるとそこにグリフィンとベニユキ、マルティンからの斉射。

 仲間が殺されたことで怪鳥たちは一気に高度をとりその場から離れていく。


「いなくなった?」

「ああ、終わったようだね。助かったよウーノン。痛たた、背中に石が当たって痛む」


 幹の間を縫い遠くへと逃げていく怪鳥の小さな影に向かって銃を撃ち続けるテンメイ。

 その間もオートマトンはガコンと新たな塊を生み出している。


「また、人が一人……」


 エレオノーラがキュリルの連れ去られていった方角を見て悲しそうな声を上げた。

 倒した極彩色の怪鳥の血の匂いにさっそく数匹の羽虫が寄ってきて流れ出る血を啜り始める。

 困難するマルティンとテンメイ。


「あんなのが何度も来たら全滅ものだぞ? もうなんだよここ、あんなのがいるなんて聞いてない!」

「ここ、昨日の場所とは別の場所だろどうなってるんだ? 俺らが攫われてから世界はどうなっちまったんだ」

「あの鳥もこの機械には興味を示さなかったから、俺らだけが隠れていれば避けられそうだ」


「もうあの機械は放っておいても大丈夫なんじゃないか?」

「そうは言っても、あのAIが非協力的だとみなしたら俺らはこの世界に置いて行かれるかもしれないんだぞ?」

「人が減り出てくる怪物の大きさは飛行機サイズと来た、辛いな」


 オートマトンが吐き出す排気ガスに羽虫が寄ってくる。

 テオがキュリルが落としたバットを拾い上げ虫に向かってスイングすると、体液をまき散らして砕け散った。


「アインもキュリルも死んじまったか、せっかく昨日生き残ったてのによぉ……」


 バットを握りなおしテオは飛び出している木の根の上に腰を下ろす。

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