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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
1章 --永久を繰り返すアルカアンヘル--
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ようこそ、箱舟へ 2

 小声で会話していても音が吸われていくような高く広い空間を見渡しベニユキが感想を漏らす。


「映画館みたいな場所だな、スクリーンはないみたいだけど奥は一段高くなっているな、奥には何があるんだ?」

「なんかみんな身長同じくらいですね、気のせい?」


「そういわれれば男女の背の違いはあるが、男は男で背の高さが均一なようなそんな気もするな?」

「あとみんな大人ではあれど若い人が多い感じ? 子供やお年寄りがいない感じです」


「そういう条件で集められたのかもな、歳も思い出せないから何ともだけど」

「私もです」


 ベニユキたちは長椅子の間を進み人が集まっている奥へと進む。

 途中に閉ざされた扉が左右に一つずつあり、何人かが押したり引いたりして開けようとしていた。

 大半は彼らの行動を通目に見ながら長椅子に座って何かが起こるのを待っている。


「この人たちみんな私たちと同じ状態なんでしょうか?」

「服装と反応を見るとそんな感じだよな、早いところ俺らを誘拐したやつに会いたいもんだ」


「私は会いたくないです、だって何かが始まるってことでしょ? 絶対いいことではないはずです」

「まぁそうか、でもいつまでもここに閉じ込められていたくはないんだけどな」


 広い空間には合計で30名ほど集められていて、彼らは不安そうに周囲を調べ広場の隅々まで見て回っていた。


「突然殺されたりしませんよね?」

「普通に殺すならもう死んでるだろうな。大掛かりな建物まで作ってこれだけ大勢集めた、ここまでしてるんだ普通に殺す気がないか他に別の用があるかだ」


 ベニユキらは部屋の中央の通路を歩き段差の前までやってくる。

 椅子の並ぶ部屋の奥には数段の階段があり、人の腰辺りの高さまでの一段の段差。

 その段差の周囲は手すりで囲われていた。


「あの前に見えるのは、舞台……演説台の様ですよね?」

「そうか? なんかあの場所、四隅を鎖で連れられてないか」


「上は天井っぽいですね……ならこれは下に降りていく?」

「下に通じる階段はなかった、だとしたらあれが出入り口か? どういう構造の建物なんだ」


 近づかないがその場で段差の上を覗くエレオノーラ。


「気になるなら上に上がってみるか?」

「やめておきます、あなたも行かないでくださいね」


「まぁ、死にたくはないしな」


 舞台がよく見える前列の長椅子に腰掛ける二人。


「ほんとにいろんな人が居ますね、みんな連れてこられたんでしょうか?」

「この中に俺たちを連れ去ったやつがいるってか?」


 遅れてよく似た顔の女性二人がベニユキたちのいる礼拝堂のようなところへとやってくると入口の扉が自動で閉まる。

 扉の閉まる大きな音に室内は静まり返った。

 最後に入ってきた二人が必死で扉を開けようとしたがびくともせず、集まっていた他の何人かが閉まった扉の確認へと向かう。


「閉じ込められたんでしょうか?」

「だとしたら何か始まるのか」


 天井の発光パネルの光量が減っていき、白かった明かりが光量を落とし暗いオレンジ色に変わる。

 周囲がざわめき室内がだんだんと暗くなっていき最終的には自分の手元しか見えなくなった。


『皆さま、おはようございます。これから説明をします、落ち着いて席についてください。まずはこの施設について話をしましょう』


 高い天井のどこかから聞こえてくる柔らかい女性の音声。

 何人かが状況を説明するように天井に向かって声を飛ばすが、音が壁に吸い取られるのと同時に女性の音声がかぶせられかき消された。


『当施設の名は、並行世界潜航亜空間活動拠点長期居住船箱舟、アルカアンヘル3号です。箱舟とお呼びください。私はこの箱舟の指揮管理AI、ミカと申します。よろしくお願いします』


 何人かは自分の声がかき消されるので声を上げるのをやめたが、それでも一人二人天井に向かって何かを叫んでいる。


『今この場にいる皆さまは、私、ミカが選んだ戦闘員として、しばらくの間行動を共にし私の指示に従ってもらいます。その間は衣食住の提供や健康の管理を私が行いますのでご安心を。なお私の指示に対する違反や無視が続く場合はその限りではありませんのでお願いします』


 天井を見上げていたベニユキたちは暗い周囲を警戒しながらも、聞こえてくる柔らかい声の話を聞く。

 騒いでいた何人かも文句を言いながらも近くの席へと座ると、オレンジ色に光っていた発光パネルの明かりは完全に落とされ暗闇に包まれる。


『それでは、箱舟天使はこれより最初の指示を出します』


 そして正面の手すりのついた段差の上にスポットライトが照らされ、その空間に光が集まっていき何もなかった空間にホログラムの女性が現れた。

 現れたホログラムの女性は長椅子に座って話を聞く一同に深く一礼する。


『改めましてこんにちは、指揮官AIミカです。この姿は皆さまに親しみやすく恐れや警戒を解くためのして作ったアバターです、血の通わない体ですが少しでも私に親しみを持っていただければ幸い。これからこの姿で説明して行くのでお願いします』


 目立たせるためのエフェクトなのかキラキラと光る長い銀色の髪に銀色の瞳をしたホログラムの女性は改めて深々と頭を下げた頭を上げた。


『皆様は自分が誰でどうしてここにいるか不安に思っていると思います。あなたたちの記憶は私が保管しており、私に協力していただければ対価として少しづつそれを返却していこうと思っています。当箱舟にいる理由や箱舟の目的などの質問は現在受け付けません。さて、皆様にまず行ってもらいたいのは、これからの旅一緒に行動するメンバーを今この場で集めてほしいのです。これから皆様に行ってもらうことは一人ではできませんから』


 自然な動作と次第にそこに本当に人が居るのではと思わせるようなホログラム。

 不満やここがどこなのかを尋ねるものがいたが返答はなく声を上げていた者たちも次第に諦めていき、最後には誰一人声を上げず黙って彼女の話を聞く。

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