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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
4章 --光目指し加速する箱舟天使--
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明けの明星 6

 次々に襲い掛かる味方だったものに銃を構えると、相手も肌が枯れ木のようになった元味方も銃を構えて発砲。

 ミイラのような怪物に変貌した相手の狙いは無茶苦茶だったが一発がルナに当たる。


「ッ……、足が」

「ルナ!!」


 バランスを崩して倒れたルナを支えて後ろに下がるベニユキ。

 既にマルティンらの攻撃を受け、怪物に変わったウリのメンバーは倒され銃口は隠れた吸血鬼へと向く。


「もう奴に噛まれたけが人はいないな!」


 我に返ったミカが銃を手に前に出る。


「取り巻きを失い相手は一人です、包囲して倒しましょう。私が気を引きます」


 怪物が隠れている瓦礫の後ろでミカが皆に指示を出す。

 そこで隠れていた吸血鬼が恐ろしい瞬発力で両腕を伸ばしミカへと迫ったが、彼女は硬化する羽根を盾として怪物の突撃を待ち構えていた。


「言葉が通じるんですね、つられていただきありがとうございます」

「図ったな」


 一瞬で飛び出てきたその瞬発力に驚きつつも冷静に引き金を引く。

 ミカの放つ銃弾は怪物の肉に食い込むが、かまわず太い腕を大きく振りかぶり羽根ごと殴りつけ彼女をよろめかす。


 遅れて包囲していたマルティンたちが銃撃を加えるが、吸血鬼はミカの羽根を蹴りつけ跳躍し回避し着地と同時にカノンを狙って走り出す。


「ダメージは入っているのに、この動き!」

「逃げろ、そこから離れろ!」


 撃たれ被弾しバランスを崩しながらも走り続ける吸血鬼。

 逃げるその背を掴み上げると声もあげさせずにカノンの首元に噛みつき、そのまま空へと向かって投げ飛ばす。


「他者の生命力を吸収し自分の力へと変える怪物です、一度殺した程度で死んだとは思わないでください!」


 誰かの弾丸が吸血鬼の頭に当たりふらっと倒れそうになるが、すぐに足を踏ん張り次の標的へと向かって走り出す。

 投石に気を付け瓦礫に身を隠していたが、走って向かってくる吸血鬼に距離を取ろうと背を向け逃げ始める。


「やはりお前が厄介だな」


 引き返し走りながら手ごろな瓦礫を拾い投擲を行いながらミカを狙い引き返す。

 痛みをこらえて広げた羽根で勢いよく飛んでくる岩を防ぐがそのたびに銃の狙いがぶれる。


「元の世界に戻る乗り物を壊したお前たちをただではすまさん、特にお前は!」

「元の世界に帰るために世界各地で騒ぎを起こしていたのですね、あなたのおかげで私は自分の使命を全うできなかった」


 吸血鬼との戦闘の後ろで噛まれたカノンが落下しながら怪物化し他の味方を襲っていた。


「だいぶお前の取り巻きも減ったようだな」


 ミカの元はと戻り盾にした羽根に噛みつく吸血鬼、硬化した羽毛に牙は通らず羽根の隙間から吸血鬼に向かって銃を撃つが腹に穴が開いても痛みを感じないかのように怪物は羽根を掴む力を強めていく。


「生き残った皆さんが……私が何とかしないと!」


 羽根の隙間から飛び出た銃身を掴み力尽くでミカから銃を奪い取り握力で握り潰す。

 離れようとしても羽根を掴まれていて吸血鬼と距離を取ることができない。


「羽根の女、お前を倒せば後のやつらは統率が取れなくなるな。その羽根は便利そうだな眷属にして使ってやる」


 羽根を掴んだまま腕を大きく振り回しミカを瓦礫に叩き付ける。

 痛みでひるみ羽根の硬直が解け噛みつこうと口を開くが飛んでくる弾丸によって阻まれる。


「鬱陶しいな」


 銃を構えたベニユキに足元の瓦礫を蹴り飛ばす。

 攻撃をかわし銃撃をしながら前に出てマルティンとガーネット、アンバーが同じように瓦礫を盾にしながら前に出る。


「加勢するよベニユキ君、最後の怪物退治」

「何人かはここを離れてから出てくるなんて間の悪い敵だねぇ」

「もう戦えるの私らしかいないんですけど」


 ミカをもう一度地面を叩き付け彼女に噛みつこうとしたが、首元から背中を覆う服の下の体毛を硬化させたため牙が刺さらず怪物の眉間に血管が浮く。


「ああ、鬱陶しい! 鬱陶しいぞ!」


 ミカをアンバーとバーネットの方へと投げつけ頭を狙うベニユキに向かって走り出したが、怪物を狙ってさらに別の方向から攻撃を受け弾丸を回避するために跳躍する。


「ベニユキさん!」


 銃声を聞きつけ戻ってきたエレオノーラとブラットフォードが攻撃が当たらないが遠くから射撃していた。


「誰か、手榴弾は持ってないのかい!」


 アンバーたちに支えられ皆が集合し寄せ付けないように攻撃を続けマルティンが尋ねるが全員が戦いながら首を振る。


「みんなヨヤミに使っちまったよ」

「私ら以外の誰か持ってるかもしれないけど」


 怪物にされ倒された元仲間を見回す。

 全員が近くまで集まり接近を許さず殺傷能力の高い投石をしのぐ。


「怖い」

「砲弾のような威力だが、分厚い鉄の扉がいい壁になってくれるねぇ。それに気がついたかい、動きが少し遅くなった」

「いい目をしているね、効いてるってことだこのまま戦おう」


 数人を相手に接近できないことに怪物が怒りを募らせていると隠れているルナの姿を見つける。

 怪物が向きを変えたところでベニユキが叫び、マルティンたちから離れルナを助けに走り出す。


「ルナ!」


 足を負傷し走れないルナは自衛のために攻撃をするが一人の弾幕では躱され接近を止められない。


「ユキ……」


 弾切れを起こし弾倉を取り換えている間に吸血鬼はルナの目の前にまで迫っていた。


「先の戦闘で生命力を使い過ぎた。まずは兵隊を、命を補給しなッ……」


 一筋の光が吸血鬼の胸を貫き頭を吹き飛ばす。

 頭を失い体は勢いよくルナの前を転がっていくがすぐに立ち上がろうとしていた。


「あれなに? 頭吹っ飛ばしたけど起き上がったんだけど」


 狙撃銃を構えたネシェルが眉を引きつらせる。


「知らない、でも言った通り戦ってたでしょ。こっち来られても面倒だからみんながいるうちに倒すの援護しないと。ヨヤミって奴は倒したし、あんなつまらない怪物にやられたくはないもん」

「俺、援護に行ってくるっす!」


 走り出そうとしたホルテンの肩をテンメイがつかむ。


「まってまって、これ持ってって、手榴弾。投げ損ねたやつ」

「うっす、それじゃ行ってくるっす!」


 ネシェルの援護のもとに手榴弾とナイフを握り走り出すホルテン、

 怪物の手足が千切れるがそれでも起き上がらろうとして、そのたびに光を撃ち込まれる。


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